56 太田区



「えっ?」


と私は思った。


東京都大田区の大田区を

私は『太田区』とずっとそうだと思い込んでいた。

だが実際は『おおたく』は『大田区』だ。

太田は思い違いなのだ。


「どうしてそう思い込んでいたんだろう?」


私は東京には数度行っただけで

東京の事はほとんど知らない。

だから大田区を思い違いしていたかもしれないが、

他にも理由があるかもと私は考えた。


そして思いついたのは子どもの頃に

刑事ドラマをよく見ていた事だ。

ドラマでは架空の場所を設定しなければいけない。

その時に大田区でなく太田区としたのではないかと

私は思いついた。

その説が正しいかどうか分からない。

ドラマで黒板などに『太田区』と書かれていた気がするのだ。


ただネットで調べると大田区を太田区と思っていた人はかなり多い。


そのように偽の情報を正しい事だと多数の人が思い込む現象を

マンデラ効果と言うらしい。

他にも同じような現象はあるようだ。


ただ、その現象が起こる時はオカルト的な考えだが、

世界線が変化したり並行世界に移動するような

現象が起こるとマンデラ効果が発揮されると言う説がある。


その説では太田区はかつて存在していたことになる。

そしてある時世界線が移動して

太田区が大田区に変わってしまう。

だがそれを覚えている人は沢山いるので

情報の混乱が起こる、と言う事だ。


その説は証明されてはいないし、

大っぴらに話すと人から笑われるかもしれない。


現実には大田区は大田区なのだ。

太田区は昔から存在していない。


正直私には今でも大田区と言う言葉には違和感がある。

だが私は大田区を認めなくてはいけない。

それが現実だからだ。


「まあ、それは置いといて書類を書かないと、」


と私は手元の紙を見た。

自分の住所を書かなくてはいけないのだ。


「愛知県、那古屋市……、

尾張那古屋は城でもつ、ってな。」


私は違和感なくその住所を書いた。





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