昨日見た夢・つれづれ短編集

ましさかはぶ子

76 走馬灯 - SF -




「何だか懐かしい番組を放送してる。」


私はふとつけたテレビを見た。


そこには子どもが小さな頃によく見た教育番組をやっていた。

それは子どもがとても好きでかかさず視聴していたものだ。

当然録画もして何度も見ている。

私も時々は見ていたがそのうち飽きてしまって

ほとんど見ていなかった。


何十年ぶりだろうか。

私はしばらくそれを見ていた。

そして子育てをしていた頃をありありと思い出した。


子育ては大変だ。

辛く苦しい事も多かった。

だが番組を見ていると子どもが楽しそうにしていた様子や、

表情を思い出した。


「そんな事もあったなあ。」


過ぎてしまえば懐かしい。

そして私はゲーム機を持った。


ゲームもアーカイブで昔のゲームが遊べる。

何となく私はそれを始めた。

それを一生懸命遊んでいた頃を思い出す。


「最近は何となく昔のものがそのまま

見られたり遊べたりするなあ。」


私は呟いた。

多分そう思っている人は多いだろう。

それらに触れるとかつて過ごした日々が浮かんで来る。

色々あったが今では良き思い出だ。


「にしても今年はいつまでも暑い。」


私はクーラーの効いた部屋から外を見た。

いつもなら既に秋だ。

だがクーラーをつけなければ熱中症になりかねない気温だ。


「恐竜のいた頃の地球も結構暑かったらしいけど。」


地球もかつてを思い出しているのかもしれない。

最近の人々の様に昔を懐かしく思っているのだろうか。




人は死ぬ前に自分の人生を振り返るらしい。

いわゆる走馬灯だ。


それは死ぬかもと言う危機に直面したその人が、

経験からそれをやり過ごす方法を探しているという説がある。

生き残るために大慌ての状態だ。


最近はテレビなどでは昔の放送をしている。

娯楽でも昔のものが復活していて、

エモいと古いものがもてはやされている。


昔を懐かしんでいる人がとても沢山いる。

そして地球の平均気温は今までの記録を越した。

地球はどんどん暑くなっていく。

大昔のように。


地球は何かを思い出そうとしているのか。

そして私達は。


懐かしさの向こうにあるものを

私達は見逃しているのかもしれない。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る