Chapter4 心配するな、ただのカロリー不足だ
Chapter 4-1
「心配するな。ただのカロリー不足だ」
「そ、それだけなんですかね、アレ」
三峰と笠原君の会話がどこか遠く聞こえる。
昼休み、いつも通り僕らは中庭で昼食と摂っていたのだけれど、正直僕は別の物でお腹が一杯で、弁当を開ける気にならなかった。
昨日の事を思い出すだけで、目頭が熱くなって口許がにやけてしまう。なにこれ、今の僕、すっごく気持ち悪い。
「……シン、ちょっと気持ち悪いぞ」
ちょっとどころではない、という顔で歩がツッコんでくる。
分かってるよ、歩。分かってるけど止まらないんだよ、これが。
「うわぁ……。本当にほっといて大丈夫なんですか?」
「手の打ちようがないからな。目に毒ならいっそ隔離しておくか」
「真綾、それはそれで……」
引いてる笠原君と、冷静に物を言う三峰、三峰の言葉に苦笑する一之瀬君。聞いてる本人からすればツッコミ所満載なのだけれど、今は何も言う気になれない。
「……いた」
と、そんな僕たちの前に一人の女生徒が現れる。
昨日、出会ったばかりの料理研部長、宇佐美謡先輩だ。
「宇佐美先輩、こんにち――」
「ど、どうしたんですか先輩!?」
歩が挨拶しようとしていたが、僕は驚きからそれを遮る勢いで声を上げてしまった。
なんだか今日、まともに喋ったのはこれが初めてな気がする。
宇佐美先輩はあたふたする僕を見ても変わらぬ調子で口を開く。
「……あなたの教室に行ったら、ここにいるって言われたから」
「そ、そうなんですか」
「……隣、いい?」
「え、ええ! 勿論! 僕なんかの隣でよければ……」
「……構わない」
宇佐美先輩は僕の隣に腰を降ろす。
ちなみにここで、「冴木先輩が「僕なんか」って言った……!!」と笠原君が衝撃を受けていたが、ツッコんでいる余裕は今の僕にはない。
「……お昼、まだ食べてない?」
「え、ええ。まあ……」
「……よかった。一緒に食べられる」
「は、はい!」
相変わらず全く食べれる気はしないけれど、無理矢理突っ込んでやるさ! と、僕は勢い込んで弁当の包みを開く。
これは僕にもようやく春って奴が来たって事でいいんですかね?
いいんですよね!?
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