第2話
一通り話が終わると、予算の徴収を始めようとしていた。
僕は手を挙げて、静寂を切り裂く。
「あの、提案があるんですけど。」
全員が僕の方を見る。
教壇に上がると、冷たい視線が僕の全身を貫いた。
心拍数が上がり、全身に冷や汗をかきながらも口を開く。
「今回の議題は集金700円は多すぎる、という事と予算の内訳についてです。」
僕のクラスではいくつかの事業を、グループで運営することになっていた。
「予算の内訳はうまい棒12000円、風船1500円、金魚すくいのポイ2000円、おもちゃ2000円、その他含めて合計21500円です。」
僕は昨日送られてきた写真を見ながら話す。
「それは概算だから。」
実行委員が口を挟む。
僕はなぜ正確な値段を把握せずに、予算を組んだのか理解出来なかったが、続ける。
「僕はフリマやるんですけど、フリマって基本的に予算使わないので集金700円も払う必要はありません。他の事業の予算を肩代わりする理由がありません。フリマは予算を使わないので、他の事業で利益が出なければ確実に損をします。」
静寂が続き、クラスメイトは興味が無いという顔をしていた。
「事業ごとに予算を組むべきだと思います。やりたいことに、好きなだけお金を使っていいのは大きなメリットではないでしょうか。この方法なら事業の中だけで利益を分配することになるので、非常に合理的で素晴らしい案だと思います。」
男子生徒が手を挙げる。
Aが質問をしてきた。
「実行委員に質問なんだけど、利益ってクラスで等分?」
実行委員は頷いた。
「事業ごとに予算を組むと、呼び込みとか受付の人はタダ働きになる訳だけどどうするんですか?」
僕はAに答える。
「どこかの事業に入って貰うつもりです。」
Aはまた質問をする。
質問というより、攻撃だった。
「フリマみたいな利益率が高いところだけ儲かって、っていうのはずるくないですか?皆がやりたい事業をやれてる訳じゃないと思うんで。」
「それは仕方ないと思いますけど。僕はやりたい事業に皆入れてると思ってました。やりたくない事業に入れていない人は、手を挙げて下さい。」
誰も手を挙げなかった。
すると、Aといつも一緒にいる女子生徒のBが口を挟む。
「皆の前で手を挙げにくい人もいると思うんですけど。これってA君と実行委員が真山君を論破しない限りは、帰れないっていうのがおかしい。」
「でも、手を挙げないってことは、自分の意見を主張するのを放棄している訳だから文句は言えないよね。じゃあどういう風に改善すればいいですか。」
僕は論破という言い方が気に食わなかった。
「公民で習ったように、多数決を取って決めればいいと思います。今少数派の意見を多数派に適用しようとしてるからおかしくなってる。」
「じゃあ多数決取りましょう。僕の意見をまとめると、一部の人だけが損をしないように、事業ごとに予算を組むという案です。僕の意見に賛成の方は手を挙げて下さい。」
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