41、イケメンと陰キャ

「おう!こらクラス委員長のメガネ!お前に威厳がないから親友に逃げられるんだぞ!」

「まだ弄るのかミヤミヤ……」

「ゴーストポイズンごときが馴れ馴れしいぞ!」


ミヤミヤが知り合ってから、よく俺に突っ掛かるようになってしまっていた。

水瀬さんだけでも強敵なのに、ミヤミヤも混ざることでそれはもうクラスの男子は誰も逆らえない図になるわけである。

ギャル悪魔コンビが隣にいる威圧感はめちゃくちゃ強い。


「ほら!愛からもメガネになんか言ってやんないと!」

「メガネのメガネは今日も普通のメガネだね」

「直接馬鹿にされる言葉以上に馬鹿にされている気分なんだが……」


前髪で隠れてよくわからないメガネに対してどんなテキトーな褒め言葉だと突っ込みを入れたくなる。

流石水瀬さん、俺への傷の付け方があまりにも手慣れ過ぎている。


「にしてもさぁ、親友とゴーストポイズンじゃ釣り合わないじゃん!イケメンと陰キャって!イケメンと陰キャって!!」

「なんで2度イケメンと陰キャって煽った?」

「『イケメンと陰キャ』って言い方がまるで『美女と野獣』みたいだね」

「うわっ!愛の指摘的確じゃん。言い方的に野獣側が陰キャじゃん!」

「だと思ったよ」


つまり親友君が美女側である。

でも、絶対親友君がTSしたら素敵な人になりそうだから甘んじて俺が野獣側の陰キャを受け入れようとする所存である。

たまにはミヤミヤも的確な意見をぶっ込む奴だと感心を覚える。


「でもさ雅。『美女と野獣』の野獣の正体ってイケメン王子じゃなかった?」

「確かそんな感じだったよねぇ。デスティニー映画知識しかないけどぉ」

「あれ?ミヤミヤ、アニメとか見ないんじゃなかった?」

「ニュースの特集でやってたんですぅ!私がアニメ映画なんか見るわけないじゃん!」


ニュースの特集でそんな美女と野獣のイケメン王子の正体とか踏み込んだことやらない気はするんだけど……。

彼女、本当はアニメとか大好きなんじゃ疑惑が深まるばかりである。


「んで、メガネは無視して!野獣の正体がイケメン王子でそれがどうしたの愛?」

「いや。なんとなくそこのメガネのメガネと前髪無くしたらイケメン出てくんじゃね?ってなんとなく思った」

「えー?こんな不潔前髪からイケメン出てくるとか、逆に嫌なんですけど」

「不潔前髪……」


メガネも前髪もないバージョンの平野コウに対してめちゃくちゃ馴れ馴れしかったミヤミヤはどこに行ったのか。

「あり得ないって!」と腹抱えて笑われていた。


「なぁ、ゴーストポイズン?なんで前髪伸ばして目の露出控えてんの?」

「単に人前で顔晒すの恥ずかしくて……」

「もう生き方からして陰キャじゃん!」

「生き方が陰キャの自覚あるからね……」


ミヤミヤにめちゃくちゃからかわれながら、朝の時間は過ぎていく。

彼女にからかわれている時はちょっぴり水瀬さんが優しいのがまだ救いであった。

それからすぐに担任の先生がやって来て、ホームルームがはじまり1日の授業漬けの毎日が繰り返される。

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