37、宮崎雅は連絡先を知りたい
「へぇ!へぇ!へぇ!へぇ!」
「あ、あの……。へぇ~ボタンみたいなことを口にだしてどうしたの……?」
「あー、ごめんねぇコウコウ」
じろじろと俺の周り360度からくまなく見てくるミヤミヤに声をかけると申し訳のなさ0パーセントの謝罪がくる。
普段から水瀬さんとは隣の席なこともあり、ギャルという人種のことは大体理解した気になっていた。
別に今回は一切不快ではないのでミヤミヤの反応を楽しんでいた。
「あと、コウコウとは……?」
「アダナー!可愛くない!?」
「めっちゃ可愛いぃぃぃ!」
「そ、そうなんだ……」
水瀬さんは同意見とばかりに賛同していた。
ギャルはギャル同士、感性もよく似ている。
あと、ネーミングセンスが俺が名付けたミヤミヤと同じなんだけど、俺とも感性が似ているのではないだろうか……?
平野コウ状態ならともかく、平山剛状態でそれを指摘しようものなら顰蹙を買いそうだ……。
「宮崎さんは愛さんと仲良しなんだね」
「まぁ、ウチら去年もクラス一緒だったからねー」
「高校で知り合ったけど、変な幼馴染よりよっぽど仲良いよー」
「へ、へぇ……。去年も同じクラスなんだ……」
つまり、俺とも同じクラスだったんかい!
クラスのギャルなんか俺にとっては敬遠対象である。
俺がピッチャーをしているとしたら、大谷翔平がバッターとして打席に立ったくらいに要注意人物なのだ。
「それにしても、コウコウ男前過ぎない?」
「そ、そうかな?俺、クラスでは微妙な立ち位置だし……」
「いーや、クラスとかマジで関係ないから。ね、愛?」
「そうそう。コウ君で微妙な立ち位置とか嫉妬されているんじゃないかな」
「あはは……。そうなのかな……」
クラスで俺の立場を微妙にしている2人から言われると愛想笑いも引き吊っていないか反応に困るところである。
俺は今、誤魔化せるように笑っていられるのだろうか。
鏡が欲しいところだ。
「ねぇ、コウコウ。ライン交換しよっ!ライン!」
「え?ライン?」
「あっ!ずるいよ雅!?わたしだってまだ連絡先もらってないのに!」
「え?なんで?」
「あ!そうだった!コウ君のスマホは今は直ってる?」
「…………あ!!」
水瀬さんに尋ねられて、自分のスマホなんかいつに壊れたのかと考えてみてもそんな記憶はなかった。
ただ、親友君がスマホの調子が悪いという言い訳をしたことを思い出した。
そうだった、そうだった。
俺のスマホ、壊れているみたいな空気になり、水瀬さんと連絡先交換をしていないんだった。
「うん。直ってるよ」
自分のスマホを水瀬さんとミヤミヤに掲げて見せた。
一応、平山剛と同じスマホであるが、見た目でバレないカモフラージュはバッチリだ。
スマホケースの色も形もまったく違うものにするという荒業で見た目を誤魔化していたのだ。
これならば『あれ?コウ君とメガネ、同じスマホだね』という危険も察知できる。
完璧な策である。
──当然、親友君アドバイスが無ければ一切気付かなかったかもしれない。
「じゃあじゃあ連絡先交換だーっ!」
「ちょっと雅!流石にわたしのが先だからね!」
「順番なんて一緒!一緒!」
「だめっ!わたしのが先に知り合ったんだからコウ君はわたしから最初に連絡先交換して!」
「言い出したのは私が先だよ!?ね、コウコウ!?」
「う、うん。け、ケンカはやめようね……」
俺の連絡先交換だけで、友情を壊さないか不安になる。
結局、ミヤミヤから言い出しっぺで「じゃんけん勝負よ!」となり、それに乗っかる水瀬さん。
結果は10連続あいこという恐ろしい白熱したじゃんけんが繰り広げられたが、油断したミヤミヤがパーを出したところに水瀬さんがチョキを出して返り討ちにしたのであった。
2人だけのじゃんけんで10連続あいことは今まで見てきたじゃんけんで1番見ごたえのある試合だったのである。
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