第17話 教師たち1

 かって、PTAが猛威を振るった時代があった。

 教師たちが体罰を振るい、子供たちを人質にしてありとあらゆるいい加減なことをしていた時代の後である。

 小中学校の教師の半分は子供たちが好きで教師になっており、後の半分は子供相手なら無双ができると信じて教師になっていた。

 (ああ、極論だとも。だが私が見て来た教師たちはそうだった)

 さらには特殊性癖持ちというもっとヤバイ連中が混ざっていることもある。


 子供を持つ親たちは団結してこれに対抗し、それはエスカレートして今度はPTAがモンスタークレイマーと化した。

 最初に漫画雑誌がやり玉に挙げられ、有害図書とみなされるようになった。漫画のどこが悪いのですかとの問いに、漫画のようなくだらないものは読んだことが無いとPTA役員が答弁していたことを覚えている。つまりイメージだけで批難していたわけだ。確かにくだらないギャグ漫画も多かったが、ちばてつや氏のモサのような人間の奥底を覗くかのような強烈で深い作品も多かった。

 強くなりすぎたPTA。これに頭を悩ませた教育委員会が起死回生の策として生み出したのが、内申点であった。素行などという点数のつけようのないものを使って、口うるさいPTAの子供の内申点を狙いうちにして進学できないようにすることにより、結果としてこの制度は絶大な力を見せた。


 腐り果てている。教育という言葉の持つ厳格で重厚なイメージなどどこにもない。ただの大人たちの権力争いである。


 小学校の教師H先生もそれを利用した一人であった。子供たちには蛇蝎の如く嫌われていた下種なH先生は、逆にその母親たちには大人気だった。彼のハーレムに参加することで労せずして内申点を稼げるのだから、これほどやりやすいことはない。懇親会には常に四人ほど彼の周りにお母さん方が張り付きコビを売っていた。

 H先生の送別会には彼と対立するPTAのお母さんたちを呼びつけ、今までお世話になったのだからと一人一人にお酌をさせたという性格の歪みぷりだ。

 幼稚で強欲な教師の腐ったエゴの塊はどこまでも膨れ上がる。


 それを増長させたのは内申点制度であり、それを利用しようとした保護者たちであった。

 H先生が地獄の業火の中で焼かれていることを切に願う。

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