12、桃田澪
ファミレスに高校が同じでかる幼馴染3人全員集合し、みんなが遠慮なくワイワイと騒ぎだしていた。
親友君と2人っきりよりも、澪がいるほうがより盛り上がるのだ。
「まったく、親友は下品なんだから……。下品オブ下品だね」
「男はちょっと下品なくらいがモテるんだよ。ファッション下品ってやつな!下品だと、下半身もOKだと思われやすいしね!」
「なるほど!流石親友君だ。覚えておこう。メモメモっと……」
「なお、『イケメンに限る』が抜けてるよ親友。剛が真に受けちゃってんじゃん!」
「まぁ、顔や姿によっては通報されかねないけどな……」
「あれ!?俺ディスられてる?」
親友君の教えをスマホにメモしていたが、隣の澪から「やめなさい」と諭されてしまう。
渋々スマホから指を離すのであった。
「私は剛も全然良いと思うけどなー。前髪上げたらスッキリしそうじゃない?あと、メガネも取ってみると良いかも」
「お、おぉ!」
流石、親友君と同じ程度の付き合いがある澪である。
発想がまるっきり同じで感心すら覚えるレベルだ。
「澪、ダメダメ!剛は前髪もっさりメガネだから良いんだよ。前髪なし、メガネなしとか言ったら平山剛の平と剛が無くなるようなもん。つまり山だぞ!」
「山ってなんだよ!?」
「いや。私は山と剛が無くなった平だと思うよ」
「平ってもっとなんだよ!?」
好き勝手にレスバをしてくる幼馴染2人の相手は大変である。
特に親友君と澪が対立し、仲裁に入るのが俺みたいなパターンが結構多い。
「とにかくもっさり前髪メガネじゃない剛は剛じゃないんだっ!」
親友君のごり押し力説の圧が強すぎる。
因みに彼からは絶対に平野コウの姿は晒したくないという意思が強く見られる。
澪にすら秘密にしたいらしい。
男だけの秘密とかちょっと満更でもない。
「歯並びとか肌とかキレイだから磨くと光るダイヤだと思うんだよね」
「はっ!磨かないと輝かないなんてそんなのダイヤじゃねぇ!ダイヤってのは存在だけで光るんだよ!」
「中々上手い返しをしてくるね親友。ただ、ダイヤモンドなんてものは石だよ。加工して輝くものじゃないか」
「ダイヤモンドならな。残念ながら今は剛の話をしているんだ……」
「俺をオチに使うなよ」
わりと薄情な親友君である。
「私は普通に剛好きだけどなぁー。絡みやすいし、聞き上手だし!」
「み、澪……。あんまり好きとか言うなよ恥ずかしい……」
「そしてウブ!ほれほれ、腕組んじゃうよー」
「はわわわわ!?し、し、し、親友君!?澪が、澪がぁぁぁぁぁ!」
本当に腕を組んできて、胸を押し当ててくる。
中学からこの状態になると罪悪感が津波のようにおしかかってきてしまい、頭が混乱してしまうのであった……。
「お前はパニクりすぎ。澪はもう思春期男子をからかうのやめろよ」
「1番からかうのが親友のクセによく言うよ」
それはまったくその通りである。
『そうだ言ってやれぇぇ!』と彼女を応援しまくりたくなる。
「でも、私はやっぱり剛は好きだよー」
「そ、ソウデスカ……」
「こう、男と女を感じさせられないんだよね。ドキドキがないから」
「そ、ソウダネ」
「隣の奴、男も女も感じるし、ドキドキしてるって顔にしか見えないが……」
小学生の時から距離感がまったく変わらない澪にはどぎまぎさせられる自分がいる。
水瀬さんの舌打ち、妹の純粋な暴言とは違う意味でこういうところは苦手なところである。
「もう!情けないなぁ剛!こんなんじゃあ女の子と付き合えないよ!」
「そんなこと言われてもなぁ……」
「じゃあ、いっそ剛と澪で付き合えば?」
「私が剛と?」
「親友君が僻むじゃない?」
「僻まないっての。大丈夫、俺は澪には手なんか出さねぇから」
「なんで私が親友に振られたみたいになってるのかわかんねぇし!」
確かに親友君の言葉は振ったように見えなくもないか。
「え?えぇ!?わ、私と剛がぁ?付き合う?」
「てか澪も嫌だろ。いきなり幼馴染から彼女にランクアップってよ」
「そっかぁ……。もし2人が付き合ったら友人代表のスピーチ……」
「え?親友君がしてくれる!?」
「奏ちゃんにしてもらおうとしたのに……」
「何故そうなるの!?妹がするわけないじゃん!」
俺から見て、妹は友人ですらない。
「わ、わ、私は別に剛と付き合うことくらい嫌なんかじゃあ……」
「えぇ!?嫌じゃないの澪!?」
も、もしかして澪って俺のことが好きだった?
知らない衝撃展開に、大声で聞き返してしまった。
「はい、トラップぅぅぅ!すごく食い付いたじゃーん剛ぃぃ!」
「ひええええ」
「いや、剛弱すぎでしょ。ハニートラップに弱いとかダメだなこりゃ」
「う……」
「好きでもない子が好意ある演技してたらもろに引っかかる典型的な例だね」
2人が結託すると、本当に落とし穴にぶっ込まれたような心境にさせられる。
やっぱりモテないって辛いわぁ……。
「…………」
「凹むなよ、剛!」
「おかわり持ってきてあげるから元気だして!さぁ、ほら!」
「エナジードリンクとゼロコーラのミックス」
「ミックス一丁入りました!さぁ、親友」
「って、俺が持ってくるんかい!あと、ミックスってなんだよ!」
ドリンクバーたむろはそのまま2時間程度続き、終始2人に弄られ続けられるのであった。
ヒエラルキーは圧倒的に3人の中でビリケツである……。
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