Chapter 4-7

「とまあ、そんな感じだった訳だよ」

「ふーん。シンとか湯本とか、やっぱ顔の良い奴はそれだけで得してるよなー」

「……君にそれを言われるのは物凄くムカつくんだけどね」

「へ? なんで?」


 本当、憎たらしいなこの天然鈍感朴念仁は。

 放課後、僕と歩、三峰と一之瀬君の四人は、帰る道すがら天露屋に寄り道していた。僕が注文したのはもちろん、『でらっくす小倉くりーむパフェ』である。


 注文の品を待ちながら、僕らは昼休みの途中で別れてからのあらましをそれぞれ報告し合っていた。最終的に歩たちは鬼ごっこしていたらしい。元気だなぁ。


「真綾たちがいなくなっちゃったから、探すのも兼ねてだけど」

「ああ、メールなりなんなりしておけばよかったな。済まん」


 どうやらさり気なく僕らを探す口実も兼ねて、歩と一之瀬君は二人で鬼ごっこを提案したらしい。二人共逃げ足は超速いので、終わるまで逃げ切れたのだそうだ。


 鬼ごっこか。高校生にもなって、とは思うけど、やはりそういう童心に帰れそうな遊びは楽しそうだ。まあ、僕のように目立つ人間は四六時中誰かに追い回されている訳だけど。

 ……心の声には誰もツッコんでくれないから少し寂しい。


 最も、三峰が参加したらかなり悲惨な事になりそうだけど。逃げ切れないし、掴まんないもん、この人。

 中学の時にやった鬼ごっこを思い出す。三峰を入れるともう、彼女の独壇場だった。鬼になれば誰もが瞬殺だったし、逃げる側になったらどっかの劣性遺伝子みたいにそもそも見つからない。なんなんだあのステルス能力。


 と、そんな話をしている間に注文の品が届く。

 歩はあれからハマったのか、『抹茶ぜんざい』。一之瀬君は『抹茶パフェ』。三峰はこれまたいつも通りの『特製あんみつ』だ。

 そして最後に、


「……お待たせしました。『でらっくす小倉くりーむパフェ』です」

「ありがとうございま……すっ!?」


 お盆を持って来てくれた店員さんの顔を見て思わず声が詰まった。

 天露屋の制服に身を包んだ彼女は、宇佐美先輩だった。

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