第27話 『成果』



【アーク歴 3033年 1月26日】



 新生活を始めてから3ヶ月程が経った。

 この3ヶ月間は南の川での依頼と、北の森での特訓をこなす日々が続いている。


 俺は前世で一人暮らしの経験があった為、1ヶ月程で新生活に慣れる事が出来たが、ファルとクリスは最近ようやく家族がいない生活に慣れ始めたようだ。


 俺は休日の今日も、いつも通り日課のランニング&素振りをしっかり済ませて、自室の椅子に腰掛けながら休憩をしていた。


「なんか最近体調が良いような気がするな〜」


 そんなどうでもいい独り言を吐きながら、習慣になっているプレート確認をする。


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氏名 [リンク・エンゲルス] 年齢 [15歳]


所属国 [ブランデン王国] 職業 [冒険者]


スキル

[雷魔法Lv.12] [短剣術Lv.12] [剣術Lv.20]

[体術Lv.8] [回避Lv.5] [軽業Lv.4]

[能力把握Lv.10] [解体Lv.9]

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 ガタッッ!!


 俺はプレートを見て思わず立ち上がってしまった。

  何故なら、『能力把握』のスキルレベルが10まで上がっているのを確認したからである。


 やっとか・・・!

 スキルによってはキリの良いレベルで性能アップするやつもあるけど、『能力把握』はどうなんだ・・・?


 体力値 51 (↑3)

 筋力値 50 (↑4)

 敏捷値 44 (↑3)

 魔力値 41 (↑3)

 知力値 90 (↑1)

 器用値 32 (↑2)


「くっ!!変わってねぇ・・・!」


 ダメか・・・

 性能アップするタイプのスキルだと思ってたんだけどな・・・

 ・・・仕方がないか。素直に結果を受け入れるだけだ。


 それにしても、新生活を始めて2ヶ月ぐらいは順調にスキルレベルが上がってたのに、ここ1ヶ月ぐらいでめっきり上がり難くなってきてる・・・


 やっぱりもうEランク帯じゃ成長するには物足りないんだろうな。

 ・・・それとも俺達が飛ばし過ぎてるだけか?

 今までハイスピードでレベルが上がっていたから、それに比べて成長が遅く感じてしまっているだけかもしれない。

 本来ならこれぐらいの成長スピードが普通なのかもな・・・


 コンコンッ


「ん?はーい」


「エマが朝飯出来たから降りてきてって言ってるぞ」


「おっ、了解。すぐ行く」


 どうやらファルが朝食に呼びにきてくれたようだ。

 よし、考え事はとりあえず置いておこう。


 俺はすぐに部屋を出て、1階のリビング向かう。




 リビングに着くと、俺以外は既に食卓についていた。


「悪い。待っててくれたのか」


「んーん、今出来たとこだから全然大丈夫!さぁ早く食べよっ」


「なら良かった。それじゃ、いただきます」


「「「いただきます」」」


 おっ、今日は朝から肉なのか。コレはビッグトードの肉かな?


「リンク、今日テッタさんの所へ顔出しに行くのか?」


「ん?あぁ、メンテナンスに出してた短剣を取りに行く予定だからな」


「それ俺もついて行っていいか?」


「別に大丈夫だけど、ファルがテッタさんの所に行くなんて珍しいな」


 ファルは普段弓を使っているので、鉄製の武器を専門としているテッタさんの店へ行くのは相当珍しい。

 たまに剣を使う事もあるが、滅多に使う事が無いからメンテナンスもそんなに行ってないと思うんだけどな。


 ちなみにテッタさんは俺が両手剣を買った武器屋の親父さんだ。


「解体用のナイフの刃が欠けたから新調したくてな。あと、テッタさんに色々と相談したい事もある」


「へー、なるほどね。俺は食後にちょっと休んでから行くつもりだから、その時一緒に行く事にするか」


「あぁ、わかった」


 相談したい事ってのが何なのかは気になるけど、まぁウチのパーティはそこら辺ノータッチ主義だからな・・・

 ファルならどうせ強くなる為の相談だろう。


「クリスとエマの今日の予定は?」


「僕は屋敷へ顔出しに帰るつもりだよ。ついでに何か新しい本が入っていないか確認しないと」


「そうなのか。領主様にまた顔出しますって伝えといてくれ」


 あと新しい本が入ってたら俺にも知らせて欲しい・・・


「わかった。伝えとくよ」


「私は薬師のおばあちゃんの所へ手伝いに行く予定かな!」


「あー、昔から世話になってるっていうあの近所のおばあちゃんか?」


「そうそう!なんか最近腰悪くしちゃったみたいだから」


「それは心配だな・・・ 手伝いが大変だったら今日は無理に晩飯を作りに来なくて大丈夫だからな?俺達は外で食う事にするし」


「そこまで大変じゃないと思うよー。でも、もし夕方までに私が来なかったら外食でお願い!」


「あぁ、わかった」


 朝食を食べ終えると、エマはすぐに出かけて行った。

 残された男3人は、食後休みでまったりしながらお互いの成長について話し合っている。


「おー、ファルも相当レベル上げてきてるなぁ」


「一応お前に置いていかれないように必死だからな」


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氏名 [ファル・シモンド] 年齢 [15歳]


所属国 [ブランデン王国] 職業 [冒険者]


スキル

[音魔法Lv.8] [弓術Lv.20] [剣術Lv.11]

[体術Lv.7] [遠視Lv.4] [遠耳Lv.5]

[命中Lv.4] [解体Lv.14]

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 いやいや・・・ 俺に置いていかれる気配なんてゼロですけど?

 相当頑張ってるぞコレは・・・

 新しいスキルもしっかり成長してるし、メインスキルの『弓術』もちゃんとレベルが上がってる・・・

 あれ?頑張らないと俺が置いていかれそうじゃない・・・?


 それにしても完全に斥候タイプのスキル構成だな。

 今までも敵の発見をしたり斥候みたいな事はしてくれていたけど、どんどん本格的になってきてる・・・


 さて、クリスはどんな感じだ・・・


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氏名 [クリスチャン・モルフィート] 年齢 [15歳]


所属国 [ブランデン王国] 職業 [冒険者]


スキル

[収納魔法Lv.11] [盾術Lv.19] [剣術Lv.10]

[体術Lv.7] [挑発Lv.5] [回避Lv.3]

[体幹Lv.5] [解体Lv.11]

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 ・・・真っっ直ぐ盾役!! 清々しいぜ!!


 ここまでちゃんと自分の役割をこなしてくれると、パーティメンバーとしてありがたい。

 それに『収納魔法』にも本当に助かってるし。

 この間、改めてどれだけの量を収納出来るのか検証してみたのだが、どうやら『収納魔法』のスキルレベル×10kg だという事が判明した。

 現在のスキルレベルは11なので、合計110kgまで異空間に物が入れられる事になっている。


 解体したオークの肉を全て入れられる訳では無いが、確実に俺達の背負う荷物の量を減らしてくれている。

 感謝『収納魔法』ビバ『収納魔法』なのである。


「そういえば『体幹』は感覚的にどんな感じなんだ? 攻撃役の俺でも使い勝手良さそうな感じか?」


「んー、どうだろうねぇ・・・ 僕の実感としては、最近オークの攻撃を受けてもバランスが崩される事は減ったってぐらいなんだけど」


 ほう・・・いまいち俺に役立つかはわからないな。でも体幹が弱いより強い方が良いのは間違いない・・・

 これもあって損は無い系のスキルだから取っておいてもいいかもな。


「とりあえず俺も取る事にするかな。取得のコツとかあったらまた教えてくれよ」


「了解。任せてよ」




 この後話を終えた俺達は、各々が自室に出掛ける準備をしに戻った。


 俺も自室で準備を済ませると、予定通りファルと2人でテッタさんの所へ向かう事となった。

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