66 カチカチ山



ある所にタヌキが住んでいた。


ものすごーく太っていてすごい。


その近所にはおじいさんとおばあさんがいた。

一緒にウサギと住んでいる。


ウサギはニートだ。

毎日ネットしかしていない。

それでもおじいさんとおばあさんは人が良くて

ウサギだから良いかと一緒に住んでいた。


だがウサギはわがままでエサに文句を言ったり、

二人を蹴ったりする。

意外とウサギに蹴られると痛いが、

ウサギだから良いかと思っていた。


ある時おじいさんとおばあさんはタヌキと知り合う。


ネットでものすごーいタヌキがいると噂になり、

調べてみると家の近所だったので見に行った。


タヌキの家の近くに行くとしくしく泣く声がするので、

おじいさんとおばあさんが家を覗くとタヌキが泣いていた。


「おやおや、どうしたんだい。」


タヌキは顔を上げた。


「おじいさん、おばあさん、僕はこんな姿が悲しいのです。」

「この姿とは太っている事かね?」


タヌキは頷く。


「好きで太ったのではありません。

水を飲んでも太るのです。」

「いやいや、それはただの思い違いだが、

確かにタヌキどんは太っているな。」

「そして僕を見に沢山の人が来るのが

とても恥ずかしいのです。」


とタヌキはノートパソコンを見せた。


そこにはタヌキに関して読むに堪えない、

見た目などを揶揄する悪口が山のように書いてあった。


おじいさんとおばあさんは

タヌキの泣き顔を見て罪悪感を抱いた。

自分達もそれを読んで好奇心でここに来たのだ。

二人は昔はバリバリの2〇ャネラーだった。

近場と言う事で血が騒いだのだ。

今はすっかり枯れたがそれでも色々なサイトを見ていた。


「特にこのYAMAと言うハンドルネームの人が

延々と悪口を書いていますね。」

「誰でしょうかね。」


〇ャネラーでありながらおじいさんとおばあさんは

良い人なので、

と言うかほとんどの人は良い人なので、

タヌキを哀れに思って助ける事にした。


食事療法と運動、色々と世話を始めた。

やっぱりタヌキは結構食べていた。

水だけで太る人もいるが大抵は食べ過ぎ。ダヨナー、スマン。


そしてその様子をサイトを立ち上げて人に知らしめることにした。

タヌキにやる気を持たせるのとネット社会だから。

ジジババでも意外とネットに詳しいのよ。

炎上してもジジババだから失うものは殆ど無いし、

未来もあんまりないし。


「食べたいですぅ!」

「駄目だよ、我慢しなさい。」


タヌキは苦しくて泣いたがおじいさんとおばあさんは優しく、

それでも厳しくタヌキを諭した。

最初は動物を使って目立ちたいのかと非難も浴びたが、

真摯な態度で対処するうちに応援する人も出て来た。


しばらくしておじいさんとおばあさんが家に帰ると、

いきなりウサギが二人を蹴った。


「おい、じじいとばばあ、俺の飯は!」

「おやおや、怒っているね。」

「うるせえ、当たり前だろ、早く用意しろ、ばばあ。」


おばあさんはやれやれと言った様子で

冷蔵庫から野菜を出した。


「おい、クソばばあ!しなびたレタスなんか出すな!」


二人はため息をついた。

泣きながらでも一生懸命頑張っているタヌキの方が

よほど可愛い。


「なあ、ウサギどん、そろそろこの家から

出て行ってくれないか。」


おじいさんがため息をついて言った。

するとウサギがぎろりとおじいさんを見た。


「うるせえ、ペットを飼ったら最後まで面倒を見るのが

マナーだろうか!」


それを言われて二人は黙り込んでしまった。

それは常識だからだ。


やがてタヌキは徐々に健康になっていった。

だがサイトには相変わらずYAMAが荒しに来る。

誰だか分からないがとてつもない罵詈雑言だ。


そしてある日悲劇が起こる。


タヌキが立ち上がる練習をしている時によろけてしまい、

寄り添っていたおじいさんとおばあさんが

下敷きになってしまう。


二人は死んでしまった。


「ぼ、僕のために……。」


サイトでその現実を報告するタヌキ。

事故であるため罪には問われなかった。

タヌキは涙を拭う。


『お二人のために僕は頑張ります。』


タヌキはネットに書き込む。

それに返って来るのはほとんどは追悼と応援する書き込みだ。

だが相変わらずYAMAだけはきつい言葉だ。




「クソ野郎。お前のせいだ。」


ウサギがネットに激しい様子で書き込んでいる。


「お前のせいで金づるが死んだ!

お前こそ〇ね!〇ね!」


画面にはあのタヌキのサイトが映っていた。

そしてハンドルネームは『YAMA』。


ウサギは激しく書き込む。

マウスがカチカチと音を立てた。





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