花屋開業
翌日朝早く起きて、メロディに作ってもらった野菜でスープを作った。メロディは美味しいと言って食べてくれた。
今日は植木鉢を買いにいかなければいけない。メロディは植物を生成する事はできるが、植木鉢などは作る事ができない。クレアとメロディのわずかなお金で植木鉢を買い、お花が売れたらまた植木鉢を買わなければいけない。
マサラに陶器の店の場所を教えてもらい、とりあえず十個の植木鉢を買った。土はお店の中庭からもらう。メロディか土に触れると、肥沃な土になるのだ。十個の植木鉢に土が入れば今度はお花だ。
メロディはクレアに聞いた。
「ねぇ、クレアちゃん。どんなお花がいい?」
「そうねぇ、インパクトがある花がいいわね。大輪のバラとか」
メロディはうなずいてから植木鉢に手をそえた。植木鉢が輝くと、ピョコンと植物の芽が生えてきた。植物の芽はスクスク大きくなり、ツタをはり、やがて真っ赤な大輪のバラが咲いた。
「綺麗」
クレアは思わずため息をついた。メロディの植物魔法は何度も見ているが、花が咲く瞬間は何度見ても感動してしまう。
メロディは他にも、ユリ、スイセン、チューリップ、アマリリスと見事な花を咲かせた。店の前はあざやかな花に囲まれて一気ににぎやかになった。
一仕事終えたメロディは満足そうにフウッと息をはいた。メロディは早くお客さん来ないかなぁと、店の前をウロウロし続けていたが、やがて店の前にしゃがみ込んでしまった。
「クレアちゃん。お客さん全然来ないよぉ」
メロディが泣きそうな声で言う。この通りは町の人たちの住む住居に直結している。その一本先の大通りは旅人や町の人たちで賑わう市場通りなのだ。
クレアたちの店は裏通りで通行人も少ない。このままではかんこ鳥になってしまう。クレアは意を決してメロディに言った。
「メロディ、お店にお客を呼ぶには宣伝しなければだめだわ。大通りに行くわよ!」
「せんでん?」
クレアはメロディを連れて市場通りに向かった。そこは昼時にもかかわらず、いせいのいい声か飛び交っていた。鮮魚店や精肉店が客を呼び込み、果物屋は新鮮な果物を手に持って大声でまくしたてる。
「さぁさぁ採れたての新鮮なりんごだよ?!ほっぺが落ちるほど甘いよ!」
果物屋のかけ声にメロディが反応する。
「クレアちゃん!ほっぺが落ちるくらい甘いんだって?!買ってみようよ!」
「メロディ、あんたりんご作れるでしょ?無駄使いしない!」
メロディはにぎわう市場のお店に興味津々で、ちょこまか動き回る。クレアはメロディの手をつないで店と店のあいだに引っ張って行った。
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