第20話 私って…なに…

 今日は…来ないのかな。

 昨日蘭とあの人が話しているのを偶然聞いてしまった私は、今日あの人が来ないことを事前に知っていた。


 普段ならめんどくさくて、迷惑なのですが、こうも毎日来られていたら、なんとなく習慣づいていた気がしてきます。

 まあそれはそれとして、もう帰りますかね。


 そう思っていた矢先、


「こんにちは立川さん。相変わらず暗いのよねあんた。見たくないから、学校に来ないで欲しいな〜……なんて、冗談冗談♪

 あれ?今日はいつものお兄ちゃんは来ないのかしら?」


 私が1人でいると、普段なら来ないはずの女子集団が私に話しかけてくる。

 もちろん好意的な意味ではなく、私のことが気に食わない子達が、リーダーの佐藤さんと突っかかってきているだけ。

 前に佐藤さんに話しかけられた時に何も答えなかったら、めんどくさいことに標的にされてしまった。


「私この前見たよ!こいつがそのお兄ちゃんにめっちゃ悪口言ってるところ♪ほんと面白かった〜」


「あ!もしかして、それでお兄ちゃんに愛想つかれちゃったのかしら?

 あなたなら当然かもね〜♪」


「「「きゃははは!!!」」」


 それに続いて、周りにいる奴らが笑い始める。


 最近はあの人が来ていたから、容易に話しかけられなかったけど、今まであんまり言えてなかった分かなりめんどくさい。


 ただこんなの、私からすればどうでもよかった。教室に居ずらくはあるけど、特に何も生活に変化はない……はず。


 あの人が私のことを嫌いになることはない…はずだ…

 でも、本当にそうなの…

 むしろ私が妹だから、あの人は私を見てくれるし、真面目に私のことを考えてくれる。

 でももし、私があの人の妹じゃなかったら…

 私は…


 私はもう…こんなのには慣れっこなんだ。

 そう割り切るしかない。


「ごめんなさい佐藤さん。私もう帰りますから」


「待ちなさいよ。あんた、本当に気に食わないやつよね。

 ねぇ、明日、体育館裏来なさいよ。

 そうしたら、もうやめてあげてもいいわ」


「そんなの…行くわけないですよ。」


「うわぁ、お前、私のこと待たせたらどうなるかわかってるの?」


「…分かりました。ではさようなら」


 そう言って私は教室から出ていった。後から笑い声が聞こえてきたが、私は気にしなかった。

 …分かってはいたが、行かないといけないことは確定してしまった。

 本当にめんどくさい…


 はぁ…でも、これが私だ。

 いつも私は独りで、こうしていじめられる。


 でも、それでも私のことを思ってくれるあの人は…一体なんなんだろ?


 


 あれ?




 私……泣いてるの?


 なんで?



ずっと、私は独りだった。




独り…だ……っ……





(葵葉)




ふと、思い浮かんだのは…あの人じゃない…





「おかぁ……さん………」

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