第4話 異種交流会は異端者(変人)揃い

昼休みの交流で、転入生の柿崎桜華と親しくなった桃馬たちは、午後の授業も問題なくこなし、気づけば部活動が始まる第一次下校時間が迫っていた。



放課後前のホームルームが終わり、一日の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、下校する生徒を始め、各自所属する部活へ向けて一斉に解散した。


桃馬「さーてと、授業も終わった事だし、俺らも部活に行こうかな。」


憲明「おう、そうだな。ジェルドはどうする?また、エルゼちゃんの所に行くのか?」


ジェルド「あ、あぁ、今日は友達と一緒に部活を見てまわるって言っていたけど、ちょっと心配だからな……。」


憲明「あはは、過保護だね〜♪まあ、過保護になる気持ちは凄く分かるけどな。」


桃馬「あぁ、あの守ってやりたい可愛さ……。一人にさせたら"野良犬"に襲われるかもしれないからな。」


ジェルド「なっ!?こ、こほん、と、取り敢えず、エルゼが落ち着くまでの間、部活に行けない日が多くなるかもしれないと、"時奈ときな"先輩に伝えておいてくれないか?」


桃馬「あいよ〜。あと、しつこ過ぎてエルゼちゃんに嫌われるなよ〜。」


ジェルド「っ!わ、分かってるよ。」


桃馬に釘を刺されたジェルドは、思わず尻尾を直立させながら教室を後にした。


するとそこへ、部活を知らない桜華から素朴な質問を投げ掛けられる。


桜華「あ、あの〜、部活と言うのは、一体何でしょうか?」


桃馬「あぁ、部活って言うのは、一日の授業を終えた後にやる。運動、文化など、それぞれのやりたい事を極めたり、授業だけでは分からない事を知るための"もの"……って言えばいいかな?」


桜華「っ、そ、それって、もしかして、夕方や休日になると、河川敷で走り込んでいる方々と関係があるのでしょうか?」


桃馬「うーん、そうだな〜。河川敷で走り込んでいるとなると、主に野外で活動している運動部の可能性があるな。」


桜華「や、やっぱり、そうでしたか…。それにしても、その運動部とは本当に凄いですよね。毎年、真夏の日でも関係なく、河川敷を走り込んでいるのですから……。」


小頼「まあ、それが運動部のさがだからね〜。でもね、暑苦しい運動部の他にも、文化部見たいに"楽"で楽しい部活もあるんだよ〜?」


桜華「そ、そうなのですか!?」


今まで桜の上から見ていた桜華は、真夏の日でも関係なく走り込んでいた運動部の姿を思い出し、現状"部活"とは、全て過酷な"もの"であると思い込んでしまった。


しかしそこへ、"ぬるっ"と現れた小頼からの助言により、文化部と言う楽で楽しい部活もあると言う話を聞いた桜華は、思わず前のめりになった。


小頼「ふふっ、その様子だと桜華ちゃんは、運動部を基準にしていた見たいね〜♪」


桜華「っ、え、えぇ、まあ……。わ、私は、河川敷で走り込んでいる方々しか知りませんでしたから……。」


小頼「ごくり。か、可愛い…。」


桃馬「ま、まあ、知らないのも無理もないだろう。」


桜華のモジモジとした姿に、小頼は生唾を飲みながら釘付けにされ、一方の桃馬は、人差し指で"こめかみ"辺りを掻きながら苦笑いをしていた。


憲明「うーん、と言う事は、"かきざ"…じゃなかった、桜華さんはまだ部活を決めていない訳だ。」


昼休みの交流で、お互いの名前を下の名前で呼び合う事にした桃馬たちであったが、憲明に至ってはどうも慣れない様だ。



桜華「そ、そう言う事になりますね。えっと、ちなみに桃馬さんたちは、どんな部活に入っているのですか?」


桃馬「あぁ、俺たちは"異種交流会"って言う部活に入っているんだけど、運動部と文化部を足した様な部活だな。」


小頼「ちなみにジェルドも同じ部活だよ♪」


桜華「な、なるほど、そうなのですね。」


小頼「あっ、そうだ!この際だから桜華ちゃんも入らない?」


桜華「い、良いのですか?」


小頼「もちろんだよ。桃馬と憲明もどうかな?」


桃馬「い、いや~、強引に誘うのは良くないよ。現に"危険"も伴うし……。」


憲明「そうそう、下手をしたら"戦闘"時に負傷するかもしれないからな。」


桜華の入部にウェルカムな小頼であるが、一方の桃馬と憲明に至っては、かなり慎重になっていた。


桃馬と憲明にしても、聖霊である桜華が入部してくれるのは大変嬉しい事ではある。


しかし、桃馬たちが所属している部活は、少し危険な所へ行くため、グイグイと勧めるのはできなかった。


桜華「危険…戦闘…。」


桃馬「そ、そうそう、一応安全なダンジョンの探索と簡単な討伐クエストなどをメインに活動しているけど、絶対的な安全の保証はないから……。」


桜華「っ、わ、私、異種交流会に入りたいです!!」


桃馬「そうそう、入りたい…って、えっ?い、今何だって??」


耳を疑う様なワードを聞いた桃馬は、思わず桜華に聞き返してしまった。


桜華「えっ?で、ですから、異種交流会に入りたいと…。」


小頼「おぉ~!」


桃馬「ちょ、ちょっと待ってくれ桜華さん!?さっきも言ったけど、安全の保証はないんだよ!?」


桜華「そ、それは、分かっています。それに私は、以前から異世界の事について知りたいと思っていましたから。」


桃馬「だ、だけど、もし戦闘見たいな展開になったら……。」


桜華「だ、大丈夫ですよ♪こう見えて私は、多少の護身術を心得ていますからね♪」


桃馬「だ、だとしても……。」


何とも恐れを知らない桜華の威勢に困惑する桃馬であるが、するとそこへ、ピンチを察した憲明が、話に割り込んで来る。


憲明「あはは、聖霊でも異世界に興味があるなんて意外だな〜。てっきり俺は、聖霊ならいつでも異世界に行けるものかと思っていたからな。」


桜華「え、えぇ、恥ずかしながら…、い、意外ですよね?」


小頼「えっと、何か行けない理由があったの?」


桜華「は、はい、実は、聖霊と言っても、自由に世界を行き来する事は出来ないんです。それは、異世界に居られる聖霊も同じ事です。」


桃馬「な、なるほどな。つまり、聖霊も人間と同じ様に、ゲートを通らないと別世界には行けないんだな。」


桜華「は、はい、基本的にはそうなりますね。で、ですが、聖霊としての地位を高めれば、神界への行き来が許され、自由に別世界へ行けると聞いた事があります。」


桃馬「っ、し、神界!?な、なるほど、聖霊は神様の卵と言う事か。」


桜華「と、捉え方によっては、そうなりますね。」


小頼「っ!は、ははぁ~!桜華様〜!」


桜華が神様の卵だと知った小頼は、その場に正座をするなり、両手を上げながら地面にひれ伏し始めた。


ちなみに、あからさまな悪ふざけである。


桜華「っ、小頼ちゃん!?」


桃馬「あはは、何やってんだよ小頼~。」


憲明「はぁ、悪ふざけも良いけど、ふざけ過ぎて神罰を下されんなよ?」


小頼「っ、やーめた。」


憲明からの一理ある忠告により、小頼は直ぐに姿勢を正した。



桃馬「ふぅ……、神様の卵なら余計心配だけど…。と、取り敢えず、今日一日だけ仮入部って事なら何とかなるか。」


桜華「えっと、つまり今日は、お試しって事ですか?」


桃馬「ま、まあ〜、そうなるね。」


少々心配が残る状態ではあるが……。


その後、桃馬たち四人は、異種交流会の部室へ向けて教室を後にした。






桃馬たちが所属している異種交流会は、主にお互いの文化を尊重し合い、そして学ぶ事を部訓ぶくんとしている。


今や"共存共栄"の交流文化時代。


互いの文化を知るのは極めて大切な事である。


しかし、それは表上の話であり、実際の所は、桃馬と憲明が危惧する程、この部活には問題があった。




桃馬「よーし、ここが異種交流会の部室だよ。」


桜華「えっと、この部屋がですか?普通の教室に見えるのですけど?」


憲明「まあ、多目的教室だからね。普通の教室と言えば…、うん、そうだね。」


桃馬「まあ、先代の"生徒会長"…、いや、先代の"部長"が、この部室にゲートを開いたもんだから、部室を変え様にもできないだよね。」


桜華「す、凄い方が居られたのですね?」


小頼「そうそう、本当に凄かったんだよ〜♪あぁ~、今思い出すだけでも興奮してしまいそう……。」


桜華「ふぇ?こ、興奮?」


小頼「はぁはぁ、高貴なダークエルフから漂(ただよ)うクールでエロカッコいいたたずまい……、そして、あの健康的な褐色肌に加えて、とがったコリコリとした耳……じゅるり。」


小頼「そして極めつけは、"サラサラ"とした黒髪が"太もも"辺りまで伸びていて……、多くの生徒から学園の"女帝"って言われてたな~♪」


先代の生徒会長兼、部長であった"女帝"を思い出した小頼は、よだれを滴しながら息を荒くした。


桜華「こ、小頼ちゃん?」


桃馬「はいはい、見ちゃダメだよ。バカと変態がうつるから……。」


憲明「おいおい、ここで変なスイッチを入れるなよな?」


桃馬「…はぁ、悪いけど憲明?先に俺と桜華は部室に入るから、あの変態を何とかしてもらえるかな?」


憲明「わ、分かった。」


桜華に取って悪影響を及ぼすであろう光景と判断した桃馬は、変なスイッチが入った小頼を憲明に託すと、早速桜華と共に部室へと入って行った。



部室の中は、意外にも普通の教室とは違い。


資料を保管する棚を始め、異世界のアイテムがあちらこちらに並べられており、本格的な部活の雰囲気を漂わしていた。


更に、桃馬たちの目の前には、"コの字"型に並べられた長机の中心に一人の女子生徒がパソコンと向き合っていた。


桃馬「お疲れ様です、時奈ときな先輩。えっと、仮入部希望者を連れて来たのですが……。」


?「ん、おぉ、桃馬か。仮入部希望と言う事は、ようやくこの部活に興味を持ってくれた新入生が現れた様だな。」


彼女の名は、新潟時奈あらがたときな


この異種交流会の部長にして、更に春桜学園の生徒会長を務める美女である。


更には、クールな顔立ちに続いて、惹かれる様なカリスマ性を漂わし、綺麗な黒髪をなびかせていた。


それゆえ、学園の男子生徒と女子生徒からの人気は高く、また憧れのまとでもあった。


だがしかし、当然欠点もある訳で……、この部活に所属している部員たちは、新潟時奈と言う少女の本質を知っていた。


桃馬「あ、いえ、新入生と言うよりは、編入生ですが……。」


時奈「ほう、編入生か……、つまり、今日から二年一組に編入したという、柿崎桜華さんが来た訳だな。」


桃馬「っ、さ、流石は新潟先輩。もう耳に入っていましたか。」


時奈「ふふっ、当然だ…。それより、君の後ろに立っている方が、その柿崎桜華さんであろう?」


桃馬「え、えぇ、その通りです。(や、やっぱり、時奈先輩の状況分析能力は鋭いな……。)」


流石は、春桜学園の生徒会長。


桜華と直接会っていなくても、数少ない情報と可能性を元に答えを導いていた。


時奈「ふふっ、それなら早速、自己紹介でもするとしようか……。」


初めて対面する桜華に微笑みを浮かべた時奈は、ゆっくり席を立つなり挨拶を交わそうとする。


時奈「初めまして柿崎桜華さん。私は、この異種交流会の部長にして、この春桜学園の生徒会長を務めている新潟時奈あらがたときなと言います。」


桜華「ふぇっ!?せ、せせ、生徒会長!?」


桜華が驚くのも無理もない。


突然、目の前にいる美女が、"生徒会長です"…なんて名乗って来たら、普通に驚いてしまうであろう。


時奈「ふふっ、少し驚かせてしまいましたね。」


桜華「す、すみません……、思わず取り乱してしまいました。」


何ともクールでカリスマ溢れる時奈の姿に、思わず緊張が走る桜華であったが……、この後すぐに、その緊張は一瞬にして崩れる事になる。


時奈「あはは、そう気にするな。それより桜華さんは……、"桃馬の嫁"なのか?」


桜華「ふぇ?」


桃馬「はっ?」


突然過ぎる話の入れ替わりに、不意をつかれた桜華と桃馬は、キョトンとした表情をしながら時奈を見つめた。


時奈「ん、どうした二人とも?あっ、も、もしかして、嫁じゃなくて……"性ど…"…。」


桃馬「っ、そんな訳ないでしょうが!?」


ツッコミの無い事を良い事に、更にありもしない爆弾発言をしようとした時奈に対して、桃馬は急いで止めに入った。


時奈「ふふっ、冗談だよ♪」


桃馬「いやいや、今のは冗談になってないから……、そもそも、俺と桜華さんの関係は、まだそんなに深くないですよ!?」


時奈「ほぅ〜、深くないと言う事は、スタートラインには立っているのだな?」


桃馬「じ、実感はないですけど、そうだとは思います。」


時奈「ふむ、それなら今夜は、君の家に桜華さんを招いて、あれやこれやと"わからせ"たらどうだ?」


桃馬「相変わらず、ぶっ飛んだ"クソやから"染みたプレイですね!?」


桜華「ふぇ?や、輩プレイ??」


聞いた事がない卑猥な単語に、桜華は小首を傾げながら疑問に感じていた。


時奈「ふふっ、冗談だ。こうでもしないと、桜華さんの緊張がほぐれないと思ったからな。」


桃馬「いやいや、ほぐれるどころか、警戒するかと思いますが……。」


時奈「ふーん、では桃馬に聞くが、卑猥な話以外で和むものなんだ?」


桃馬「そ、そりゃあ、ありますよ。例えば……え〜っと。」


よくない事への指摘は、いくらでも思いつくものではあるが、いざ、"それより最適な案"を考えて見ると、中々思いつかないものである。


時奈「ほら、思いつかないだろ?」


桃馬「お、思いつきますよ、えっと、そ、そう女子トークとか?」


時奈「女子ト〜ク〜??あはは、それは親しい者同士のコミニュケーションだ。緊張している相手を和ませるものでは無いぞ?」


桃馬「うぐっ。」


完全に墓穴を掘った桃馬は、それ以上反論ができなかった。


時奈「ふふっ、他愛もないわね。さてと、桜華さん?緊張はほぐれたかしら?」


桜華「ふぇ、あ、あの、えっと……。(ま、まさか時奈さんが、こんなにも天真爛漫てんしんらんまんな人だったなんて……。)」


時奈「あはは、どうやら刺激が強過ぎた見たいだな♪」


桜華の脳内で、クールでカリスマ溢れる時奈のイメージが崩れる中、そこへようやく、憲明と小頼が部室へと入って来る。


小頼「お疲れ様です~、時奈部長~。」


憲明「はぁ、お疲れ様です。」


時奈「おお、ちょうど二人も来たか……、って、あれ?今日もジェルドはいないのか?」



憲明「は、はい、一応ジェルドからは、妹のエルゼちゃんが落ち着くまでの間、部活に行けない日が多くなるかもしれないと言っていました。」


時奈「っ、そ、そうか。今年の新入生の中に、ジェルドの妹がいたのか。」


小頼「ふふっ、とっても可愛い狼なんですよ♪毛並みはジェルドより"ふわふわ"してて、毎日"モフり"たいくらいの可愛さなんですよ♪」


時奈「っ、そんなに凄い逸材なのか…。ふむぅ、それなら異種交流会に来ればいいのにな……。」


小頼「あはは、私もそうした方が良いと思いますけど、現にジェルドは、エルゼちゃんの意見を尊重していますからね〜。」


時奈「……ふむぅ、それなら仕方ないか。(くっ、そんなにも可愛い狼なら、一度でいいから"モフっ"て見たいものだな……。)」


エルゼの入部に関して、やや望み薄と感じた時奈であったが、せめて一度だけでもエルゼを"モフり"たいと思っていた。


一方その頃、時奈の本性を一部知ってしまい、クールでカリスマ溢れるイメージが崩れた桜華は、あれからずっと時奈を見つめていた。


桜華「……。」


桃馬「お、桜華さん?大丈夫ですか?」


桜華「ふぇ?」


桃馬「や、やっぱり、時奈先輩の本性を見て幻滅しましたよね?」


桜華「っ、げ、幻滅なんてしていませんよ!?」


桃馬「っ、そ、そうなのですか?」


桜華「は、はい!あの裏表もない天真爛漫てんしんらんまんな立ち振る舞い……、ちょっと想像していたイメージと違って驚きましたが、私は素晴らしい先輩だと思いました!」


桃馬「お、おう……、そ、そうか。」


時奈に対して幻滅する所か、物凄い好感度を得ている桜華の様子に、桃馬は驚きを超えて唖然としていた。


するとそこへ、二人の話を耳にした時奈が、笑みを浮かべながら桜華に話し掛けた。


時奈「あはは、ありがとう桜華さん♪もし良かったら、このまま入部してもいいんだよ♪」


桜華「ふぇ、いいのですか!?」


桃馬「っ、と、時奈先輩!?どさくさに紛れて、誘導染みた勧誘をしないでくださいよ!?」


時奈「えっ、誘導染みた勧誘だなんて失礼だな〜?私は単に、入部をするかの有無を聞いているだけなのだが?」


桃馬「そ、それが誘導染みた勧誘だと何故分からないのですか……。」


桜華の入部に対して、慎重派の桃馬と強硬派の時奈が対峙する中、そこへ意を決した桜華が自分の思いを告ようとする。


桜華「桃馬さん、もうやめてください。私の決意は、もうまとまりましたから……。」


桃馬「っ、お、桜華さん……。」


桜華「ふぅ、私、この部活に決めました。今後ともよろしくお願いします!」


桃馬の引き止めも虚しく、桜華は他の部活を周る事なく、何とも特殊な部活に入ってしまった。


時奈「あぁ、こちらこそよろしく頼むよ♪さて、本日の部活開始時間まで、あと三十五分少々ある。時間が押している中で悪いが、今から桜華さんの歓迎会を開こうと思うがどうだろうか。」


小頼「おぉ〜、良いですね~♪では早速、歓迎会の準備でもしましょうか♪」


桃馬「はぁ、(不安しなかい……。)」


少し桜華に対して、過保護気味になっている桃馬は、内心極度の不安に囚われていた。


するとそこへ、妹のエルゼを心配し、陰ながら跡を付けていたジェルドが、ため息をつきながら部室に入って来た。


ジェルド「はぁ……。」


時奈「ん?おやおや、ジェルドじゃないか?今日は妹の所へ行っていたそうだが、一体どうしたのだ?」


ジェルド「……わふぅ。」


耳と尻尾を"へにゅっ"と垂れ下げ、露骨に元気がないジェルドの姿を見てしまった桃馬と憲明は、何となくジェルドの身に何が起きたのか、容易に察しがついた。


桃馬「はぁ、これは間違いなく、エルゼちゃんに怒られたな。」


憲明「まあ、そうだろうな。差し詰め、物陰から眼光鋭く見守っていたか、それとも無駄なお節介を焼き過ぎて怒られたか……。」


桃馬「こほん、酷いよお兄ちゃん!どうして私の友達を睨みつけたりするの!」


桃馬「ま、待ってくれエルゼ!?これはエルゼのためだと思ってやった事なんだ……。」


桃馬「ふん、もう知らない!お兄ちゃんなんて大っ嫌い!二度と私に近寄らないで!」


桃馬「エルゼ待ってくれ〜!」


憲明「ぷっ……ばかっ。」


桃馬「いたっ、おいおい、有り得るだろ?」


憲明「だとしても、ジェルドはともかく、エルゼちゃんを演じるなよ。」


何とも悪質な演技をする桃馬に対して、憲明がツッコンでいると、そこへ一部始終聞いていたジェルドが、顔を真っ赤にしながら突っ込んで来る。



ジェルド「んな訳あるか〜!」


桃馬「ぐふっ!?」


憲明「ごふっ!?」


ジェルドの渾身のラリアットを受けた桃馬と憲明は、その場で一回転しながら床に落ちた。


桜華「はわわ!?と、桃馬さん!?」


小頼「あちゃ〜、これは派手にやられたね〜」


時奈「全く、お前たちは、勝手にジェルドの心境を解釈するな。」


桃馬&憲明「は、はい……、すみません。」


時奈「それでジェルドよ?一体何があったのだ?」


ジェルド「うぅ、じ、実は、妹のエルゼとその友達を士道しどう部まで送り届けたのですが……。」


時奈「ほう、士道部か。また武術のオールマイティな部活へと行ったものだな。」


ジェルド「そ、それで……、送り届けた矢先……、エルゼとその友達が、"モフ"られてしまいまして……。」


時奈「ふむふむ、それで助けに行こうとしたら軽くいなされたと……。」


ジェルド「は、はい……、それにあんなに嬉しそうに"モフ"られているエルゼを見た瞬間……、何かこう……複雑な思いが込み上げて来まして……。」


時奈「なるほど、大切な妹を助けられなかった思いと、嬉しそうに"モフ"られている妹への複雑な思いに続いて、自分も"モフ"られたいと言う思いが重なったという事か……。」


桃馬「なんじゃそりゃ!?最初の思い意外、殆どジェラシーじゃねぇか!?」


憲明「あー、そう言えばここ最近、桃馬から満足に"モフ"られていないんじゃないか?」


桃馬「っ、おいおい、なんだよそれ……、間接的に俺が悪いみたいになってないか?」


ジェルド「……わふぅ……桃馬〜。」


ここへ来て変なスイッチを入れ始めたジェルドに対して、桃馬はあの日に受けた危機的な展開を思い出した。


桃馬「っ、そ、その手には乗らないからな?現に三ヶ月前の時も、似た様なやり方で犯されそうになったからな……。」


ジェルド「っ、わふぅ……せめて、撫でるくらいはいいだろ?」


桃馬「うーん、そうだな、両手に手錠を掛けない限りは信用出来ないな。」


ジェルド「……くっ。」


終わりの見えないBL展開に、とうとう見兼ねた時奈が、てのひらを二回叩きながら制止を促した。



時奈「はいはい、二人ともそこまでだよ?本来なら止めたくない所ではあるが、部活が始まる三十分以内に桜華さんの歓迎会を済ませるから、ジェルドも手伝ってもらうぞ。」


ジェルド「えっ、桜華の歓迎会…、ん?何だもう決まったのか?」


桃馬「あ、あぁ、時奈先輩の"謎カリスマ性"にやられて即決だよ。」


ジェルド「そ、そうか……。」


時奈「ふっ、"謎カリスマ性"だなんて、照れるではないか〜。」


桃馬「いやいや、照れる所ではないですよ。」


少々皮肉を込めたつもりで言った言葉であったが、逆にポジティブにとらわれてしまった挙句、桃馬は冷静なツッコミを入れてしまった。



それから十分後。(部活開始まで残り二十分。)


桜華のために設けられた歓迎会は、とどこおりなく進められたが、未だに数名の部員たちが、部室に来ていない状態であった。



憲明「うーん、この時間になっても"リフィル"が来ないって事は、部活の助っ人に行ってる可能性があるな。」


桃馬「助っ人ね〜。流石は、運動神経抜群のエルフだな。ちなみに今日は、どこに行ったか知らないのか?」


憲明「…うーん、たぶん弓道だと思うな。弓っぽい大きさの物を布に包んで肩に掛けていたからな。」


桃馬「弓道か。エルフの十八番だな。」


憲明「あぁ、特にリフィルが放つ姿は、本当に美しくて可愛いんだよな。」


桃馬「あー、はいはい、惚気はいいから早く迎えに行って来てもらえませんかね?」


憲明「っ、無茶を言うな。いくらお転婆なリフィルであっても、途中で約束事を放棄する様な子じゃないよ。」


時奈「あはは、憲明は相当リフィルの事を信頼している様だな。」


憲明「っ、リフィルの性格上、そうなると予想したまでです。」


時奈「そうかそうか〜♪うむうむ、それなら憲明よ。私の名前を使って良いから、リフィルを呼んで来てくれないか。」


憲明「時奈先輩の名前をですか?うーん、分かりました。」



生徒会長である新潟時奈の名前を使う事を許された憲明は、小さな可能性を感じながら、急いで部室を後にした。


そもそも、生徒会長の名前は、この学園内において強い力を持っており、人を呼び出すくらい造作もない事であった。


そのため、むやみやたらに、生徒会長の名前を使って権力を振るう行為は、横暴にして愚行である事から、生徒会を始め、許可なく生徒会長の名前を使った者は、厳しい罰が下されるため、注意が必要である。



憲明が部室を飛び出してから数分後。


突然、勢いよく部室の扉が開くなり、緑髪の短髪男子が勢いよく入り込んで来た。


?「はぁはぁ…。」


桃馬「っ!?な、何だ"京骨きょうこつ"か…、脅かしやがって、そんなに息を切らしてどうしたんだ?」


ジェルド「そう言えば、いつも一緒に居る"ルシア"はどうしたんだよ。」


京骨「はぁはぁ‥、今その"ルシア"に追われてるんだよ!?」


この"京骨"と呼ばれる緑髪の短髪男子は、"湯沢京骨ゆざわきょうこつ"と言い、二年四組に在籍し、また異種交流会の部員でもある。


更に京骨は、大妖怪"がしゃどくろ"の末裔にして、同じクラスにいるルシアと言うサキュバスを彼女にしているという命知らずである。


※お互い相思相愛の仲ではあるが、ルシアからの愛が重過ぎるあまり、毎日命懸けの人生を送っている。



桃馬「なるほど、ついに二股がバレて、吸い殺されそうなんだな!」


京骨「はぁ!?」


ジェルド「他のサキュバスに言い寄られていた所を見られて誤解されたとか?」


京骨「どっちも違う!今捕まったら……シンプルに吸い殺される。」


"吸い殺される"


この穏やかではないワードに嫌な予感を察した桃馬とジェルドは、表情を曇らせながら京骨に迫った。


桃馬「ば、ばか!?それなら何でここに来るんだよ!?」


ジェルド「お前と言う奴は、とうとう俺たちを盾にする気か!?」


京骨「そ、そんな事ができるなら、是非とも盾にしてやりたいね!ちょうど、桃馬の童貞卒業にも良い頃合だろうし、一瞬で天国を見せてもらえるよ!」


桃馬「っ、た、例え、あのルシアであっても、生身の人間にサキュバスは無理だって!?確実に寿命が縮まるからな。」


ジェルド「クンクン、ん?おい桃馬……。一応、逃げる準備をした方が良いかも。」


桃馬「そんな事は、最初から思って……ん?っ!!?」


ジェルドは自慢の嗅覚で察知し、人間である桃馬は、扉越しに映るシルエットで察知した。


更に京骨もまた、扉の外から感じる気配を察知し、急いで部室の奥へと逃げようとする。


しかし、時は既に遅く。閉めたばかりの扉が再び開くと、水色の短髪ボブヘアーに続いて、サキュバス特有のハート型の尻尾を生やした美女が現れた。


京骨「っ、る、ルシア!?」


ルシア「京骨~♪今日こそ妖気をもらうわよ~♪」


京骨「あ、いや、その〜。」


先程、京骨が言った通り、ルシアの狙いは京骨一点の様であった。


逃げ場もない空間に、万事休すの京骨であったが、そこへ運良く部室に居合わせた時奈によって仲裁される。


時奈「ルシア、京骨?イチャつくのもよいが、今日は新入部員がいるのだ。少し控えてくれないか。」


ルシア「あ、時奈先輩~♪でも、公開プレイも交流の一環と考えれば、有りよりの有りかと思いますがどうでしょう?」


時奈「ふむー、確かに、この場なら認めよう。」


桃馬&京骨&ジェルド「ダメに決まってるだろ!」


時奈の呆気ない姿勢に、三人男子たちは全力で反対を唱えた。


これに対してルシアは、かなり不満そうに答える。


ルシア「むう、だって京骨ったら、一昨日の夜から、明日、明日って、わざと約束を延ばそうとするんですよ?」


ルシアの言い分に、桃馬とジェルドは、ゴミを見る様な表情で京骨を睨んだ。


京骨「そ、そんな顔で見るなよ!?さ、サキュバスの妖気の採取は怖いんだぞ!?」


桃馬「可愛いルシアを彼女にしておきながら、約束を破るなんてな……。」


ジェルド「うんうん、正直言ってないな。もう、諦めてここで搾られていろ。別にエロい事をする訳じゃないだろ?」


京骨「っ、そ、それは……、ドレインタッチと口づけ程度だけど……。」


桃馬「ひゅー、あついね。」


ジェルド「恋人らしいな。」


京骨「代わって見るか?」


桃馬&ジェルド「いや、いいかな?」


京骨「お前らな……。」


無害と分かった桃馬とジェルドからの煽りに、京骨は苛立ちを隠せなかった。


そんな修羅場っぽい中で、部室の片隅にある給湯室から、ジュースとお菓子を持った小頼が出て来た。



小頼「あら?ルシアちゃんたちも着いたみたいだね♪」


ルシア「うぅ、ふえーん、小頼ちゃ~ん!京骨が約束を破るんだよ~。」


小頼「ふぇ、約束って……、あぁ〜、なるほどね〜。京骨ったら、また逃げ出したのね〜?」


ルシア「うん!しかも一昨日からだよ〜!」


小頼「っ、それは酷いわね……。こら、京骨?ルシアちゃんを恋人にするなら、しっかり覚悟を決めなさいよね?」


京骨「うぐっ、て、手加減さえしてくれれば、いつでも吸わせてやるよ……って、うわっ!?。」


照れ隠しのためか、京骨が腕を組みながら目を閉じると、隙を見たルシアが勢いよく京骨に飛び掛った。


ルシア「それじゃあ、いただきまーす!んちゅっ」


京骨「んんっ!?」


完全に京骨を押さえ込んだルシアは、早速京骨の唇を奪うなり、容赦なく妖気を吸い取り始める。


その際に京骨は、じたばたと抵抗の意志を見せるも、次第に白目を向きながら大人しくなって行った。


すなわち、妖気採取終了のお知らせである。


公開プレイに関して反対していた桃馬とジェルドであったが、自業自得とも言える京骨の情けない姿を目の当たりにし、最後まで呆れた表情をしていた。



その一方で、主役の席にポツンと座っている桜華はと言うと、先程から突然過ぎる出来事について行けずに、ルシアと京骨の淫靡いんびな光景を恥ずかしそうに見つめていた。


桜華「と、時奈さん!?あ、あれは、止めなくてもいいのですか!?」


時奈「うーん、まあ、約束を破った末路だからな。取り敢えず、このままにしておこうか。」


桃馬「うんうん、二人が学園内でキスしてるのは、日課みたいなものですからね。」


ジェルド「そうそう、酷い時は廊下の真ん中で堂々とイチャつくからな。しかも、大抵仕掛けて来るのはルシアだけどな。」


桜華「な、仲が良いのですね?」


桃馬「まあ、あの二人の仲良さは、正直に言って学園随一だな。あっ、そうだ、ついでに紹介でもしておこうか。」


桜華「っ、い、今ですか!?」


桃馬「えーっも、あの緑髪の男子が、大妖怪"がしゃどくろ"の末裔にして、二年四組に在籍している"湯沢京骨ゆざわきょうこつ"。そしてもう一人、京骨を押し倒している水色髪の女子が、同じ二年四組に在籍しているサキュバスの"ルシア"だ。」


桜華「が、がしゃどくろ!?ま、まさか、そんな大妖怪までもられるのですか!?」


桃馬「あはは、まあこのご時世、大妖怪の末裔が居ても不思議じゃないと思うけどな〜。」


桜華「た、確かにそうですが、大物過ぎて…あはは。」


時奈「流石の桜華さんでも、大妖怪の名前を聞くと驚かれるのですね?」


桜華「も、もちろんですよ。大妖怪の血筋は滅多に聞きませんからね。」


時奈「ふふっ、確かにそうだね♪さてと、残るは二人だね。桃馬、ジェルド?悪いけど"ギール"を呼んで来てもらえるかしら?」


ジェルド「っ、わ、分かりました♪」


桃馬「えっ!?お、俺も行くのですか!?」


ジェルド「なんだ桃馬、嫌なのか?」


桃馬「あ、当たり前だ!ジェルドと一緒に行動したら、本当に何されるか分からないからな!」


ジェルド「っ、し、心外だな〜。」


正直、桃馬が嫌がるのも無理もない。


何せ過去の例も踏まえても、ジェルドと二人っきりになったあかつきには、未遂も含めて七割近く襲われているのである。



小頼「もう〜、桃馬は警戒心が強いな〜。」


桃馬「いやいや、今までの事を思い出して見ろよ!?隙を見ては抱きついて来るし、しかも、イケメンの顔に見合わず下半身を押し当てて来るんだぞ!?」


小頼「ふふっ、そう言いながら本当は嬉しい癖に〜♪」


桃馬「っ、お前な……。」


時奈「はいはい、そこまでだよ。桃馬も意地を張っていないで、早くギールを連れて来るんだ。」


桃馬「……は、はい。」


ジェルド「ふふぅ〜ん♪あっ、そうだ、一緒に行動するなら、久々にこれを付けてから探そうぜ〜♪」


時奈からの指示に渋々従う事になった桃馬に対して、露骨に喜び始めるジェルドは、早速制服の内ポケットから自前の首輪とリードを取り出した。


桃馬「おい、待てジェルド?その首輪とリードは何だ?」


ジェルド「えっ、何でって、久々の二人行動なんだから、たまには良いかなって。」


桃馬「っ、良い訳ないだろ!?そもそも、その姿で着ける気か!?」


ジェルド「あぁ、そうだけど?」


桃馬「おいおい、ふざけるなよ……。イケメンケモ耳男子にリード付きの首輪を着けて学園内を歩き回って見ろ!確実に誤解されるだろうが!」


ジェルド「っ、そ、そう怒るなよ……。はぁ、分かったよ……じゃあ狼の姿で我慢してやるよ。」


桃馬「はぁ……、まあ、それなら良いか…って良くない!?先生に見られたら怒られるだろ!?」


時奈「はぁ、全くお前たちは……。」


口を開けば終わりの見えない無限ループに突入してしまう桃馬とジェルドに対して、呆れ始めた時奈は、ため息をつきながら最終手段に打って出る。


時奈「桃馬、ジェルド?この際、二人行動は取らなくてもいいから、早くギールを連れて来なさい。さもないと、ルシアのドレインタッチが待っているぞ?」


桃馬「っ!?」


ジェルド「わふっ!?」


何とも末恐ろしい脅しに、身の危険を感じた桃馬とジェルドは、一斉に時奈の方へと視線を向けた。


時奈「さあ、ルシアに搾られたくなければ、早く行きなさい。」


ジェルド&桃馬「は、はい!」


最後の通告とも言える時奈の指示に、ジェルドと桃馬は一斉に部室を飛び出した。



何とも慌ただしい光景を目の当たりにした桜華は、一つの答えに辿たどり着くなり時奈に尋ねた。


桜華「あ、あの時奈さん?失礼かと思うのですが、ここに居られる方々は、みんな"変わり者"なのでしょうか?」


時奈「あはは、確かにそうかもしれないな。現に桃馬たちは、個性が強い上に普段から"自分自身"をさらけ出しているからな。」


桜華「"自分自身"をさらけ出す……ですか。」


時奈「ふふっ、これは私なりの考えだが、本来あるべき自分を押し殺してまで生きて行く人生は、本当に悲しくて愚かな事だと思う。」


時奈「それに一々、まわりの目を気にして偽りの自分を作る事は、本当の自分を見失うどころか、大切な"何か"を見落としてしまう原因にも繋がるし、人生の分岐点で誤った道に進んでしまう事にもなる。」


時奈「だからこそ、この学園で過ごす全生徒たちには、"本当の自分"を探し出し、そして大切にしてほしいと願っている。」


時奈「とは言っても、常識と節度をわきまえた上での話だけどね。」



何とも興味深い時奈の持論に、桜華は考えた。


"本当の自分"とは、きっと桃馬に対する恋愛を学ぶための大切なキーワードであると感じ始めた。




それから十分後。(部活開始まで、残り七分。)


部活開始時間が刻刻こくこくと迫る中、先に憲明が、金髪のエルフ美女を連れて部室へ戻って来た。



この金髪エルフ美女の名前は、"リフィル・ナーシェル"と言い、二年二組に在籍し、運動神経抜群の明るいムードメーカーである。


※ちなみに憲明の彼女である。


腰まで伸びた"サラサラ"な金髪をなびかせ、更には、エルフ特有の美形な顔立ちに続いて、スタイルも抜群……。


そして、思わず惹き込まれてしまいそうな、気品溢れるエメラルド色の瞳……。


もはや、高貴な"お姫様"レベルの美しさに、思わず桜華はつい見蕩れてしまった。


だがしかし、この部活に所属している部員は、みんな"変わり者"のため……、すぐに綺麗なイメージが崩れてしまう。


リフィル「小頼ちゃ~ん♪お待たせ~♪」


小頼「もう〜、遅いよリフィルちゃ〜ん♪また助っ人頼まれたの??」


リフィル「まぁね♪今日は弓道部に捕まっちゃってね♪」


見かけによらず高貴なエルフ様は、少しギャル要素が入っていました。


三人が楽しく話している中、時奈はリフィルを連れて来た憲明の姿を見て何かを察した。


時奈「すまない憲明、流石に私の名前を使っても厳しかったか?」


憲明「……はい、三十対一のデスマッチに発展してしまいました。」


時奈「ふむぅ、私の力も衰えたかな。」


憲明「い、いえ、そんな事はないと思いますが……、ただ、リフィルを迎えに行ったのが、俺だったからダメだったみたいで……。」


時奈「えっ、そうなのか?」


憲明「はい……、彼氏の横暴とか、生徒会長の名前を使ってまで奪うなんて恥を知れとか、独占反対とか……、散々な言われ様でした。」


時奈「ま、まさかの逆効果であったか、うーん、リフィルの人気が重なって上手くいかなかったか。」


憲明「はい……、俺以外なら何とかなったかもしれませんが、実際は火に油でしたよ。」


時奈「っ、す、すまない憲明。私の配慮不足のせいで、憲明を傷つけてしまった。」


憲明「い、いえ、時奈先輩が謝る事は無いですよ?一応、慣れた展開なので……、それより、桃馬とジェルドはどうしたのですか?」


時奈「あぁ、二人なら"ギール"を探し出てもらっているよ?」


憲明「そうですか。うーん、"ギール'が遅れるなんて珍しいな……。」




一方その頃。


時奈に脅されながら急いでギールの捜索に乗り出した桃馬とジェルドはと言うと……。


部室へ出て早々に、何者かの襲撃に合い……。


人気の無い多目的教室に連れ込まれていた。

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