53 環境破壊




「全く、ペットの遺棄は犯罪だぞ。」

「事情でもう飼えないんですよ。」

「事情も何も飼い始めたら死ぬまで面倒を見るのが

ルールだろう。」

「でも飼えなくなっちゃったからって

処分するのは残酷でしょ?」

「捨てるのも一緒だ。

何を言っているんだ。

ペットの遺棄を軽く見過ぎる。

何にしても罰金だ、書類を書いてもらう。」

「勘弁してくださいよ。」

「だめだ。

それに逃げてしまったペットは探したが見つからん。

結局逃げてしまったみたいだ。」

「ヤリィ……、」

「お前がやった事はこの地域の環境破壊でもあるんだぞ。

この地にはいない生き物を放ったんだ。」

「チィッ。」

「ここに名前を書くんだ。」

「へいへい。」





「一体何人目のペット遺棄者でしょうね。」

「もう数えきれん。我々が見つけただけでも

少なくとも200件は越えているはずだ。

ただのブームで面白がって飼い出して、

飼いきれなくなると別の星に捨てる。

酷い話だ。」

「そうですね、この星も生命が少しずつ現れている原始の星なのに、

別の星の生き物が増えたらどうなるか。

ここの自然が歪められるかもしれません。」

「全くだな。

しかも捨てられるのは『虫』だ。

小さくて放たれるとなかなか捕まえられん。

しかも増殖しやすい。

だからこそ飼い始めると大変な事になるんだが、

それも考えず手に負えなくなってこの星に捨てに来る。

まだこの星には知的生命体がいないからな、

法律もない。ひどい話だ。」

「我々が見つけただけでもその件数なのに、

多分こっそりと捨てに来る者はその倍以上いるのでしょうか。」


二人はため息をつく。


「いや、その何十倍はいるだろう。

そして放たれた虫もとてつもない数だ。」


眼下には青く美しい星がある。


「あの星は間違いなく虫の天下となる。

この星由来の他の生物もいるが、

多分虫の方が多くなるだろう。」

「どちらがこの星の支配者になるのでしょうか。」

「それは分からん。

だが我々の行為がこの星の行先を変えたのは事実だ。

どうなるか見守るしかない。」


美しく澄んだ青色をたたえた惑星。

まだこの星は若い。


どんな未来が待っているのか、

それはまだ誰も分からない。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る