エピローグ

恋はめんどくさい

 自分の中に恋心というものを認めて、受け止めて、受け入れて――。


 俺は今まで以上におもう。

 恋愛はめんどくさい――と。


 このもどかしくてどうしようもない想いは自分ですらよく分からなくて――この想いに振り回されるであろう自分がこの先どうなってしまうのか、まるで想像できない。


 今までは、周囲で恋愛に振り回されている奴らを見る度に、俺は心の中でそれを苦手であるとして、めんどくさいから関わるべきでないと決めつけて、出来る限り遠ざけていた。


 かつての初恋を恋夢にフラれてしまった俺は、また自分が恋をしてしまうことを異様なまでに恐れていたからだ。


 でも結局、俺はその想いを吹っ切ることができていなかったのだろう。


 俺は未だに、あの自己中極まりない最悪で最高にめんどくさいヒロインに恋をしてしまっていて、どうしようもなく落ちてしまっていて、どうにもそこから抜け出すことが出来そうにない。


 我ながら本当に……、――本当に、難儀だと思う。


 しかしながら、一度受け入れてさえしまえば、彼女と共に過ごす日々を、彼女に振り回される面倒事を、彼女の側にいる自分を、それほど悪く思えないのも事実なのだ。


 いや、もっとハッキリ言ってしまえば、それを幸せに思う自分がいると今更認めないわけにはいかない。


 ――だって、恋をしてしまっている訳だし。


 理屈じゃないのだ。そう、恋は理屈じゃない。


 自分で言ってて気恥ずかしさがヤバいし我ながらかなりキモいしイタイと思うしこの俺がまさか――――と、思わずにはいられないけれど、やっぱり仕方ない。

 もうこれはそういうものだと諦めるしかない。


 ソレを認めない限り――きっと俺は前に進むことができないから。

 ハッキリ言って、あの世界一めんどくさい俺のヒロインを俺に惚れさせて、俺こそが運命の相手なのだと突き付け、受け入れさせる自信はあまりないのだが――、


 きっと未だに俺や彼女の周囲には禍根や遺恨が溢れていて――。きっとこの先、俺が茜咲恋夢に恋をしてしまっている以上、あり得ないレベルでめんどくさい色恋事に巻き込まれることは避けられないだろうが――――


 ――好きな子に一生に一度のお願いをされて、それを断れるわけがないのだ。


 だから俺は何としてでも、茜咲恋夢という世界一のヒロインを恋に落とすしかない。

 それ以外の道は、あり得ない。


 もうこうなった以上、俺はやれるだけやってみるしかないし、この世に絶対が絶対に無い以上は――願うしかないのだ。


 ――絶対に、と。


 やれやれ全く、恋ってのはどこまでもいってもどうしようもなくめんどくさい。


 けれどもきっと、ソレは時として、悲しみや苦しみや不幸すら生んでしまう死ぬほど面倒で厄介なものではあるのだけど――


 素敵なものでもあるのかもしれない――と。



 今のところは、そうおもうことにした。



了    

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ヒロインが世界一めんどくさいラブコメ 青井かいか @aoshitake

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