第1話 『転生』

 

  眩しっ!!!

 なんか狭い穴みたいなの通ってたと思ったら急に眩しすぎるわ!!

 すげぇ息苦しいし! 寒いし!!


  あっ…何かに包まれた。あったけぇ……


  …じゃなくて!

  なんか赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるんだよな……めちゃくちゃ近くから!!

  まさかこれ俺の口から聞こえてるのか!?俺の泣き声なのか!?


「/&?#@?☆€〆♪!!@$○×¥=%!」


「€☆!!#÷〒♪$€○!!」


  周りで誰かが喋ってる…でも何語だ!? 全く聞き取れん!! 俺の耳がおかしくなったのか……?


  俺は耳の心配をしていたのだが、時間が経つにつれて徐々に目の前がクリアになり始めた。


  おっ!やっとボヤボヤしてた視界が治ってきたな… おーおぉぉぉおお!!?

  デカッ!女の人か!?デカッ!!

  なんか優しそうな顔した女の巨人に抱かれてるんだけど俺!!


 でもこの女の人すげぇ優しそうな表情してるから怖く無いんだよなぁ…


  ダメだダメだ。落ち着こう。冷静になろう。

  なんか話しかけられてるけど、何言ってるか全然わかんない……とりあえず無視でいいか。

  状況だけ考えると、産声あげている時点で今の俺は赤ん坊だとは思うんだが…なんで?しか浮かばないよな残念な事に……


  あっ、なんか急に眠くなってきた…

  いやいや、寝ちゃダメだって。まだ色々理解しなきゃいけない事がたくさんあるんだから。

  今寝ちまったら、何もわかんな……zzZ…zzZ




  そして……5年の歳月が経った。



【アーク歴 3022年 11月27日】



「リンク!勝手に家の外に出てきちゃダメだって!母さんに怒られるぞ!!」


「ごめんなさい!でも父さんと兄ちゃんの剣の稽古が見たいんだよ!」


「んー… しょうがないなあ。兄ちゃんが父さんに稽古の見学してもいいか聞いといてやるから、今日は我慢して本でも読んどきな!」



  兄に叱られている茶髪の癖っ毛が特徴的なこの少年。

  名は『リンク・エンゲルス』

  実は俺が5年前に泥門でいもん りくから生まれ変わって成長した姿だ。


  ふぅー… やっとこの世界の武術?を学べる段階に入れそうだな。

 まさか日常会話と読み書きを覚えるのに5年もかかるとは思わなかった…


  俺はリンクとして生まれ変わってから、ここまでなかなか苦労をした。


  まず、自分が生まれ変わったという事は、生まれて数日で重々理解させられた。


  2歳になるまでは、起きている短い時間の中で母乳を飲んで、恥ずかしがって、オムツを変えられて、恥ずかしがってを繰り返した。

  だがその合間合間の時間で、周りの会話から言葉を理解する事と、歩けるようになる事だけに集中した。


  3歳になる頃にはある程度言葉も理解出来るようになり、自分の名前が『リンク』である事、

  父、母、兄、自分の4人家族である事、

  父が『バロン』、母が『アンジェリーナ』、兄が『ニコール』という名前である事、

  そしてファミリーネームが『エンゲルス』である事を理解出来る様になった。


  最初このファミリーネームを知った時は、(これは『泥門でいもん』として死んだ俺への皮肉か…?)などと思ったりもした。


  そして俺は重要な事実を知る事になる…。


  それは、今いるこの世界が俺のいた世界とはという事だ…

  それを知る原因となったのは、庭で鉄剣の素振りをしている父バロンを窓から目撃した事だった。


  それまで俺は、生まれ変わったとしても同じ世界の別の国だと思っていたのだ。

  よくよく思い返してみると、服装も家の内装も中世風なのだが、俺はそういう文化の国なのかな?と、勝手に思い込んでいたのである。


  なので父さんが鉄剣での素振りをしてるのを目撃した時は、(えっ!? 何してんの!?自宅の庭とはいえ、誰かに見られたら通報とかされるんじゃないの!?)と、本気でビックリした。

  だから、俺は横にいた母さんへ素朴に疑問をぶつけた。


「父さんは外で何してるの?」


「ん?お父さんは剣の稽古をしてるのよ」


  母さんは平然とそう返してきた。

  俺は「え?なんで?」とさらに質問をした。


「アナタのお父さんは騎士だからよ」


  母さんは俺の質問に答えながらも、微笑ましげに父の素振りを眺め続けていた。


  んん? この家族もしかしてちょっと変なのか?

  でも素振りしてる父さんも凄い本気だし、母さんも冗談を言ってるような感じじゃないよな……

  もしかしてだけど… 生まれた年代が違うとか?

  ……わからない! もっと自分の置かれた状況を正確に理解しないと!


  無知を自覚した俺は、この時から母さんに絵本の読み聞かせをねだるようになった。




  それから2年。

  5歳になった俺は、読み聞かせのおかげである程度の文字を読めるようになり、簡単な本なら1人でも読めるようになっていた。


  読んだ本の題材は様々で、

  俺の知らない『神と精霊の物語』

  名前を聞いた事も無い『英雄や勇者の冒険譚』

  そして今俺が住んでいるらしい『ブランデン王国の建国物語』


「ブランデン王国ってどこよ!!??」


  と、俺が前世では聞いた事が無い国名に対してツッコんでいると、ふと本の挿絵が目に入って衝撃を受ける事となった。


  何故ならその挿絵は前世で見た事がないだったのだ。


  なんだこの世界地図…? こんな形の大陸見た事が無いぞ……!


  その世界地図は、

  肺に似たような形と並び方をした2つの大陸と、その2つの大陸の周りに浮かぶ小さな島々で構成されていた。


  そして

  西側の大陸の上には『セーハイ大陸』

  東側の大陸の上には『ハイトー大陸』

  と書かれていた。


「セーハイ(西肺)とハイトー(肺東)か。これは覚えやすい……のか?」


  そしてその本には、『ブランデン王国』の国土がハイトー大陸の南1/3を占めている事が書かれてあった。


「めちゃくちゃ大国じゃねえか……」


  こんなデカい国なのに前世で一度も聞いたことがない… そもそもこんな形をした大陸なんて知らない!


「もしかして前世とはなのか……?」


  答えを知りたくなった俺は、さらに様々な本を読み漁り、両親にも質問したりして、ようやく自分がに生まれ変わったという事をしっかり理解したのである。



  そう、このに……

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