第8話:錬金術師は科学者の祖です。

第8話:錬金術師は科学者の祖です。


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 覇業達成のためには、研究関係も大事。

 という訳で、ラボを訪れてみました。

「これは、リータ様」

 出迎えたのは、錬金術師にして、ラボの責任者のデュランデュランだ。

 メガネに白衣にオネエ系、冷たい視線と怜悧な感じの顔と必要以上にグラマラスな肢体がサイコーな女である。

 もちろん、性格はそれ以上にサイコーというかサイコな。

 その視線にさらされると、私ですら、何だかちょっと“奴隷になってみてもいっかな~”なんて思ってしまいそうになるから、不思議だ。

「前もって言って下されば、お迎えにあがりましたのに」

「いや、研究の手を止めさせたくないのでな」

 ふふん。

 私はクールに笑ってみせる。

「さいですか」

 デュランデュランは、無表情のままで言った。

「では、どこまで進んでいるのかを一通り見て頂きましょう」

「うむ、苦しゅうない」

 デュランデュランと私は、ラボの中を見て回る。

「リータ様のおっしゃられた案をもとに、漆黒の樹木を使って魔力増幅装置を考案してみました」

「ほう」

 ラボというか工房って感じの大部屋に、大きな木組みの装置がいくつも置いてある。

 そこで黒小人などの魔族の技術者たちが、あーでもない、こうでもないって感じで、より効率の良い実戦使用可能な装置を作ろうとしている。

「魔法使いの魔力を格段に増幅して、今までにない高い威力を発揮できるようにしました。

 リータ様には及ばぬでしょうが、通常クラスの魔法使いでも、その半分の威力ぐらいまで高めることが可能です」

 デュランデュランは、如才なく説明をする。

 その気遣いがうれしいね。

 後で、たっぷり可愛がってあげようかしらん。

「……」

 私の視線に気づいてか、デュランデュランはニヤリと笑い返した。

 ……。

 ちょっと悪寒が走った。

 後で、可愛がられる(しばかれる)のは私って感じがしてきた。

 心行くまでな。

「魔法ならレイス族かね?」

「そうですね、彼らなら適任でしょうね」

 私は話を逸らしたが、デュランデュランは爬虫類のような視線をこちらへ向けたまま。

 ……やばい。

「じゃあ、完成を急げよ」

「かしこまりました」

 言って、デュランデュランはその辺にいた研究員を捕まえて、技術者達に伝えるよう命じた。

「……自分で伝えに行かないのかい?」

「ええ、もちろんですよも!」

 デュランデュランは、大仰にうなずいた。

 ……なんで自信たっぷりなんだよ。

 つーか、分かれ、この奥ゆかしさ溢るるニュアンスを。

「ところで、リータ様、この後のご予定は?」

「…ぐっ」

 私は言葉に詰まった。

「と、とくにはないが…」

「でしたら、私の部屋で今後の研究課題の話でも」

 デュランデュランは、


 絶対離さん!


 てな勢いで、自分の腕を私の腕に絡ませる。


 ……うっ。

 捕まった!?

 てゆーか、離せよ!?


「さあ、リータ様、久しぶりに心行くまで話し合いましょう」

 デュランデュランは、唇の端を歪ませながら言った。

「いや、それは、その……」

 私は護衛を見るが、護衛は知らん顔をしている。

 いや、私が行く先々でそういうことしてるからなんだけどね。

 なんて言ってる場合ではない。

「今日は都合が…」

「つべこべ言わずに行きましょう、ささ!」

 デュランデュランは、強引に私を連れ込もうとする。

 その顔には、嗜虐的な笑みが浮き上がっていた。

「た、たすけ…!」

「さー、楽しいですよ、研究!」

 鬼ー! 悪魔ー!


 で、たっぷり虐められました。

 魔族の王なのに…。

 シクシク。

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魔女リータの覇道日記 @OGANAO

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