27、水瀬愛は気にしないで欲しい
「まったく、まったく!オタクはきっしょい!聞いたことないゲームタイトルなのになんでこんなに鳥肌が立つのよ!」
プンプンとおかんむりなミヤミヤはよほどオタクが嫌いらしい。
ゲームのタイトルだけで拒否反応を示すレベルのようだ。
そこで俺は「ん?」と呟きながら、とある違和感に気付いた。
「ねぇねぇ水瀬さん」
「ちっ……。なんだよメガネ。馴れ馴れしいぞ」
「ミヤミヤさぁ、ド●クエに反応したけど、聞いたことないのにどうしてゲームタイトルってわかったんだろうね?知ってるよね?絶対知ってるよね?」
「確かに……。これ知ってるね」
「知ってるよなぁ!?絶対ミヤミヤ、ド●クエって知ってるじゃん」
「…………し、知らないよ?」
「もう無理だよ」
たどたどしい拒否反応に、俺と水瀬さんはジーっと視線を送る。
水瀬さんが『雅はゲームとか?アニメとか?そういうの嫌いなのよ』と言う程度には毛嫌いしているのだが……。
「まあまあ、知らないは無理だって。テレビでCMとかも流れるし知ってはいるんだよね雅?」
「知ってはいる!知ってはいるからってゲームは大嫌いなのは変わらないから!」
「わかってるよ」
強い念押しに『こいつ、むしろゲームとかアニメとか大好きなんじゃないか?』という疑念は尽きないが、この場では飲み込んでおく。
ミヤミヤは水瀬さんの宥めにとにかくは落ち着いたようだった。
金髪な水瀬さんと銀髪なミヤミヤという妙に絵になる2人だなと他人事のように眺めていた。
「むーっ!こいつ嫌い!なんかムカつくんだけどこのゴーストポイズン野郎!愛に付いてまわるストーカー男めっ!」
「付いてないって……」
「はいはい。大丈夫。妬かない、妬かないの……」
嫉妬深い性格なのか、かなり妬いている様子だ。
水瀬さんが、ミヤミヤの肩を掴み抑えている。
水瀬さんのことを大事にする友達からは、俺はお眼鏡には叶わなかったようだ。
「最近愛がぁ!クラス委員長ばっかり気にしてるんだもん!愛がこいつを意識してんだもん!」
「えっ?」
「え…………?」
ミヤミヤの発言に俺と水瀬さんが同じ言葉を口にしながら、目が合った。
水瀬さんが俺を意識している……?
そんな……、まさか……。
──あり得るわけないって。
ないない。
彼女の面食いな場面を知っている俺からすると100パーないって……。
「は、はぁぁ?ありえねー。あり得るわけないっての!」
「本当に?」
「本当よ」
美しい友情劇が開かれているが、こっちはこっちで複雑な気分である。
「…………ざまぁ」
「なにがだよ!?」
その水瀬さんの一言に愉悦に浸ったようなムカつくドヤ顔を披露する。
水瀬さん以上の天敵がまだクラス内にいたとは……。
「そろそろ鐘鳴るよ?」
「そうだね。バイバーイ愛!また後で」
宮崎雅。
通称・ミヤミヤ。
その名前、絶対に忘れない。
立ち去る彼女を見ながら、ライバル心のようなものが沸き上がった。
その後だった。
隣の水瀬さんから小さく「メガネ」と呼ばれて振り返った。
「……わたしの言ったこと気にすんなよ」
「え?なにが?どういうこと?」
「ちっ…………。どういうことかはお前の頭に脳があるなら自分で考えろよ」
「え?」
理不尽な言い分と同時にホームルームの鐘が鳴り響く。
悶々とした気分を引きずりながら、授業に望まざるを得なかった。
『……わたしの言ったこと気にすんなよ』
どういう意味?
どういう意味?
どういう意味?
喉に魚の骨が詰まったような気持ちになり、英語の小テストを頭を真っ白になりながら受けることになったのであった……。
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