63 日当たり - SF -




ある日突然にその宇宙人は現れた。


世界の各地に巨大な宇宙船がかなり上空に浮いている。

そこから小さな宇宙船が何機も降りて来て

世界の要人と対話する事となった。


映画などでは都市の真上にまるで威嚇するように宇宙船は来る。

だが今は飛行機が飛行する程度の上空だ。

しかも航路は邪魔していない。


宇宙人の姿は私達とかなり違っていた。

人類のように2本足歩行だが、見た目は鳥のようだった。

もし地球で恐竜が絶滅せずに進化して

鳥のようになり知力を持ったらこうなるだろうという感じだ。


対話はどの都市でも同時に行われた。

テレビやネットなどで中継される。


『私達はこの星を侵略しに来たわけではありません。』


宇宙人は言った。

彼らの言葉はなぜか地球人には全て理解出来た。

しかもその気持ちも分かる。


彼らの言葉は本当なのだ。

世界の各地に宇宙船がいるのは彼らの何かの力で

この地球全体を覆うためだった。

それで意思の疎通が可能になった。


『私達は見かねたのです。この星では争いが多い。

それをどうしても止めたい。』

「それは戦争ですか?」

『そうです。争いはいけません。』


各国の要人は難しい顔になる。


「ですが、戦いを挑まれたら私達は

自分の領地を守らなくてはいけません。

人民や我々の思想を守る為です。

それに我々は見た目も違ったりする。」

『でもあなた方は地球という星に住む人類ですよね。』

「そうです。」

『私達にはあなた達は全て地球人ですよ。』

「えっ?」

『確かに皆少しずつ違いますが全部地球人です。』


宇宙人は地球人を見た。


『私達はあなた達にはどう見えますか?』

「う、宇宙人、ですね。」

『そうですよね、よく似ていて同じに見えるでしょう。

でも私達同士ではそれぞれ違います。

考え方も宗教も見た目も違う。

でもあなた達は私達は全て同じ様に見える。

あなた達には自分達の違いは大事なことかもしれませんが、

傍から見ればあなた達は全部同じ地球人だ。』


犬には色々な種類がいる。

だが人はそれを全て犬と言う。

それに似ているのかもしれない。


そして宇宙から違う生命が現れた今、

地球は人類にとっては大きな一つの星でなく、

宇宙の片隅にある小さな一つの星になったのだ。


人類の世界はいきなり広くなり、

小さな世界で戦っている場合ではなくなった。


瞬く間に世界の紛争は沈静化する。

小さな諍いはあっても同じ地球人なのだ。

その意識は少しずつ広がっていった。


宇宙人はそれから度々地球を訪れた。

宇宙船は空高くとどまり、

彼らは小型の宇宙船で降りて来る。


ある時誰かが聞いた。


「どうして小型宇宙船で来るのですか?」


宇宙人は笑った。


『だって日当たりが悪くなるでしょ?

地球の生き物の生命活動には

太陽は大事なものだと聞いています。』


その言葉には裏がない。


彼らの優しい心からだった。





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