仲の良い2人

 どうやらこのバカの相手は最後まで俺がしないといけないらしい。


「……王になって何をするんだ?」

「な、何を……? た、民のの暮らしを良くするんだ……」

「…………どうやって」

「ど、どうやってだと…………お、お前はどうするんだ!」


 俺の質問に困ったのか、慌てて話を俺に振るルーカス。民の暮らしをよ良くするためにまずしなければいならないこと……


「とりあえず、お前を王にしないことかな」

「「ぷっ……ふふっ……」」


 アイリスとお姫様の2人にうけた……いや、母上も口元を扇で隠しているからうけているのだろう。この無茶振りに少しでも意趣返しできただろうか……睨まれた。これ以上はやめておくとしよう。


 だが、ルーカスを王にすると問題が起こればなんでも戦争にしそうなので、民のことを考えるとルーカスを王にしない事が1番民のためになるのではないだろうか……。


 おっと、そうこうしているうちに、ルーカスの我慢が限界を迎えたようだ。握りしめていた拳がプルプルし始めている。

 そっと耳を塞いだ。俺だけじゃない。アイリスと母上も耳を塞いでいた。その光景をよくわかっていない2人……


「ふ、ふざけるな!」


 まぁ、あの近距離で聞けばそうなるのだろう。姫であるはずのニーナが他国……それも敵国の王の前で倒れるなんて、なんの嫌がらせだろうか。

 その相手の王もまだ耳鳴りが続いているみたいなので、たぶん大丈夫だろう。うん、大丈夫。それぐらいで国際問題にはなりはしない。もう既になりかけているし、今回は気にしなくていいよ。


「お主、どういうつもりだ」


 心の中で同情していると、彼女はルーカスに抗議の声を上げる。1番近くで、それもまともに受けたのに凄まじいな。


「どういうつもりだ……だと、それはこちらのセリフだ! さっさと兄上と婚約を結び国に帰る話しだっただろう!」

「お主、今までのやりとりを見ておらんかったんか! 妾はこ、こと……断られて……ええい! そもそもお主、妾の話しをまともに聞いておらぬではないか!」


 また2人の喧嘩が始まった。いつまで俺はこのやりとりを見せられるんだろうか。いや、もうコレは仲が良いと言っても問題ないだろう。

「いっそのこと、お前達が付き合えばいいんじゃないか?」なんて言ったら怒られるんだろうな……


「「誰がコイツ(此奴)なんかと!!」」


 しまった、口に出していたみたいだ。


 それをきっかけに口撃の矛先が俺に変わる。やはり仲が良いのではないか?


「「良くない(のじゃ)!!」」


 またやってしまったらしい。2人に話しを進ませようとしたが、これ以上は時間の無駄になるだろう。


 その時、ルーカスの直感が働いた。このままではまた自分が不利になると。


「兄上! 彼女はこんなに美しいのです! 彼女に相応しいのは兄上しかおりません!」


 この場にいた全員が驚いたようにルーカスを見る。母上ですら目を丸くしていた。それほどまでにルーカスの言動は驚くべきような事だった。

 とうとう頭を使った行動に、兄として嬉しく思う。けどな、ルーカス――


「ふぅーん、そうですか……」


 時と場合、それにこの場にいる者を考えて発言する様にしてほしい。なぜそうも易々とアイリスを怒らせるような事を言うのだろうか……


「そうじゃ、妾は国1番と言われるほどじゃぞ!」


 そして空気をまったく読めないお姫様が1人。もうやめてほしい。1人でも面倒なのに、増えないでほしい。心なしかこの部屋の気温が低くなったような気がする。


 なぜ先ほどまで仲良く言い争っていた2人が、揃いも揃って仲良く危険地帯を歩こうとするんだ?


 もう俺には手をつけられない。父上に助けを求めようと振り返り……目があった。その瞬間、顔を背けられた。


 どうやらこの事には関わりたくないらしい。その事だけは態度からひしひしと感じ取れた。


 いつか今日のことを後悔させてやる。


 そう決意し、いかに自分が美しいと言われてきたかを語る姫と、付け焼き刃で覚えたであろう言葉を並べるだけのルーカスを黙らせるため、俺は一歩前に出た。

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