宮司の悩み⑦

『一人ですか?』


『そうです。平彩党幹部の息子から、届け出がありました。十三歳の少女です』


 オリトは息を飲んだ。


『まだ子供ではないですか』


『そうですね。しかし、歴代の来訪者たちの年齢は、若いことが多いのも事実。彼女の場合はとりわけ若いですが、珍しいことではありません』


『……その子は魔力を扱うことが、できたのですか。あちらの世界の人々は、魔力を使うことがないと聞いています』


 オリトは想像しかできないが、並行世界からやってきた人間は、魔法の存在を知らないのだという。初めて父から教わった時には、とても信じられなかった。


『できましたよ。そして問題なく副産物の採取もできました。彼女は既に、この国に貢献している』


『そうなのですか』


 笑顔のタカオミの説明に、オリトは再び想像しかできない。


 並行世界からやってきた人間が、この国と国民に対して慈愛を感じた時、『副産物』と呼ばれる微量の魔法物質が、排出されるという。


それは王の元に集まり、それを『王が副産物を採取した』と表現される。この一連の流れもカギの存在同様、オリト達一部の者しか知り得ない事柄だった。


そしてオリトも、そしてカギがまだこの社に存在した時代の宮司だったオリトの父ですら、実際に目にしたことがないことだったが、王が採取した魔法の副産物は、この国を守るを構成する素材になるのだという。


 王が執り行う神事で作られるそれは、“天膜”と呼ばれている。

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