りんごのパン
メロディとクレアで始めたお花屋さんはおおむね順調だった。お花も売れてお金がもうかったはずなのに、クレアはガンとしてお金の無駄使いを許してくれなかった。
クレアはお花の売上金を必要経費を差し引いて貯金していた。メロディからすれば少しくらいぜいたくをして美味しいものを食べてもいいのではないかと思ってしまう。
メロディとクレアのもっぱらの食事は、メロディが植物魔法で作った野菜のスープだった。クレアは料理上手なので、作ってくれた野菜スープはとても美味しい。味もトマトベースだったり、ミルクを入れてクリームスープにしてくれたりと工夫をしてくれる。
だがメロディはもっと違うものが食べたかった。たとえば焼きたてのパン。フワフワでモチモチの良い匂いのするパンが食べたかった。メロディは今日も今日とてクレアにおねだりした。
「ねぇクレアちゃん!パン食べたいよぉ。今日市場のパン屋さんからとってもいい匂いがしたの!焼きたてのパンの匂いだよ?!ねぇねぇ」
クレアは机に向かって何かの計算をしていた。きっと経営する花屋での収支の計算だろう。メロディにはさっぱりわからない。クレアは計算がひと段落したとみえて、メロディに振り向いて答えた。
「メロディ、そんなに焼きたてのパンが食べたいの?」
「うんうん!」
「じゃあ作ってみようか?」
「えっ!クレアちゃん、パンも作れるの?」
「ううん、作った事無い。でも作り方ならわかるわ。ねぇメロディ、どうしてパンがフワフワにふくらむかわかる?」
「うんとぉ、パン屋さんの魔法?」
「そうね、美味しいパンを焼けるパン屋さんは魔法使いかもね?でもちょっと違うわ。パン屋さんはね、パン種に酵母を混ぜて発酵させているの」
「こうぼ?はっこう?」
「そう、じゃあやってみようか。メロディ、りんご作って?」
メロディは何故クレアがりんごを作れというのかわからなかったが、中庭に出て植物魔法でりんごの木を作り出した。りんごの木にはたわわにりんごの実がなった。メロディは手がとどく実をもぎ取った。
りんごを両手にかかえて台所に行くと、クレアが多すぎと言った。後でマサラの所に持って行こう。クレアはなべでガラスびんを煮ていた。煮沸して雑菌を殺すのだそうだ。何か怖い事を言っている気がする。
クレアはメロディからりんごを受け取ると、綺麗に洗って八等分に切った。ガラスびんに切ったりんごと水を入れる。
これからどうするのかと聞くと、クレアは発酵させるのだと答えた。
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