84 ナントカ現象 – ホノボノ -

 




あいつはいつも変な事を言っている。


「やろめって言われると

なんだかやりたくなることがあるだろ、

あれはカリギュラ現象と言うんだ。」

「鶴の恩返しで機織りを見るなと言われたのに

見ちゃうコト?」

「そうだ。」


私はため息をつく。


「見なきゃいいのに。

男ってそういうとこあるよね。」

「いやそうじゃなくて……、」


あいつはじろりと私を見る。


「水を凍らせるのもな、

ただの水よりお湯の方が早く凍る。

ムペンバ効果と言うんだ。」


だから何と言ったらむっとした顔をした。


「熱いまま冷凍庫に入れたら周りのものが溶けるじゃん。

冷蔵庫も壊れるかもよ。」

「そうだけどさ、でもそうなんだよ。」


と少し怒った。


「牛乳を温めると膜が出来る事をなんというか知ってるか?

ラムスデン現象だ。湯葉も一緒だ。」

「あー、牛乳の膜、私嫌い。まずいもん。」

「いやいや、そうじゃなくて、」


とあいつは拗ねる。


「でも、湯葉は好き。

ポン酢で食べると美味しいよね。」


あいつはちらと私を見た。


「前に私が好きだからって店を調べて

連れて行ってくれたじゃん。

また行きたいな。」


あいつは少し鼻で笑う。


「仕方ないな、

そんなに行きたいならまた連れて行ってやる。」

「わーい、ありがとう!」


と私はあいつのほほにキスをした。

さっきまで拗ねていたのに

あいつの顔がデレる。


これは何という現象なのかな。


こればかりはあいつも分からないだろう。




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