第4話:学校にて

第4話:学校にて


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 えっと、今回は育成シミュレーション萌え……じゃなくって。


 魔族養成学校を視察!


 いや、その、可愛い学生を物色しようなんて邪な目的じゃなくて。


 純粋にですねえ、子供達の成長ぶりを見てこようという純粋すぎるほど純粋な、ねえ?


「あの、リータ様?」

 校長のアガリスクが、私を見ていた。

「うわっ。なんでカメがここに?」

 私は驚いた。

 アガリスクは、カメ型獣人である。

 龍人のニドヘグの親戚といえば分かりやすいだろうか。

「あの、リータ様?」

「お~、お~、お前はアガリスクじゃないか、出迎え御苦労サマ」

「……」

 アガリスクは、何をどうしゃべってよいか分からない様子である。

 それで、よく校長が務まるなー。

 てゆーか、何で私の顔をチラチラ見てる?

 ねえ?

「…いや、とにかく、よくお越し下さいました」

 アガリスクは、何だか物凄い自制心を発揮しているようだった。

 おかしなヤツだ。

「この度は、どのようなご趣旨で?」

「うむ、子供たちの成長ぶりを見ておこうと思ってな」

「あ、そうでしたか」

 アガリスクはうなずいた。

「では、授業風景を見て頂くのが手っ取り早いですな」

「そうだな」

 私は、アガリスクの後に続いて、校舎を見て回った。

 教室。

 運動場。

 なかなかいいな。

 いや、ヘンな意味じゃなく。

 授業では主に地理、算術、格技、魔法などを教えている。

 最も必要になるものを最短で叩き込む。

 それが学校に必要とされるものだ。

 で、やっぱり目につく、可愛い娘ちゃんと。

 短い黒髪のやせっぽちの小柄な娘とか。

 キッツイ目付きの娘とか……。

「リータ様、そのような目付きで、生徒達を見るのはお止め下さい」

「なっ…何を言うか、私がそういう目的で、生徒達を見てる訳ないじゃんか」

「……」

 アガリスクは半眼に近いまなざし。ジト目。

「ま、それも一種の出世の道ではありますがね」

「いや、決してそのようなことはないぞ?」

 私は、もごもごと答える。

 我ながら、言い訳がましいかな。

「青田刈りも甚だしいですな」

「あ、そっか。その手もあるな」

「はあ?」

 アガリスクは、本当に私が何を言ってるか分からないらしかった。

「いや、違うってば。てゆーか、そっから離れろ!」

「ぐぐぐ」

 アガリスクは呻いた。

 なぜかというと、私がヤツの首を絞めてるから。にゃはは。

「えっとな、成績の良い生徒をだな、優遇してやるんだ」

「良い考えですな」

 アガリスクは意外そうな顔でうなずいた。

 あー、もう!

 意外な顔をするなっつーの。

「では、さっそく草案を練りましょう」

 アガリスクは言って、校長室へ戻りかけたが、


 ううんッ


 私が咳払いをすると、

「あ、まだ何かありましたか?」

「うん。我等の軍勢を率いて行くには、カリスマ性も必要だ」

「どういう意味でしょう?」

「勉学以外に、カリスマ性の項目を作れということです」

 私は、厳かに言った。

 そうすれば、見目麗しい子たちがどしどし卒業して、配属されて、私の周りに……ふふふ。

「…わかりました、一応、入れときましょう。カリスマ性も必要ですからな」

 アガリスクはヘンな顔をしていた。


 で、配属されてきた新人なのだが、確かにカリスマ性があるのだろう。

 素晴らしくカリスマ性を発揮してる。

 カメだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る