第24話 葵葉の愛、葵葉の敵

 あの日以降、私の周りにあの集団が群がることはなくなった。


 だからといって私が周りからちやほやされるようなことはなく、前と同じ状況に戻っただけだった。

 でも、今の私には兄さんがいる。

 今の私にとっては兄さんが全てであり、周りのことなんてどうでもいい。


 もしまた虐められたとしても、兄さんのためを思えばなんだって乗り切れる。


 はぁ〜…兄さん……好き♥



「あの…立川さん…少しいい?」


 ???


 私の頭の中が兄さん一色に染まっている最高の時間に水を差すように話しかけてきたのは、前に私を虐めてきたグループの子だ。名前は覚えていないけれど。


「なんですか…手短にお願いします」


 不愉快すぎて怒りを表に出してしまいそうになったがなんとか押さえ込み、要件を聞いた。

 さっさとこのゴミとの会話を終わらせて、兄さんの幸せな妄想をしたい♥


「あの…ね…立川さんのお兄さんについてなんだけど…」




は?



「今まで立川さんにしてたこと、本当に悪かったと思ってる…でもあの日ね、立川さんのお兄さんに本気で怒られて、私すっごくときめいちゃったんだ!」




こいつは…………何を言ってるんだ?



やつの頬は少し赤くなっていて、見るからに兄さんに惚れている。



意味がわからないなぜこの女は私の兄さんに恋しているんだ?




なんで………なんでなんでなんでなんで!!!



「すみません…私があなたと話すことは何もありません。失礼します…」


私は今すぐにこの場から立ち去りたいと思って教室から逃げ出そうとした。


その時


「お前…まだ葵葉に付きまとってんのか?」


教室の外には兄さんが私を迎えに来てくれた。


助けに来てくれた♥♥


好き好き好き好き好き大好き♥♥♥


「いや…その違うんです…今日は立川さんに用事があって…」


「二度と葵葉に話しかけるんじゃねえぞ!次に関わったら容赦しないからなぁ!」


「ひぃ〜すみません!」


「兄さん……わざわざ来てくれたんですね…」


「当たり前だろ。あんなことがあって、俺すげー心配してるんだからな!葵葉のこと助けてやれて本当によかったよ」


あぁ……好き♥兄さん♥


「ありがとう…ございます……」


流石にこの気持ちをそのまま表に出すことはできないけど、紛れもなく私は兄さんに恋をした。こんなに私のことを思ってくれる人なんて他にいない。いつか私と…結婚♥




「あら?お兄様?どうして葵葉の教室にいらっしゃるんですか♪」


「ああ愛華ちょうど良かった。一緒に帰るか?」


たまたま教室に愛華が来た。

たまたま私と兄さんとの空間を邪魔された。


あれ?私今…愛華のこと邪魔だって思った?


「ふふっ♪もちろんです。わたくしも一緒に帰りたいですわ♪蘭の教室も覗いて見ましょう♪」


この時からかもしれないけれど、私は妹に…特に愛華には敵対心を抱くようになっていたのかもしれません。


でも仕方ないですよね。



私の…兄さんなんですから♥

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