Chapter 4-8
「う、うしゃみしぇんぱい!?」
「噛んだ」
「うん、噛んだね」
「噛んだな」
「……噛んだ」
総ツッコミを受ける。だ、だってびっくりしたんだもん! 仕方ないじゃないか!
という訳で、改めて天露屋の制服を着た宇佐美先輩を見やる。割烹着風のエプロンドレス、と言った風体の制服は、日本人形を彷彿とさせる宇佐美先輩によく似合っている。
「……じっと見られてると恥ずかしい」
「っと、し、失礼しました。先輩はここでアルバイトを?」
「……そう。一年生の時からやってる」
「という話を昼にもしていたのだが……。さては君、聞いていなかったな?」
「む、む! ゆ、湯本君と話していたからね!」
じろりと非難するような三峰の声に、僕はついムキになって返してしまう。いかんいかん、先輩がいる手前、みっともない姿は見せられない。
え、もう見せまくっているって? きっと気のせいだよ。うん、多分、ごめんなさい。
「……とにかく、はい。『でらっくす小倉くりーむパフェ』になります。ご注文は以上でお揃いでしょうか?」
「大丈夫っす」
「……それでは、ごゆっくりどうぞ」
と、宇佐美先輩は伝票を置いて仕事へ戻って行った。
「先輩、かわいかったね。いいなぁ、ここの制服、一度でいいから着てみたいんだよね」
「天露屋の制服着た一之瀬さん……」
呟くような一之瀬君の言葉に、歩がいち早く反応していた。
「でも私じゃ似合わないよね」と自嘲気味に笑う一之瀬君に、
「いや、行けるよきっと」
ごく自然に言ってのけた。普段は自分の下心が入るからテンパってるくせに、一之瀬君の気持ちだけを考えて言うとこうなるのだから、赤西歩という男は末恐ろしい。しかもそれで自分の好感度が上がった事に、全く気付いていない所がミソだ。
ほんのり頬を赤らめた一之瀬君と歩が制服談義に花を咲かせている横で、三峰がスマホを取り出して訊ねて来る。
「そう言えば、宇佐美先輩から君のあどれすを教えて欲しいと頼まれていたんだ。一応君の許可を取ってからにしようと思っていたのだが、構わないな?」
なん、だと……!?
このメンバー以外の女生徒とのアドレス交換……、人生初である。
僕は「お願いします」と、頭をテーブルにぶつけそうな勢いで下げた。
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