第3話 標本に宿る欲亡
ご機嫌いかが? 女庭メオですわ。
流石はハオちゃん。私の
家庭科室の火災を予知して火災報知器を押してくれるなんて素敵過ぎますわ。
皆んなは知らないでしょうけど、私は知っているのですわ。彼女が持つ特殊な力を。
私はハオちゃんの背中を追うのが精一杯ですわ。 だから、せめて考察は先取りしますわ。
今日は、そうめんを考察しますわ。
【レベル1】
ガラスのボウルに盛り付ける。グッドそうめんですわ。
【レベル100】
水道の蛇口から割竹を使って流しそうめん。 エクセレントそうめんですわ。
【レベル限界突破】
透き通る清流、川の中で全身を使ってそうめんを受け止める流しそうめん。本当にやったら、クレイジー
それでは皆さん、第3話スタートですわ。
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「やあ、アッシだよ。はにわハオちゃんは生物の授業中だよ。ナマモノと読んじゃダメなんだよ」
ハオちゃんの可憐な呟きは、まるで粘土のように爽やかな土の香りを放ち、皆を魅了します。
『
ほら、生物教師でさえ彼女の身体を心配しています。まったく、罪な
おほん、と生物の教師は咳払いをすると、授業を再開させました。生命の神秘。オシベとメシベについて熱く語る姿は光り輝いています。頭部も輝いていますが、それは触れないでおきましょう。
「先生の頭から後光がさすよ」
とはいえ、危険に踏み込むのがヒロインの性というもの。脳内のオシベとメシベが奏でるハーモニクスが花畑をコミットします。
「はぁにぃわぁ!貴様ぁ!!」
生物教師はバラの様な顔色でハオちゃんに迫ります。
きっとここからの展開は壁ドンからの見つめ合う二人。禁断の師弟愛が花開くことでしょう!
先生は怒り肩でハオちゃんに迫ります。
あら、大変。先生が1/1スケール
刹那、力なく倒れ込む人体模型。
ヒロインを庇って命を落とすモブキャラの様な哀愁が伝わってきます。
ですが、このモブは只では倒れませんでした。
彼は最後の力を振り絞り、内臓模型をぶち撒けたのです。解き放たれる腎臓、肝臓、脳ミソ達が先生と生徒を襲います。
『…おおお、ハオよ。ヨクボウの気配がするぞぅ』
埴輪の髪留めが風雲急を告げます。
嫌な予感は当たるもので、男子生徒の一人が『ナイスパスッ!』って、脳みそ模型でサッカーを始めました。
これはいけません。塗装が剥げてしまいます。職人の心が泣いてしまいます。
どうやら、脳ミソの模型には蹴りたくなるヨクボウが宿っていたのでしょう。
『くっくっくっ、魔砲少女よ。このキラーパスで死ねい!』
なんということでしょう! ヨクボウに囚われた男子生徒は、ハオちゃん目掛けてシュートのようなパスを放ちました!
ああ恐ろしい! 今回の敵は、キラーパスの意味を履き違えています!
「ハオちゃん、カウンターパスだよ!」
しかし! 我らがハオちゃんは、襲い来る脳みそ模型を華麗な足技により、男子生徒にダイレクトパスで返しました。 その威力たるや、倍返しなどと甘いものではありません。
……え?カウンターの使い方も違う?
いいんです! ヒロインは正義と相場が決まっているんです!
お腹に脳みそ模型をぶち込まれた男子生徒は、『ゲボぁ!』と、歓喜の声とともに、壁を突き破ると空高く舞い上がって行きました。
その美しきスカイラブハリケーンに、サポーターの皆さんも涙が止まらない事でしょう。
教室を包む静寂に、先生の「廊下に立っとれぃ!」と言う勝利の雄叫びが響きます。
それは、先生からハオちゃんに手向けたレッドカードの祝福でした。
「悪•霊•退•散!」
捨て台詞と共に、笑顔で教室から去ってゆくハオちゃん。 なんて健気なのでしょうか。
おや? 廊下に出たハオちゃんは、何かを見つけたようです。
「お、ダンゴムシが居るよ? つまむよ。丸くなったよ」
一人彷徨う
「戦いの日々に身を投じるのは、アッシだけで十分だよ」
その優しさに、ダンゴムシは何を思うのでしょうか?
それはきっと、『ご飯が食べたい』でしょう。
–––– つづく
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