貸店舗
お花屋さん。いいかもしれない。クレアは小さくつぶやいた。メロディの植物魔法は、触れた植物を生み出す事ができるのだ。沢山の花や植物に触れれば、どんな花も育てる事ができる。つまり元手がかからないのだ。
メロディにしてはいい事いうじゃないと思い、貸店舗の張り紙を読む。張り紙には、店舗を借りたい場合はマサラまでと書いてある。道ゆく人にマサラの居場所をたずねると、こころよく教えてくれた。
クレアたちが教えられた家に行き、ドアをノックすると、ふくよかで優しげや五十代くらいの女性が出て来た。この女性がマサラ本人だった。クレアはマサラに貸店舗を借りたいむねを告げると、喜んで貸してくれるといった。マサラは微笑んで言った。
「あのお店はね、私の父が雑貨屋をやっていたの。メイン通りの市場は旅行者向けで値段が高いからね、父は街の人たちにこわれて安価な値段の商品を売っていたの。父が亡くなって雑貨屋は閉めたんだけど、父が大事にしていた店だからねぇ。私がたまに風を通したりしているからすぐに暮らせるよ?」
クレアとメロディはキャアッと手を叩いて喜び礼を言った。
クレアとメロディはマサラから店のカギを受け取り店舗に向かった。マサラの言った通り、店の掃除と風通しはやってくれていたので、二階の部屋はすぐにでも暮らせそうだった。だがやはりホコリはかぶっていて、クレアとメロディは掃除を開始した。窓を開け、口元を布でおおい、ほうきではいて拭き掃除をした。
日が暮れる頃、やっと掃除が終わった。ヘトヘトになったクレアとメロディのお腹がグゥッと鳴った。クレアが食事にしようと言った。メロディは喜んでクレアの後について一階に降りた。外のお店に食べに行くのだと思っているようだ。
だがクレアたちにはあまりお金がない。村から持参したお金はきりつめて使わなければ。クレアはメロディをお店の小さな中庭に連れてきて言った。
「さぁメロディ。私たちのお夕飯にする野菜を作って?」
「ええ!クレアちゃん、これから料理するの?!もうお腹ペコペコだよぉ。外に食べに行こうよぉ」
「ダメ!無駄使いできないの!」
クレアとメロディが言い争いをしていると、誰かがお店のドアをトントンとノックしている。出てみると、先ほどのマサラだった。マサラは手にバスケットを持っていた。バスケットからはいい匂いがした。中にはチキンソテーとレタスが入ったボリュームたっぷりのバケットサンドが二つ入っていた。その横には密閉容器が入っている、中身はコーンスープだそうだ。
クレアとメロディにマサラが差し入れをしてくれたのだ。クレアとメロディは胸がジンとあたたかくなった。今日初めて会ったばかりの人に親切にしてもらったからだ。クレアはメロディに声をかけた。
「メロディ!」
「うん!マサラさん、お家で必要な野菜はありますか?」
マサラはメロディが何故そんな事を聞くのかわからず首をかしげるながらも、トマトとじゃがいもとカボチャと言った。メロディはニッコリ笑って中庭に走って行った。しばらく経つと、手には持ちきれないほどのトマトとじゃがいも、大きなカボチャがあった。マサラは驚いて言った。
「貴女植物魔法が使えるの?」
「はい!親切にしていただいたマサラさんにほんのお礼です」
「すごいわね!じゃあこのお店でどんな商売をするの?」
「「お花屋さんです!」」
クレアとメロディの声が重なった。マサラは微笑んで、素敵なお店になりそうね、と言ってくれた。
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