ドラゴンのいる生活

 クレアとメロディが経営する花屋には、小さくて可愛いドラゴンがいる。


 結局クレアたちは子ドラゴンのウェントゥスを預かる事になった。メロディとウェントゥスは大の仲良しになって、いつも一緒にいる。


「ウェン。こっちのいちごも美味しいよ~」

「ピィー」


 メロディは植物魔法で作ったフルーツをひっきりなしに食べさせている。ドラゴンは尊い聖獣なので、肉や煮炊きしたものは食べない。ごくまれに生の野菜や果物を食べるのだそうだ。


 だがメロディは、ウェントゥスのフルーツを食べる姿が可愛いといって、モリモリ食べさせている。クレアはため息をつきながら言った。


「メロディ。フランマに言われたでしょ?ウェントゥスに沢山食べさせないでって。お腹壊したらどうするのよ」

「心配しすぎだよクレアちゃん」

「ピィー」


 ウェントゥスがメロディにしきりにピィーピィー言っている。メロディはウェントゥスの鳴き声に耳を傾け、フンフンとうなずいてからクレアに言った。


「ウェンがね、クレアちゃんはフランマに似ていて口やかましいだって」

「メロディ、ウェンの言っている事わかるの?!」


 クレアは腹立たしい事を言われたよりも、メロディがウェントゥスの言葉を理解した事の方が驚いた。メロディは、ほにゃんとしまりのない笑顔で答えた。


「うん、何となく」

「ピィー」


 メロディのよくわからない返答にウェントゥスが嬉しそうに鳴いた。



 クレアとメロディが花屋の仕事をしている時も、ウェントゥスは小さな翼をパタパタさせて飛び回っていた。その愛らしい姿が城下町でウワサになり、花屋はますますはんじょうした。


 ウェントゥスはメロディにべったりだが、唯一メロディから離れる時がある。それは夜眠る時だ。ウェントゥスが来た最初の夜、メロディはウェントゥスを抱っこして寝た。夜中にしこたまけられてからは、ウェントゥスはメロディの側では寝なくなった。クレアとメロディの足元で小さく丸くなって寝ている。


「グハァ」


 クレアはメロディの腕がのど元を強打し、うめき声をあげた。ゲホゲホと咳をしながら足元を見ると、ウェントゥスがニヤニヤとクレアを見ていた。


「もう!イジワルな子ねぇ!」


 ウェントゥスは、ピッと短く鳴いてから目を閉じてしまった。クレアは苦笑いしてから再び目を閉じた。

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