第2話 数学の誘惑

 ご機嫌いかが? ハオちゃんと小学校から親友の女庭メニハメオですわ。

 中学校でもハオちゃんと一緒のクラスになって嬉しいですわ。

 それにしても入学初日から、ハオちゃんは元気いっぱいでしたわ。流石は憧れの肉食女子ですわ。


 そういう訳で、今日は肉食について考察していきますわ。


【レベル1 】

 手当たり次第にナンパするお方。肉食ですわ。


【レベル100 】

 焼肉食べ放題に行って、『俺、牛一頭くらい食ったんじゃね?』と、のたまうお方。とても肉食ですわ。


【レベル限界突破】

 『これは肉だ。俺は肉を食ってるんだ!』と、イメージで薄揚げを食べるお方。人智を超えた肉食ですわ。


 それでは皆様。第2話スタートですわ。


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「やあ、アッシだよ。ハオちゃんは数学の授業中だよ」


 授業中に詩的な独り言を呟くハオちゃんは、儚さを備えたヒロインですね。隣の男子生徒は、その魅力に苦笑いを浮かべています。これは早くも恋が始まる予感。

 愛の因数分解からの三角関数三角関係は学園物を盛り上げるエッセンスです。


『はにわハオ。この問題がわかるか?』

数学教師の不意打ちはいつも、恋の様に突然に降りかかります。でも、ご覧ください。ハオちゃんの自信に満ちた表情を!

「先生、答えは自分の中に秘めておくものだよ」

 まあ!なんてカッコいいヒロインでしょう! 先生はたまらず『ふざけてるのかッ!』と、賞賛を送ります。

 教室を包み込む笑い声はハオちゃんのカリスマが成せる技であり、逆にヒロインに課せられた宿命でもあります。


「せ…先生。トイレ行きたいんだよ…」

早速、ヒロインを襲うあがないきれぬ残酷な宿命が。

 果たしてハオちゃんは尊厳を守ることが出来るのでしょうか?!


『……行ってこい』

ヒロインを突き放す様な数学教師の言葉。

愛情の裏返しでしょうか? いけません。中学生はにわ教師学者は禁断過ぎます。

 ハオちゃんは頷くと瞳を潤ませ教室から出ていきます。

 彼女の見せた涙は、名残惜しい心情によるものか、腹痛の成せる技なのかは皆様の想像にお任せします。


『…おおお、ハオよ。ヨクボウの気配がするぞぉ』 誰も居ない廊下を歩くハオちゃんの髪留めが、ダンディーな声で語りかけます。

「それより、アッシは漏れそうだよ」

キッパリと自分の意見を言いながらもモジモジするヒロイン。皆さん大好きなツンデレ演出ですね! もちろん、異論は認めません。


 さて、時に物語とは残酷な牙を剥きます。ハオちゃんの向かう先に、赤い瞳を煌々と輝かせた火災報知器が行手を阻みます。

 その真っ赤なランプは、否応なしに人の理性を奪うのです。

「ああ… 非常用ボタンを非常に押したくなるよ」

『いかん。ハオよ!ヨクボウの誘惑に負けるで無い!』


 なんという事でしょう!ハオちゃんはヨクボウの罠に掛かって闇堕ちしてしまったのでしょうか?

 これ程の力を持つヨクボウとは、恐らく四天王の一角や、なんちゃら12使徒とか、強敵が序盤から現れて負けイベントになる可能性があります。


『くくく…… 貴様が魔砲少女、ハオちゃんか? 悪いが此処で社会的に死んでもらおう』

 なんということでしょう! 火災報知器から闇のオーラがほとばしり、扉から触手ホースが、ダラリと垂れ下がって来ます。ああ、なんておぞましい! これは絶体絶命です。


「指先ひとつでダウンだよ」

ハオちゃんの人差し指がポチッとな。

刹那、学校中を警報が鳴り響きました!


ジリリリリリリ!!き、貴様ぁぁああああ!!


 ハオちゃんはヨクボウの断末魔を背に「悪•霊•退•散!」と決め台詞と共に歩み始めます。


 魔砲少女という定めを背負った少女は、今日も古墳中学校の平和を守ります。ですが、その活躍は誰にも知られる事なく、ひっそりとトイレに姿を消していったのでした。


「ああああああ!!! 紙がないヨォおお!!」

 そして、ヨクボウの断末魔のせいで、ハオちゃんの声は誰にも届かないのでした。


            –––– つづく

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