Chapter 3-5

「湯本、それだけは止めとけ! 別の勝負にしよう! な!」

「むしろ君の勝ちで構わん。うん、そうしよう。大体この馬鹿と大真面目に勝負する意味はないと思うぞ、うん」


 突然、歩と三峰は必死な形相で湯本君を説得しにかかった。


「え、ど、どうしちゃったんですか、歩先輩と三峰先輩。伊月先輩、分かります?」

「う、うーん……。なんだろう、料理がそんなに駄目だったのかなぁ」


 二人の様子に、笠原君と一之瀬君も困惑した表情を見せる。という事は、あの二人だけがこの勝負に問題があると思っている訳だ。


 でも、なんだろう。僕はさっぱり負ける気がしないんだけどなぁ。


「赤西氏、三峰嬢、落ち着いてください! 一体どういう……まさか……!」


 同じく、殆ど詰め寄られる勢いで歩と三峰に迫られている湯本君も、困惑し切りで二人を宥める。

 だが途中で二人が慌てる理由に思い至ったのか、ハッと目を見開く。


「分かったみたいだな。多分、お前の思ってる通りで合ってるぜ」

「なるほど……。確かに、それでは勝負になりませんね」


 勝負にならないだって? 聞き捨てならないなぁ、それは。


「おいおい、三人ともどうしたんだい? 何か問題があるなら言ってくれないと分からないよ?」


 僕はまだ得心いっていない一之瀬君と笠原君と目を合わせ、首を傾げ合う。

 そんな三人の様子を見て取った歩は、僕の元へ歩み寄って肩を叩いて来る。


「シン、取り敢えず放課後、皆で料理研に見学に行くぞ」

「え? あ、はい」


 えらく真面目な顔で言われたので、何故かと問う前に頷いてしまう僕であった。

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