メロディの恩人

 メロディは飽きる事なくとなりに眠るクレアの寝顔を見つめていた。クレアはメロディのために美味しいパンを作ってくれた。


 クレアは水魔法の達人だがもう一つ魔法を使えるとメロディは考えている。それは美味しい料理を作ってくれる事だ。


 クレアは美人で頭が良くてとっても優しいのだ。メロディはクレアにいつも感謝している。メロディとは大違いだ。メロディは自慢ではないが、とても物覚えが悪く、物忘れが激しい。


 メロディとクレアが小さい頃、フレス村で子供たちが学ぶ学校があった。若い頃王都で学んだ事のある学のある老人が先生となり、子供たちに教えてくれていたのだ。


 その中でメロディは一番勉強のできない子供だった。学校の少年たちはこぞってメロディの事をバカにした。お前みたいな頭の悪いヤツ、立派な大人になんてなれないぞ。


 子供は平気で人の心を傷つける。幼いメロディにとっては死刑宣告されたも同然だった。メロディはいつも学校に行きたくないと泣いていた。そんな時クレアが言ってくれたのだ。


 メロディはバカなんかじゃない。メロディが覚えられないのは、その事がらがメロディにとって重要ではないって事よ。メロディが忘れっぽいのは他の大切な事を覚えるためなんだから。


 その時のクレアの表情を、忘れっぽいメロディは今もありありと覚えている。クレアはとても優しい笑顔で笑ったのだ。


 クレアはメロディに勉強を教えてくれた。クレアの助けもあり、メロディは何とか学校を卒業する事ができたのだ。


 メロディにとってクレアは女神のような存在だった。クレアは将来冒険者になりたいといった。メロディは思わず叫んだ。


 あたしも、あたしも冒険者になる。


 メロディの言葉にクレアは困った顔をした。冒険者とはとても危険な職業だからだ。クレアはメロディが危ない目にあわないか心配なのだろう。


 クレアは村で一番の水魔法の使い手だ。だがメロディは小さな植物の芽を出現させるくらいの植物魔法しか使えなかった。


 クレアがメロディを冒険に連れていく条件は、植物魔法を強化させて戦えるようになる事だった。


 その時からメロディの夢は、植物魔法を強化させ、クレアの役に立つ事になった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る