36、水瀬愛は誤解される

服の上着、スカート、ジーンズなど色々は服を水瀬さんと一緒に鑑賞していく。

メガネは俺の好みを教えていたが、服装は水瀬さんの好みを披露する場になっていた。

色々な系統を分析していくと、黒や紺色や藍色やグレーなど黒っぽい服が好みなのかなとか勘ぐってしまう。

彼女の好みが1番似合っていたのは、俺も同意見ではあった。


「こういう白とかはあんまり似合わないんだよねー」と、苦笑しながら白や黄色などは避ける傾向にあった。

「ワイシャツとかも似合わなくて嫌なんだよね……」とそんなコンプレックスなども教えてくれた。


1時間くらいはそんな感じで時間を浪費していた。

女の人の服装とか見たくても見る機会がない俺にとっては、横に水瀬さんがいるだけで違和感がない口実になっているのがありがたい。

野郎1人で女性ものの服を見ているのは、心理的にもちょっと受け付けない。


「大体1周したしどっか行くコウ君?」

「そうだねー……。愛さんが満足したのなら移動しよっか!」

「おおむね満足だねー」


特に買うものもなく、文字通りウインドウショッピングを終えて、愛さんが足を動かしてすぐであった。


「あれ、愛じゃん!やぁー、休日にぐーぜんじゃーん!」

「あ!雅!」

「っ!?」


聞き覚えのある声、見覚えのある顔、水瀬さんから雅と呼ばれる。

この3拍子が揃ったら人と名前が一致しない俺でも誰なのかすぐに思い付く。

宮崎雅さん。

通称・ミヤミヤ。

人をなめ腐った性格をした銀髪ギャルであり、雅という名前の逆を行くクラスの女子である。

うわぁ、苦手だなぁ……とミヤミヤを視界に入れないで見知らぬ顔をして服を眺めている人に徹する。


「愛も服見に来たんー?」

「服を見に来たというよりは時間を潰しに来たの方が近いかな」

「ウインドウショッピングってわけね!なるー」


世間話をしている水瀬さんとミヤミヤ。

苦手だから早くミヤミヤには退場を願っていると、「ん?」と不吉なミヤミヤが何かに気付いた声がする。

「あれ?」と言われてビクッとする。


「ねぇ、愛?その人は…………?どなたさん?」

「あぁ。彼はボーイフレンドだよ!こっちは平野コウ君!今日は一緒に歩きまわってたの!」

「へぇ。あの愛が男子と……」

「え?あ……。ひ、平野です。愛さんの友達?……です」


いまいち水瀬さんと俺の仲は口で表現するには難しい仲である。

知人以上友達未満と認識しているので、友達を名乗った。

一応は知人よりも友達寄りではあると思う。


「ふふっ。緊張し過ぎだよコウ君ったら。こっちは宮崎雅ね。わたしとは仲良しな親友なんだー」

「宮崎雅でーす!よろしく!」


紹介されて、ガッツリミヤミヤと顔を合わせることになる。

「っ!?」と驚かれて、クラスメートだと気付かれたかとこちらも「っ!?」となりビクッとした。


「えぇ!?すごっ!愛の彼氏!?」

「全然違うよぉ!そんなんじゃないしぃ!」


ミヤミヤから彼氏と誤解され、まんざらでもない水瀬さん。

ミヤミヤも俺とは気付かないらしく、水瀬さんをいじりはじめた。

なんでいつもいつも平野コウ状態になると知り合いとばかり会うことになるのか。

運命を呪い、恨みはじめてしまう……。


「……………………」


はぁ……、安心したと思い、露出している額を手で拭い汗を払っていたのであった。

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