第4話 レタスマン

 会社のトイレの窓際にレタスが一個置いてある。

 シュールな光景だ。意味が分からない。


 雑居ビルの一室が支社になっている会社に勤めていたときのことだ。

 フロア共有の男子トイレの中にレタスが置かれていたのだ。それはこのフロアだけでなく他のフロアのトイレにも置かれるようになっていった。

 やがてレタスは窓際ではなく便器の中に投入されるようになった。

 何かの謎かけなのだろうが、誰にもその謎は解けなかった。


 監視カメラが密かに設置され、トイレの入り口をこっそりと監視するようになった。

 じきに犯人はビル管理者に捕まった。言い逃れをしようとしたが監視カメラにばっちりと写っているので逃げられはしなかった。

 犯人はこの雑居ビルの六階に入っているメイド喫茶の常連客で、お目当ての女の子の気を惹くためだったらしい。今度やったら警察に突き出すとビル管理者にお説教されて事件はそれで収まったが。


 『いったいそれがどうしてレタスになるんだ?』という疑問は最後まで誰にも解けなかった。


 おい、ビル管理者、最後まできちんと尋問しろ。この事件に関わった人々はすべて欲求不満になってしまったぞ。

 なぜ、レタスなんだ?

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