守護者のドラゴン
おそらくメロディが抱っこしている子ドラゴンの守護者なのだろう。上空の巨大なドラゴンはグルグルとうなり声をあげていた。ドラゴンの言葉が理解できないクレアでも、このドラゴンが怒っている事がわかった。
チラリとメロディを見ると、彼女は子ドラゴンを抱きしめたいままブルブル震えていた。このままではクレアもメロディもドラゴンに殺されてしまう。
クレアは激しく後悔した。自分の判断のために、メロディを危険な目にあわせてしまった。せめてメロディだけでも助けなければ。
巨大なドラゴンは、ゆっくりと地面に降りたつと、ゴオォと激しい咆哮をした。口からは炎が漏れ出ている。どうやらこのドラゴンは、ファイヤードラゴンのようだ。
それならばクレアの水魔法で隙を作る事ができないだろうか。ファイヤードラゴンはクレアが魔法を使うとは思っていないだろう。そこをつくしか活路はない。クレアの最大限の水魔法をファイヤードラゴンにおみまいし、その隙にメロディだけでも逃そう。
クレアはそう心に決めると、メロディに振り向いた。するとメロディも目に涙を浮かべながら、クレアを見て言った。
「ク、クレアちゃん。あ、あたしが植物ツタ魔法であのドラゴンを拘束するから、その間に逃げて」
メロディは歯をガチガチいわせながら言った。その表情に、クレアは危機的状況にもかかわらず吹き出してしまった。メロディもクレアと同じ気持ちだったのだ。クレアは胸の奥がカァッと熱くなった。メロディにここまで大切に思われて嬉しいのだ。クレアは笑って答えた。
「何言ってるの、メロディ。二人で同時に攻撃して、二人で一緒に逃げるの!いいわね?!」
メロディは一瞬ほうけたような顔をしてから、泣きながら笑って答えた。
「うん!」
「私が合図したら、ファイヤードラゴンの足元をツタ魔法で拘束して!」
「うん!だけどこの子は?」
メロディは腕に抱っこしている子ドラゴンを見つめて言った。クレアはイライラしながら答えた。
「ゆっくり地面におろして。ファイヤードラゴンはその子を助けようとしているの。その子は心配ないわ」
「うん、わかった」
メロディはゴクリとツバを飲み込んでから、かんまんな動作で子ドラゴンを優しく土の上におろした。それを見届けたクレアはチラリとファイヤードラゴンを盗み見た。ファイャードラゴンの視線は子ドラゴンに向いている。今しかない。クレアは大声で叫んだ。
「メロディ!行くよ!」
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