第3話:書斎にて

第3話:書斎にて


 さて、今日も一日覇業に勤しむとするかー。


 古の知識を紐解くのも覇業の足がかりとなる。

 魔女とは言っても、魔法に頼ってばかりではない。

 知識や知恵を磨くのが、覇業の第一歩。

 ってな感じで理論武装して、やってきました書斎でアリマス。

 我が書斎は征服した国から押収し、または供出させた書物で一杯なのさ。

 それを管理する司書役は、シェリルだ。

 シェリルは吸血鬼。

 純粋魔族ではなく人間から魔族化したタイプだ。

 北方の出身なので、金髪碧眼、グラマラスな肢体の女の子だ。

 シェリルに会えると思うだけで、わくわくするよ。

「リータ様、今日はどういった御用向きで?」

 書斎に入った途端、シェリルが言った。

 いつものように蝙蝠に姿を変えて、梁にぶら下がっている。

「そう、最近の懸念事項について、何かヒントになればと思ってね」

「さいですか」

 シェリルは、


 ぼん。


 空中で変化して、すたっと床に着地する。

「それでしたら、この辺りの本はいかがですか?」

「ふーん、どんな内容だい?」

 私はわざと訊いて見た。

「古代の策略家たちがしたためた本ですね」

「カビくさい理屈が書いてあるだけじゃないの、それ?」

「いいえ、そんなことはありません!」

 シェリルは抗弁する。

 ムキになって反論するところが可愛いねえ。

 もっとイジメたくなってくるよ。

 にひひ。

 私が嗜虐的な目的を持っているとも知らず、シェリルは滔滔と持論を並べ始める。

 あながち机上の空論とも言えないのだが、私は適当に流した。

「という訳で、シェムハザは罠にはまって人間の女を娶ってしまいました」

「美人計ってヤツだねぇ」

 私は意味ありげにうなずいた。

「そうですね、若干、下種な言い方ですが」

「我らもそういう計略を活用して敵を篭絡したりしてかないとね」

「はあ」

「力でぶつかるばかりが能じゃないよ。魔族ってったって限界はあるからね」

「そんなもんですか」

「神族が出張ってきたら、今まで見たいに簡単にはいかなくなるよ」

「ですが、神族は下界には不干渉を守り続けてますよ」

「今はね」

 私はドスを効かせて言った。

「は、さいですか…」

 シェリルはちょっとおびえた感じで上目遣いに私を見る。

 あーこれこれ。

 ゾクゾクくるねえ。(笑)

「シェリル、他には?」

「はいはい、ただいま」 

 シェリルが本を選んでいる間、私は読書用のデスクに腰掛ける。

「よっこらしょっと」

 あら、私としたことが、おほほ。

「リータ様、これなんかはどうですか?」

「どりどり?」

 私は出された本を覗き込む。

 シェリルと顔を付き合わせるような形になった。

 シェリルが、また持論を並べて出しているが、私は聞いていなかった。


 すっ。


 シェリルのふくよかな腰に手を回す。

「ひあっ?!」

 シェリルは驚き、身を固くする。

「あら、感度良好じゃない?」

「リータ様ッ、真昼間っから……」

 シェリルは顔を真っ赤にしていた。

「いいじゃないか、私のこと嫌いかい?」

「いいえ、そんなことは……って何、言わせるんですか!」

「正々堂々と真昼間から楽しむのがいいんじゃないか」

「……悪魔」

「わーい、ほめられたぁ」

 という訳で、オフィスラブというヤツにしけこみました。

 私は職場が大好きさ。

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