40、平山剛は逃げられる

「委員会とかどうせ月1じゃん。ロクに部活もしてないんだしそんなに気落ちすんなや」

「そうなんだけどねー。事前に委員会なのを知っていたら覚悟出来ていたのに、当日に予定が割り込むのが許せんのよ。澪のやつめーっ!」

「ふーん。そんなもんなんだね」

「しかも俺、クラス委員と図書委員の2つ兼任してんだぜ?意味わかんねーよ」


澪と別れて親友君と教室に向かっていた。

一気に憂鬱感に苛まれているところに親友君のフォローが心を暖める。


「そういや俺、剛が図書室の管理当番しているの見たことないや」

「そもそも親友君は図書室来ないじゃん」

「確かに。俺、図書室の本読まないし」

「来てくれても良いんだよ?」

「グラビア雑誌を置いてくれたらワンチャン行く」

「グラビア雑誌置き場作る提案とかいつか出してみよ」

「お前って人から言われると行動力爆上がりよな」

「指示待ち人間なんだよね」


平野コウが誕生したのも親友君からの指示が原因だったことも思い出す。

自発的な行動が出来ない自分を責められている気分になる。


「確かに指示待ち人間は楽なんだけどなぁ……。指示する人間消えると悲惨だぞ……」

「そ、そうなんだよね……」

「でも、多少コウになると指示待ち率が下がる気がするよ」

「え?マジ!?」

「なんかその内剛が死んでいき、コウが本体になるんじゃないかと心配している」

「コウって寄生虫かなんかなの!?」


しれっとおっかないことを言ってくる親友君に驚愕する。

でも、コウになると指示待ちが少なくなっているのは良い傾向かもしれない。

そのあと、すぐに親友君は友達に呼ばれてしまい1人で廊下を歩くことになる。

『ちょっとしんゆーっ!』と俺のターンだったのに、クラスの男子が空気も読まずに呼び出しただけで俺はボッチになってしまったのだった……。

相変わらず男女問わずにモテモテな彼であった。

1人寂しくなりながら教室のドアを開けた。

それから自分の席に座った。

今日の時間割りはなんだったかなと確認していた時だった。


「プークスクス。ゴーストポイズンったら親友に逃げられてやんのーっ!うけうけるーっ!」


水瀬さんが自分の席に座っているところの側に立っていた天敵のミヤミヤが俺の姿を視界に捉えると真っ先に笑いだした。

水瀬さんは笑っているミヤミヤとは対称的に、俺に申し訳なさそうにしていた。


「ラノベ」

「ひぃぃぃ!死ねオタク!耳が腐るわ!」

「…………」


相変わらずオタク用語が弱点のミヤミヤはラノベの単語だけで拒否反応を示していた。

「親友に逃げられただけでもかわいそうなんだからやめなよ……」と水瀬さんは同情している。

親友君に逃げられた姿が見られたことに気付くと情けない気持ちがふつふつと沸き上がってきていた……。

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