第15話 再会

 結果として、侑子の杞憂の一部はすぐに霧散する。


 ジロウとユウキに伴われて訪れた、ライブハウス『変身館』のロビーにて、侑子は意外すぎる再会を果たすことになったのだった。


「あ……! あなた!」


 一番はじめに気づいたのは、毛先がピンクに染まったクリーム色の髪の女だった。


 彼女は侑子の姿を認めると、ドドドという足音が聞こえそうな程の勢いで、距離を詰めてきた。


「探してたの! 無事っ?!」


 その瞳を忘れるはずもない。

白い瞳に黒い瞳孔。虹色に揺れ動く、遊色。


 力強く両肩を掴まれた感触も忘れるほどに、侑子は驚愕していた。


 この世界に来て、初めて目にした人物が、目の前に立っていたのだ。


「落ち着いて。リリー」


 そしてそんな女の後方に立って、侑子の両肩を掴む手を外しながら嗜める人物を見て、更に侑子は固まるのだった。


「あ……」


 恐怖よりも、困惑のほうが大きかった。

しかし、言葉を発することは難しい。


「やあ。一応……初めましてになるのかな。昨日は怖がらせてしまったようだった。まずはそのことを、お詫びさせてもらえないだろうか」


 侑子の様子を見て眉根を下げたその男は、昨日とほぼ同じ服装だったのですぐに分かった。


そう、昨日五叉路で、侑子に声をかけてきた男だったのだ。


 この世界の中では侑子にも馴染みのある、ブロンドの髪と青い瞳の青年だった。しかし肌の色や顔つきは、白人というより東洋人のようで、口から発せられた言葉も、違和感のない日本語だった。


「どうして……」


 そう声に出すのが、やっとだった。

幸いすぐ隣にユウキが、後方にはジロウが立っていたので、震えることはなかったが。


「んん? どういうこと?」


 三人のやり取りを困惑しながら見守っていたユウキとジロウは、事情を飲み込めていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る