第6話 異界と好奇心

ここは異世界の地、"カルガナ"


かつてこの世界は、魔族、亜人、人類が共にいがみ合い、千年をも越える終らぬ争いを繰り返していた。そんなロマンの欠片もない世界に、今から約二百年前に突如として現れた一人の賢者によって、長きに渡る争いに終止符が打たれた。



賢者は、エルフ族と人族とのハーフで、それはそれは美しい美女だったと言う。


更に未来を見通す力を持っており、荒廃した世界を再築、そして平和のためにその力を奮ったそうだ。


しかし、賢者に取って未来を見通すとは、相当な集中力と忍耐が必要なものであった。


普通の人が聞けば、誰もが羨ましがる様な能力だが、実際、賢者に取っては、一度未来を見ようとすると、何千、何万通りの未来が一気に見えてしまうため、オーバーヒートによる頭痛や発熱を引き起こしやすかったそうだ。



そのため賢者は、無益な争いを避け、敢えてこの世に住まう真の悪を示すことで、本来倒すべき敵を種族問わず選定し、各地で広がる無駄な争いを減らそうと考えた。



その結果、千年近くいがみ合い続けた魔族、亜人、人類たちの争いは、仲介人である賢者の指導の元、次第に結束するようになって行くのであった。


それから、後の帝都となるグレイム王国を中心に、悪政を働く国家、人種差別主義国家、奴隷国家、残忍な無法国家を次々と滅ぼし、現在の多種族交流の平和な世界となった。





この世のことわりは善と悪の二つでしかない。


これはすべての生きし者に与えられるさがであり、おのが未来を変える大きな分岐なり。


善は、人を助け喜びと平和を望むものなり。

悪は、おのが欲を優先し己だけの欲と平和を望むものなり。


例えるならば、種族が違うと言って、

その種族を悪と断定するは、これこそ悪なり。


種族は所詮種族なり。

目の前にいるその者の本質を見抜いてこそ、

善と悪が見えるものなり。


故に、種族を問わず手を取り合う事こそ善なり。


されど、善が悪になることもしかり、悪が善になることも然り、考えようで左右は然れど、所詮この世に生を受けし者は皆、善悪の二つなり。


異世界の平定後、

賢者が和平講和でうたった講釈こうしゃくである。



これにより、魔族、亜人、人類との関係を見直すこととなり、誤った歴史や言い伝えを改善することで、多種族共存の世の中を作り上げられるいしずえとなるのであった。



時奈「これが異世界"カルガナ"の歴史だな。」


桜華「た、大変な歴史ですね。でも、傷だらけの異世界を平定しても、反発する方々は居たのではないのですか?」


時奈「まあ、千年近く続いた戦争だからな。おいそれと分かり合える方が難しい話しだ。当然、平定後に納得しない者たちが次々と決起したりして、少し動乱は続いた様だけどな。」


桜華「で、では、今もあまり安全なところでは‥。」


ルシア「クスッ、そう心配しなくても大丈夫よ。そんな二百年前に起きた反乱なんて、とうの昔に鎮圧されているわ。」


桜華「た、確か、そうでしょうけど…。」


ルシア「まあ、心配する気持ちは分かるわ。でも、争い事態は、かれこれ百年近く起きてないわよ。」


桜華「百年…ですか。」


ルシア「えぇ♪でも、国同士の争いが無いからと言って安心するのは禁物よ。中には、話すら通じない野良魔族や、野盗見たいな連中に出くわす場合があるから油断はできないのよね。」


桜華「野良魔族、野盗って…今まで皆さんは、そんなところに行っているのですか。」


時奈「あはは、大丈夫だよ。普段私たちが行くところは、"一応"、野良魔族や野盗が出没する様なダンジョンじゃないからな。」


自信満々に答える時奈であるが、

初見の桜華からして見れば少々心配である。


その前に"一応"と言う言葉に、

桜華は心配のあまり桃馬に話を振る。



桜華「と、桃馬さん?これは本当なの?」


桃馬「そうだな、俺もいくつかダンジョンを回っているけど、ほとんど危険な生物や野盗は見たこと無いな。」


桜華「よ、よかった‥。」


憲明「そう、心配しなくていいよ♪いざとなれば桃馬が一命を賭けて守るから。」


桃馬「なっ!?こほん‥ま、まあな。」


小頼「おぉ~、これは桃馬の見せ所だね~♪」


桜華「クスッ、それは頼もしいですね♪」


桃馬「ちゃ、茶化すなよ。恥ずかしいだろ…。」


桃馬は恥ずかしさを誤魔化す様に、

そっぽを向いて顔を隠した。


時奈「さっ、軽い説明もしたことだ。そろそろ、ダンジョンに向けて出発するぞ。」


部員「おぉー。」


時奈の出立しゅったつの合図に、

各部員たちは一斉にゲートをくぐった。


初めて異世界へおもむく桜華は、ゲートの先に広がる異世界ならではの美しい光景を楽しみにしていた。


しかし、ゲートの先にはあったのは、

小さな木造小屋の中であった。


おそらく、ここも異種交流会の活動拠点なのだろう。


壁には写真や地図などが貼られており、机の上には活動で使われるであろう代物が並べられていた。



異種交流会の部員たちは、ここで腰を下ろすこともなく、そのまま外の方へとおもむいた。



木造小屋の外に出ると、まさに神秘的な大自然が広がっていた。広い草原に暖かな風が吹き込み、その空気は現実世界と比べて何倍もんでいた。


何よりも心地よい世界に心を打たれた桜華は、

意気揚々と桃馬たちの後を追うのであった。




二十分後。



異種交流会の一行は、目的地の廃ダンジョンに到着した。


洞窟の入り口には、見たことがある黒髪短髪の男性が立っており、誰かを待っている様であった。


桜華「あ、あの人‥、確か、数学の吉田先生?」


桃馬「あ、言うの忘れてたね。吉田先生は、この異種交流会の顧問なんだよ。」


桜華「そ、そうだったのですか!?な、何でしょう少し意外ですね。」


桃馬「もっと怖い人を想像した?」


桜華「は、はい、何て言うか、もっと体育会系の先生が顧問かと思ってましたから。」


まさかの何ら特徴もない普通の先生が、この部活の顧問である事に、筋肉ムキムキで大剣を軽々しく振り回す様な先生を想像していた桜華は、少し拍子抜けをしてしまった。



時奈「吉田先生、お待たせしました。」


吉田「おぉ、やっと来たか。今日はやけに遅かったな。」


時奈「すみません、ここに来る前に新入部員の歓迎をしていまして。」


吉田「新入部員?」


新入部員で入った桜華の事を知らない吉田先生は、首を傾げるながら部員たちを見渡した。


すると直ぐに、吉田先生の目に桜華の姿が映ると、何となく事の経緯を理解した。


吉田「お、おぉ、まさか今日転入生して来た柿崎さんが入るとは、すると桃馬の勧誘か?」


時奈「みたいなものですね。それより、中の方はどうですか?」


吉田「あぁ、下見はしてみたけど、噂通りの廃ダンジョンみたいだな。取り敢えず、今回初めての柿崎さんも居る事だから、柿崎さんをかこう様に移動しよう。」


時奈「同感です。それじゃあ、みんな配列を決めるから呼ばれたら並んでくれ。」


時奈と吉田を先頭に、

二列目、憲明とリフィル

三列目、桃馬、桜華、ギール

四列目、ルシア、小頼

五列目、ジェルド、京骨(ジェルドにおんぶされている)



時奈の独断で決められた配置に、

一番不満そうだったのがジェルドであった。


瀕死の京骨をおんぶした上、桃馬との距離も遠く、しかも殿しんがりと言う寂しい位置である。



だが、その反抗も"桃馬の背中を守って上げることで、信頼と株を上げるチャンスだ"と言う、時奈からの一言であっさり納得してしまうのであった。



これを見ていた主従ライバルのギールは、まんまと良い様に丸め込まれたジェルドに、尻尾を振りながら嘲笑あざわらっていた。



廃ダンジョンの中は、洞窟系ならではの足下の悪さに加え、外の気温と比べて肌寒く、夏ならちょうどよい避暑地であった。



正直、松明がなければ薄暗くて歩きづらいところだろうが、先に下見をしていた吉田先生が一定間隔で松明をつけていたため視界は良好であった。



桜華「な、なんか思ったより緊張感がないですね?」


吉田「はっはっ、すまない。生徒の安全のためだからな。」


時奈「運が良ければ、隠し通路ってのもあるからな。探して見るのもいいな。」


桜華「そ、それは楽しみですね!」


小頼「あはは、裏ボス的な魔物がいるかもね♪」


吉田「ま、まあ、できれば探してほしくはない所だけどな。」


一行は辺りを注意しつつ歩いていると、

奥の方から足音が聞こえた。


吉田「‥みんなストップだ。何か聞こえる。」


リフィル「うーん、奥から二人ですね‥。」


憲明「さすがリフィル、耳がいいな?」


時奈「感心してる場合ではないぞ?少し警戒するんだ。」


桜華「だ、誰もいないんじゃなかったのですか?」


吉田「廃ダンジョンと言っても、冒険者や野盗とか色々な人が入り込むからな。我々が入る前に誰か来たのだろう。」


桜華「も、もし魔物なら?」


吉田「授業の一環として退治だろうな。」


桜華「が、学生が殺生ですか!?」


ジェルド「この世界なら当たり前だ。殺らなきゃ殺られる。」


ギール「例え多種族共存でも外れた者とは交流できない。まあ課題の一つだけどな。」


憲明「そうそう、異世界には異世界のやり方、元の世界なら元の世界のやり方、ここは割り切らないとな。」


桜華「‥み、皆さんは、この世界でどのくらい殺生を?」


タブーに近い桜華の質問に、全員苦笑いをしながら誰も答えなかった。


相当、異世界で魔物を討伐しているようである。



そんなやり取りをしていると、奥の方から二人のハンマーを持った髭面のおっさんが現れた。


吉田「‥あっ、マドルさんじゃないですか?」


マドル「おぉ、鷹幸、それに交流会の皆さんじゃ

ねぁか?よかった~、帰り道に松明なんかともっているから野盗か何かが入り込んで来たのかと思ったぞ。」


吉田「こっちもマドルさんで安心したよ。ここにいるということは、素材の採取ですか?」


マドル「おぉ、そうだ。だけんど、ここも枯れかけてきてるな。鉱物もこれだけしか取れんかったぞ。」


背負っている篭を見せると、鉱物は篭の半分も入っていなかった。


桜華「と、桃馬?あの人は?」


桃馬「ドワーフのマドルさんだよ。もう一人は、見たことないけど弟子かな?」


桜華「どわーふ?」


桃馬「鍛冶職人に特化した種族だよ。訳あって学園にはいないけど、現実世界では大きく貢献してる種族だよ。」


桜華「‥職人‥確かに風格がありますね。」


唯一学園にいないドワーフ族。


ドワーフ族が学園にいない理由としては、

大酒喰らいに続いて、気性が荒く、勉学にはほとんど興味がない職人根性ばかりのため、ドワーフ族の大半は学園、学校と言った学舎まなびやに通っていないのだ。


しかし、己の腕を磨きたいと願う一部の研鑽けんさん者は、異世界の学園か、九州方面を中心に各都道府県の工業系の学校に足を運んでいるそうな。



マドル「ん?見慣れない子だな?新入部員か?」


たまたま目に入った桜華と目が合うと、思わず桜華は一礼して挨拶をした。


吉田「彼女は柿崎桜華さんだ。あっそうだ、マドル?ひとつお願いが‥。」


マドル「あぁ、皆まで言うな。嬢ちゃんの武器の依頼だろ?」


吉田「さすが親方だ。察しがいい。」


マドル「何回もこの流れで頼まれてるからな。それで作るのは、日本刀か?槍か?青銅剣?斧か?」


吉田「それは本人に聞いてみないと‥柿崎さん?何がいい?」


桜華「わ、私はこれでいいのですけど?」


吉田「でもそれって、部室にあった物だろ?せっかくだから新しく‥。」


桜華「こ、これがいいんです。」


花柄の刀を抱きしめ、桃馬をチラリと見る。

ドワーフ族は鈍感だが、マドルに至っては瞬時に察した。


マドル「あはは、それならその刀を打ち直してやろうか?」


桜華「えっ?」


マドル「なにやらその刀に思い入れがあるようだからな。」


桜華「えっと、はい//」


桜華は頬を赤らめながら静かに頷いた。


マドル「決まりだな。それじゃあ鷹幸?時間が出来たら嬢ちゃんの刀を持ってきてくれ。」


吉田「あいよ。あっ、そうだ、二人の他に誰か奥にいたか?」


マドル「いいや、見かけなかったが?」


吉田「ふぅ、それを聞いて安心したよ。ありがとう。」


マドル「あはは、礼はいい。だけど奥の方は何もないぞ?それでもいくのか?」


吉田「あぁ、ダンジョン見学の一環だからな。」


マドル「あはは、それはご苦労様だな。ああそれと、この先道がもっと悪くなるから足元には気を付けろよ?」


吉田「ありがとう。それじゃあ、みんな行くぞ。」


ドワーフ族のマドルのアドバイスを得た一行らは、そのまま、更に意気揚々と奥へと進んだ。



マドルが言ってた通りダンジョンの奥は、これと言った物はなく、薄暗く足下が悪い光景が続いた。


桜華「‥これと言って見所はないですね?」


桃馬「うーん、やっぱり廃ダンジョンだけあってスリルもないな。」


時奈「ふむぅ、そうだな。ここらでさかったオークでも出てきてくれたら、凌辱展開の緊張感を味わえるのにな。」


桃馬「部長‥。ちょっと表現控えてください。」


吉田「そうだな。こんな奥まで来たら触手の魔物でも出てきてくれないかな。あいつに捕まっても意外と悪くないんだよな。ケツに変なの突っ込まなければだけど…。」


桃馬「おい、こら教師、何言ってるんだ。」


憲明「半年前に味わった感覚を思い出してるな。」



小話。

これは半年前の事、とあるダンジョンでの探索中。吉田先生が、触手の魔物が作った落とし穴に落ちてしまい、凄惨せいさんな触手攻めにあった過去があった。


普通、触手攻めと言えば、姫騎士、魔法使いなどの美女たちが標的にされ、無数の触手に凌辱りょうじょくされてしまう展開が、エロ同人誌やエロ系の作品において定番とされている。



触手系の魔物が作った落とし穴に落ちた者は、男女問わず凌辱を受けるのだが、男に関しては容赦なく口には言えない程の行為を強要され、解放され吐き捨てられた時には、しばらく立てない程である。



しかし、心の傷の代償として、触手系の魔物が持つ粘液や体液には、がん細胞を殺す成分が含まれており、直で襲われた人は、その日の内にがん細胞とは縁が切れるメリットがある。



だが、癌を失くせるとは言え、行為が不純すぎるため、今では研究が進み薬だけで直せる時代となっている。




ルシア「クスッ、昔は淫行イベントが当たり前だったからね~♪あぁ~あ、久々に見たいな~♪」


小頼「くっころ騎士様とかね♪」


リフィル「うーん♪私は現実よりも薄い本の方がいいかな♪」


桃馬「お前たちは、ダンジョンに何を求めてるんだ。」


卑猥な話に便乗する女子たちに桃馬が引いていると、一方の男たちも負けじと、ようやく意識を取り戻した京骨を仲間に加えて悪ノリし始める。


京骨「ならここは、ジェルドとギールの出番だな。ルシア以外の好きな女の子を襲え。」


ジェルド&ギール「じゃあ、桃馬。」


桃馬「はっ?」


京骨「なるほど、桃馬は女扱いか。」


小頼「‥けもみみ男子二匹に襲われる桃馬。」


ルシア「へぇ~、いいじゃない。是非観賞して見たいわ!」


桜華「ごくり‥。」


ジェルド「はっはっ、桃馬良いだろ?」


ギール「ジェルドより優しくしてやるからよ~♪わんわん」


女子たちは目を光らせながら注目する中、桃馬の犬たちも同様に目を光らせながら尻尾を振った。


しかし、桃馬は性欲に飢え始めた二匹に対して、

冷めた目付きで拒絶する。


桃馬「しばくぞ駄犬ども‥。それと京骨、復活して早々話に便乗するな。」


ジェルド「わふっ!?そ、そんな~。」


ギール「くぅ~ん。」


京骨「おっと、すまない。」


憲明「ははっ、桃馬も大変だな。」


桃馬「はぁ、たまには憲明もこっち側に回れよ。」


神出鬼没過ぎる話に振り回された桃馬は、無意識で適当な壁に手をつくと"ポチッ"と何かを押した音がした。


桃馬は慌てて手を離して近くで凝視して見ると、そこには、土と同化したボタンらしきものがあった。


時奈「どうした桃馬?」


吉田「何かあったか?」


桃馬「え、えっと、ここにボタンみたいなのが。」


吉田「ボタン?」


桃馬がボタンらしきものを押してから数秒後、

地鳴りと共に土に隠れた隠し扉が開いた。


これには思わず一行らは、呆然と立ち尽くした。


時奈「えっと、これは隠しダンジョンでしょうか?」


吉田「かもしれないな。」


吉田先生は、リュックから余りの松明を取り出すと、そのまま火をつけ投げ込んだ。隠し扉の先は、まだ奥に続いている様であり、通路の幅もそれ程広くはない様であった。


吉田「よし、ここは俺が先に見てくるから、みんなはここで待ってなさい。」


時奈「やむ終えませんね。私たちはここで待機していましょう。」



吉田先生は、新たな松明に火をつけると、

生徒を残し、一人だけで隠し扉への奥へと進んだ。


だがその道は、わずか五十メートル程度しかない一本道であった。辺りに扉の様な物は無く、あったとすれば、行き止まりの岩壁に設置されたボタンであった。


吉田先生はボタンをためらいなく押すが、何も変化はなかった。



だが、吉田先生が押したボタンは、部員たちが待機している付近にある二つ目の隠し扉に繋がっていた。


部員たちは、前触れもなく開く隠し扉に呆然としていた。


二つ目の隠し扉の先には、

黄緑色の光を放っており、怪しさに満ち溢れていた。


桃馬「ぶ、部長。な、何か嫌な予感がします。」


時奈「うーん。これは吉田先生が戻るまで待つべきか。」


怪しすぎる光に動揺する桃馬であるが、

一方の女子たちは興味津々であった。


小頼「こ、こんなの見せられてお預けだなんて‥。」


ルシア「ちょっと、見るだけなら構わないわよね♪」


リフィル「中が気になります!部長、見に行きましょうよ!」


桜華「わ、私も見たいです!」


好奇心にかられた女子たちは、今か今かと隠し扉の先に入ろうとする。対して男子たちは、あまり乗り気ではない様子であったが、大切な彼女たちを負傷させないため先頭に名乗りを上げた。


時奈「よし、わかった。でも、危険を感じたら直ぐに待避するぞ?」


部員「おぉ~。」


準備が整い隠し扉に入ろうとすると、隠し扉の奥から、黒髪ロングで立派な二本の角を生やした女の子が出てきた。



?「ふぁ~、なんなのだ。余が気持ちよく寝てるいたのに…騒々しい‥。」


まさかの可愛らしい女の子の登場に、時奈たちは驚いた。


どうやらこの隠し扉は、彼女の寝床だったらしい。


時奈「あ、す、すまない。君の寝床だったとは思わなくて。」


?「君?ふっ、人間風情が余を誰だと思ってる?」


部員「悪魔。」


?「うむ、余は悪魔‥って、余がそんな低級種族な分けなかろうが!余は魔王だぞ!ひれ伏して懇願しろ!」


桜華「ま、魔王?うーん、イメージ違うような。」


小頼「そういう夢を見てたの?」


リフィル「可愛い~♪」


ルシア「今時魔王宣言なんて古いわね~♪」


時奈「この様な所に、こんなにも可愛い魔王が居たとはな。悪い悪魔や悪い人間に捕まって"幼女プレイ"を強要される前に保護しないと。」


?「貴様ら!余を馬鹿にするな!って、よく見たら悪魔と亜人が混ざっておるな。なんで、人間たちと一緒にいるのだ!?」


ルシア「魔王なのに知らないの?」


?「な、なんだ?戦争に変化でもあったのか?」


ルシア「戦争って‥、ちなみにあなたは何代目の魔王よ?」


?「ふっ、下等な者たちに名乗る程、余の名は安くないのだ。」


ルシア「部長帰りましょう。話が通じないみたいですから。」


時奈「その様だな。残念だけど仕方ない。早く先生を呼び戻して去るとしよう。」


シャル「ま、待つのじゃ!?よ、余は八代目魔王シャル・イヴェルアだ!」


ルシア「八代目魔王?」


時奈「えーっと、八代目魔王シャル・イヴェルアって、確か、突如として行方不明になったって言う魔王だな?」


シャル「ゆ、行方不明だと!?」


何が起きたのか全く理解できない自称魔王様。

そしてこれが、異種交流会初となる魔王との遭遇であった。


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