りんごのパン2

「さぁメロディ、小麦を作って?」


 クレアの言葉にメロディはうなずいて、もう一度中庭に出た。クレアは人使いが荒い。だが美味しいパンを食べるためだ。メロディは中庭の土に手を置くと、地面から沢山の芽が飛び出した。グングンと伸びると金色の小麦になった。


 メロディはクレアを呼んだ。小麦を見たクレアはうなずいてから、メロディに後ろにさがるように言った。クレアは水魔法を発動させると、小麦を一気に刈り取ってしまった。水はどんな形にも変化させる事ができるのだ。


 クレアほどの水魔法の使い手になると、鋭利な刃物と同じくらい切れ味がいいのだ。メロディとクレアは手分けして小麦をまとめる。小麦の束は五つになった。


 翌日花屋の休憩時間を利用して、小麦粉工場に小麦を小麦粉にしてもらいに行った。


 五つあった小麦の束は小さな麻袋の小麦粉になった。メロディはクレアに早くパンを焼いてとせっつく。クレアはりんごを入れたビンを見てから首をふる。どうやらまだのようだ。


 クレアは朝夕ガラスビンのふたを開けておく。メロディには何をしているのかよくわからない。


 りんごをビンに入れてから三日経ち、クレアが言った。


「見てメロディ!酵母ができてる!」


 メロディがクレアの差し出したビンの中を見ると、りんごに細かな水の粒が沢山できていた。


 クレアはパン作りに取りかかった。ボウルに小麦粉、ぬるま湯、りんごの入っていた水、塩、砂糖を入れて切るように混ぜる。木の台のでよくこねる。その後バターを入れてさらにこねる。


 ひとかたまりにまとめてから濡れぶきんをかけておく。どれくらい置くのかとメロディがクレアに聞くと、いちじはっこうするまでと言われた。


 やっとの事で生地が二、三倍にふくれあがった。メロディは喜んでもう焼くのかと聞いたが、まだなのだそうだ。


 その後さらに発酵をさせる。ようやくパンの型に入れて薪のオーブンで焼いた。しばらくすると、パン屋さんでかいだパンの美味しい香りがしてくる。


 三十分焼いて、ようやくパンが焼けた。クレアが型から取り出すと、ふかふかのパンが完成した。メロディはキャァと声をあげた。クレアはパンのはしを切ってメロディに食べさせてくれた。温かくて、しっとりとしてとても美味しかった。ほのかにりんごの香りがした。


 その日の夕飯は、とても豪華だった。焼きたてのパンと、ベーコンの切れはしが入ったトマトスープだった。すべての料理を腹におさめると、メロディはとても満足した。

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