第11話 再会

 聖矢せいやの実家に連絡してから数時間後、電話が鳴った。津島つしまからだった。


「今、駅に着きました」

「わかりました。すぐに行きます」


 電話を切ると、大矢おおやは聖矢の方を見た。相変わらず、顔は白いままだ。


「どうする? ここで待ってるか? それとも……」


 一緒に行こう、と誘っていたものの、行かせていいのか心配になった。聖矢は不安そうな表情で大矢を見上げると、


「一人でここにいるのは……」


 呟くように言って、目を伏せた。聖矢の言葉に、大矢は頷き、


「わかった」


 聖矢の頭を軽く撫でて、「行こう」と声を掛けた。聖矢は、何も言わずに大矢の後についてきた。


 昨夜の公園を抜けて、少し行くと、駅に出る。電車が来る時間ではないせいか、人はまばらだった。津島つしまは、改札を出てすぐの所に立っていた。大矢に気が付くと、軽く頭を下げた。大矢は、聖矢の手をしっかりと握って、津島のいる方へ向かった。大矢は、津島に一礼すると、


「お久しぶりです」

「本当に久し振りですね」


 津島はそう言うと、少し微笑んだ。相変わらず、紳士然としている。が、この人が、聖矢が苦しむ原因を作ったかと思うと、暗い感情が湧いてくるのを押さえられなかった。


「先生。すぐそこですから、このままついてきてください」


 言い方が冷たくなったのはわかっていた。が、穏やかに話せる心境ではなかった。津島は、微笑みを浮べたままで、「わかりました。お願いします」と言った。聖矢の方は、見ない。


 大矢とつないでいる聖矢の手が、微かに震えているように感じた。大矢は、空いている方の手をつないだ手にのせ、そっとさすってやった。「大丈夫だよ」と伝えたくてそうした。聖矢が、強く握り返してくる。


 道中、津島とは一言も話さなかった。今話をしたら、詰ってしまう。それがわかっていた。公園を抜けてマンションの前まで来てようやく、「ここです」と、それだけ言った。

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