第5話:会食にて

第5話:会食にて


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 本日の昼は会食だった。

 食事とは名ばかりの政治の場。

 つまんなーい。

 と、ギャルぶっても仕方がない。

 そんな歳でもないしね。

 で、どれどれ、本日の相手はと…。

 ん? フツーはメニューを気にするんだよねぇ。

 ねえ?

「パメラ、今日のお客さんは?」

「今日会う客ぐらい頭に入れておいてください」

 パメラは、こめかみを押さえている。

「いやね、高度な策略とかを考えてると、世事に疎くなってさあ…」

 私は笑ったが、

「……」

 パメラはジト目である。

 なんか、最近、私の周囲では多いな。ジト目のヤツ。

「本日は、サリエール氏がお見えです」

 パメラはカンペを読み上げる。

 自分だって、覚えてないじゃん。

「何ですか、文句ありますか?」

 すごい勢いで睨まれたので、

「いえ、ありませーん」

 私は、思わずかぶりを振った。

 ちっ。

 パメラのヤツ、後ですんごいエロいことしてやるんだからっ。


 サリエール氏は、えっとなんだっけ?

 なんとか教団の偉いさんだ。

 教団と、わが魔族とは交流があり、様々な方面で協力関係にある。

 会っといて損はない。

 ってわけだ。

「お久しぶりです、リータ殿」

「うむ、サリエール殿。元気そうで何より」

 私は、機嫌良くうなずいて見せた。

「この度はお食事に招待いただきありがとうございます」

「なに、サリエール殿と私の中ではありませぬか、てゆーか他人行儀ですぞ?」

 私は屈託なく笑って、度量を示す。

「リータ様! 『てゆーか』とか言わない!」

 パメラが私の隣で、力いっぱい、ささやいて、


 どげしっ


 足を蹴った。

 痛ーいっ。

「はあ、それはありがたき幸せですな」

 サリエール氏は、困惑気味で、ムリムリ作った笑顔を見せる。

「さ、どうぞ詰まらんものしかありませんがね、お口に合えば幸いです」

「リータ様! 『つまらないもの』と『お口に合えば』を一緒にしてはなりません!」

 またパメラが、いちゃもんをつける。

 ごちゃごちゃ、るせーな。

 ホント後で、ごっつエロい事してイジメてやるっ!

 なんとか時節の挨拶をこなしたところで、

「今日は、ちょっと相談がありまして」

 サリエール氏は、本題を切りだした。

「左様か」

 私は鷹揚にうなずいた。

 サリエール氏の話を要約すると、こうだ。


 ・最近、教団の力が弱まってきている

 ・他の宗教が強くなって来ているのが原因


「ふむ、それはマズイ傾向ですね」

 私は、考えた。

 我々は、かなりの部分で、教団の力に頼っているしな。

「なにか策を講じてみましょう」

「そう言っていただけると安心です」

 サリエール氏は、慇懃に頭を下げる。

「それと、小耳に挟みましたが、彼の国では何だか動きが活発化しておるようですな」

「そのようですね」

 私は、つまり、その対応に追われているところだった。

 何者か知らぬが、その策には目を見張るところがある。

 ま、私には及ばぬだろうがナ。

「……」

 私はそれ以上、しゃべらない。

「……すでに手を打ってあると?」

 サリエール氏は、早合点して、言った。

 いや、私もそこまで万能ではない。

 だが、その勘違いを利用しない手はない。

「まあ、仕上げをご覧あれ」

「やはり、リータ殿にご相談して間違いありませんでしたな」

 サリエール氏は、慇懃に頭を下げた。


「リータ様」

 パメラが言った。

「いつの間にそのような手を?」

「いや、あれはハッタリだ」

 私は正直に答える。

「…なんだ」

「いや、そんな目でみないッ」

 ちっ。

 私は、心の中で毒づいて、

「彼の国に貼り着いている者に連絡を取るさ」

「あ、そうですよね」

「あのね、私のことなんだと思ってるのさ?」

「あら、リータ様はリータ様ですわ」

 ツーン。

 パメラは、そっぽを向く。

 うん、グッド。

 あれ、落ちませんでしたよ?

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