第49話 『王都案内』


 『鶴楽亭』前から出発した俺達は、兄ちゃんの先導で王都を歩いている。


「まずは何処から案内しようか…。リンク達は観光地とか興味あるか?」


「んー、観光地にはあまり興味無いかな。俺は現地の人がどんな生活しているかの方が興味ある」


「俺もリンクと同じですかね。しいて言えば良い武器屋と防具屋は見てみたいですけど」


 おー、それは俺も興味ある。


「僕は教会とか見てみたいです。王都の教会は凄そうだし」


 クリスは教会か…。

 あまり興味は無いけど、確かに王都のだとスケールは大きそうだな。


「わ、私は…綺麗な景色が見たいですかね!」


 ……うん、どゆこと?

 デート気分にでもなってんのかコイツは…?


「そうか…。じゃあまずは南大通りの方へ行ってみようか。それならリンクとクリスの望みを叶えられると思う」


 そう言うと兄ちゃんは意気揚々と俺達の前を歩き始めた。




 俺達が兄ちゃんに連れられて色々な場所を案内される事数時間、そろそろ昼頃という時間になってきた。


 一応各々が望んだ場所への案内も終わったのだが、兄ちゃんは最後に連れて行きたい場所があると、北大通りにある一軒の飯屋へ俺達を案内してくれた。


「そろそろ飯時だからな。最後に俺イチオシの店を紹介してやる!」


「良い匂いはしてくるけど、何を食べさせてくれる店なのかさっぱりわからないですね……」


 おい、ちょっと待て…。

 クリスの言う通り良い匂いがしてくるのは間違いないけど、もしかしてこの匂いって…!


「さぁ!運ばれてきたぞー!俺イチオシの『海鮮料理』が!」


 おぉ!やっぱり磯の匂いか!!

 モルフィートでは味わえなかった海の幸!

 一応干物とかは街に入ってきたりしてたけど、新鮮な海鮮料理なんて食えなかったからな…


「確か王都の南にある港町から海鮮素材が毎日運ばれてきてるんだっけ?」


「おー、よく知ってるなリンク!」


「王都へ連れて来てくれた御者のおっちゃんが教えてくれたんだよ」


 それにしても、見た事無い魚や貝ばっかだな…

 まぁ匂いからして美味そうだし、そんな心配する事もないか。


「それじゃあ食おうか!」


「「「「「いただきます!」」」」」


 まずは謎の魚の塩焼きを一口……おぉ!美味ぇ!!

 やっぱ川魚とは全然違うんだな!!

 臭みも全く無いし、そりゃ兄ちゃんが感動して勧めるわけだ!


 みんなも目を丸くして黙々と食べてるな…

 良い物をいっぱい食べているはずのクリスまで美味すぎて言葉が出てない。


 なんて恐ろしい店を紹介しやがるんだ兄ちゃんは…!

 こんなに美味かったら通っちまう!

 そして、まぁまぁな値段するから金が無くなる!!

 これ以上金が無くなると困るんだけど……!!




 全員が大変満足した昼食後、海鮮料理屋の前で味の感想などを話しながら一息ついていると、兄ちゃんがふと思い出したかのように話し始めた。


「あっ、そうだ。そう言えばオードリー以外の3人はDランク冒険者になってるんだよね?」


「えっ?うん、そうだけど」


「それじゃあどれぐらい強くなったのか知りたいから模擬戦でもしようか」


「……えっ!?今から!?」


「そう、今から。食後の運動も兼ねてね」


「俺はいいけど…ファルとクリスはどうする?」


「俺はやるよ。ニコールさんと模擬戦なんて5年以上してないからな」


「僕は…どうしようかな…」


「クリスは『槍術』取得するつもりなんだろ?それなら兄ちゃんの槍の使い方を見れる良いチャンスかもよ?」


「……それならやってみるよ」


「わかった。兄ちゃん、3人共やる事で決定したけど何処で模擬戦するつもり?」


「んー、冒険者ギルドと傭兵ギルドの訓練所でいいんじゃないか?」


「ん?結局どっちでやるの?」


「いや、だから冒険者ギルドと傭兵ギルドの訓練所だって」


 ………?

 兄ちゃんは何を言ってるんだ?


「あっ!忘れてた!! そう言えば昨日の聞き込みで聞いてたのに伝えるの忘れてたよ!」


「クリス、忘れてたって何をだ?」


「王都では冒険者ギルドと傭兵ギルドの訓練所が一カ所にまとまってるんだよ!」


「えっ?なんでそんな事に……あぁ、なるほど。だからあんな近くにギルドが建ってたのか…」


 近くに建ってるから合同で訓練所を造ったのか、それとも元々合同で訓練所を造るつもりだったから近くにギルドを建てたのか…

 どっちが理由かわからんが、わざわざそんな火種になりそうな事しなくてもいいだろ……


「なんだ、知らなかったのか。まぁそういう事だからさっさと行くぞ」


 店の前からギルドの方へと歩き出した兄ちゃんに俺達はついて行く。




 北大通りを歩く事数分、俺達はギルド近くにあるデカい運動場のような所に辿り着いた。


「……広っ!!」


「流石2つのギルドが合同で造っただけはあるね…」


「よーし、それじゃあ備品借りて始めていこうか!」


 俺達は兄ちゃんの号令で一斉に準備を進めていく。


 まぁ、1人だけずっと目をハートマークにしながら兄ちゃんの事を眺めてるけど……

 ってかオードリー今日全然喋って無いんじゃないか!?

 なんか朝に一言だけ声聞いた気がするけど!

 オードリーにはもう一度パーティのルールを説明する必要がありそうだな……


 そんなどうでもいい事を考えながら俺は模擬戦の準備を進めていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る