動きだす。
清光は、弟の樹の顔がこわばっているように見えた。姉の告白に、何とも言えないようで少し沈黙が訪れた。
「なにそれ」
弟が答えるが、その声は低く困惑が色濃くなっている気がする。清光は、何もしないし、何もできない。姉弟が、本音を言い合ったところで、分かち合えることはないのだろう。でも、お互いの思いを話さないと何も始まらないのだろう。
「どうも、いらっしゃい。皆さん、これでも食べてください」
妻の馨が、おにぎりと湯吞にお茶を入れて持ってきたくれた。いただきますとおにぎりを姉が頬張った。美味しいとポツリと言った。
「春香は、それで許されると思ったの?」
おにぎりを頬張った姉と違って、弟はおにぎりを手を伸ばそうとはしていなかった。
「おにぎり食べたら」
「まあ」
姉に言われて、弟もおにぎりを一口食べた。
「美織は、私たち姉弟のことを調べて、亨に近づいていたのよ」
「そんなの、どうでもいい」
口の中、いっぱいにおにぎりを口にして、姉の話に耳と口を傾けている。
「樹は、好きだんだね。美織のこと」
「兄貴が楽しそうだたから」
「亨は美織の目的を知っていながら、付き合って死を選んだのよ。どこかで、罪悪感を共有していたのでしょう」
姉弟は互いに話を合えないことで、息が詰まっていたのだろう。少し姉の本音を聞けたことで、弟の顔の緊張が取れた来たする。もしかしたら、妻のおにぎりが美味しかったおかげかもしれない。私たちは人間は不平と共に生きるしかないのだろう。それでも前に進むように行動していくのだろう。
時が思考を停止させ、また動き出す。 一色 サラ @Saku89make
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