第7話:執務官対精鋭部隊長(怪獣大決戦)

第7話:執務官対精鋭部隊長(怪獣大決戦)


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 ピキーン。


 執務室は、なんか静かな戦いの緊張がみなぎっていた。

 私の傍らにはパメラ。

 私の正面にはクララ。

「ここにサインをお願いします」

 パメラは、にこやかに言ってペンを渡す。が、その笑顔には青筋立ってる。

「ああ、かたじけない」

 クララは、ありがたくペンを受け取った。が、その笑顔はひきつっている。

 そんで、


 ぼきっ


 ペンが折れちゃったのね。

 馬鹿力。

 というか、二人とも不気味なくらいに敵愾心を燃やしている。


 うに?

 どうして、この娘たちは、こんなに仲が悪いんだろうにゃあ。


 私は、可愛く言ってみたが、状況が改善されるわけではなかった。

「パメラ殿、すまんがペンがやわでな、もうひとつ貸してくれるか?」

 クララがやはりひきつった笑みのままで、言った。

「ま、どうしたんでしょうね、仕入れ担当の者をミイラの刑にしますわ」

 パメラは、青筋浮かべたまま、首を書き切る仕草をしてから、代わりのペンをとり出した。

「あの、君たち、なぜにそんなに仲悪いかね?」

 私は聞きたかったが、できませんでした。

 おっかないし。


「できた」

 クララは言って書類をパメラに渡す。

「はい、確かに」

 パメラは書類を受け取ったが、クララは指を放さなかった。


 ぐいぐい。


 ぐいぐい。


 書類を引っ張り合ってる。

「おいおい、書類がやぶれちゃうじゃん」

 私は、言いたかったが、実行できませんでした。

 だって、おっかないし。


「クララ様?」

「なんだ、パメラ殿?」

 二人とも笑顔だが、相手をぶっ殺して取って食いそうな勢いだった。

「指を離していただけます?」

「おお、これは気付かなんだ」

 ぱっ。

 クララが指を離す、


 どさっ。


 パメラは勢い余って後ろへずっこけた。

「チッ」

 舌打ち。

「ハッ」

 あざける声。

 なんか聞こえましたわよ?

「おほほ、クララ様ったら」

「いやいや、パメラ殿こそ」

 二人は顔をくっつけ合うかのようにして、笑い合う。


 こわー。

 女の戦いってこわー。


 できれば退散したいなー。

 私が抜き足差し足で部屋から出ようとしていると、

「どこへ行くんですか、リータ様?」

「リータ様、今日はご予定はないんでしょう?」

 呼び止められました。

 そりゃもう、がっちりと。

「あ、あのね、二人とも?」

「リータ様は、政務がたまってますので!」

「そんなの、執務官がやればいいだろう? 演習を見てもらう方が重要だ!」

 二人はやっぱり、顔をくっつけ合って言い合う。

「あのね、今日はね、どっちもバックレちゃおっかなー」

「あ?」

「あ?」

 私の言葉は、機嫌の悪い二人の声にかき消された。

 なぜに?

「あのー、リータ様?」

 声がして、後ろにマギーが立っていた。

 短めの黒髪にくりっとした目の可愛い娘だ。暗黒の体術とかを修めている。

「ああ、マギー、ちょうど良いところに」

 私はマギーの後ろへ逃げ込んだ。

「あの二人をやっておしまい!」

「イーッ」

 マギーは飛びかかる仕草をしたが、

「って、何やらせるんですか!?」

 失敗。

「リータ様、任務についての書類を届けにきたんですけど?」

「それはパメラに」

 私は言いながら、窓を開けた。

 はい、魔女らしく窓から箒に乗って逃げます。

「えー、何をおっしゃいます」

 マギーは、がっしと私の手をつかんだ。

 うっ。

 放して。

 お願いだから。

「逃げようったって、そうはさせませんよ?」

 マギーは腹黒かった。

「今日こそは、私たちの誰が一番なのかをお聞かせ願いますからね?」

「そうよ!」

「そうだ!」

 三人とも口々に叫んだ。

 あーもー、許してー!?

 その後、ぼこぼこにされました。魔族の長なのに。

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