第4話 マネキンの願い

 ご機嫌いかが? 女庭メオですわ。

流石はハオちゃん。人知れずクラスのピンチを救いましたわ。親友ライバルとしても鼻が高いですわ。

 ピンチという事で、今日は洗濯バサミを考察しますわ。


【 S洗濯 】

洗濯物をしっかり固定しますわ。

これで風が強くても安心ですわ。


【 S Sすごい•作品ね 】

洗濯バサミ、超合体!! ですわ!!

降臨!! クロゥズピィン!! ですわ!!


【 S S Sすごく•しょうもない•所業 】

紐の両端に洗濯バサミを取り付けますわ。

二人の漢が唇を洗濯バサミで挟んで、互いに引っ張り合いますわ。

『男比べ』ってやつですわ。


 それでは皆さん、第4話スタートですわ。


      •

      •

      •


「やあ、アッシはハオちゃん。今日は美術室でえがくよ。絵が苦だよ」

 今日もハオちゃんの埴輪ジョークは絶好調です。それは、隣で絵を描いていた男子生徒の手を止める程でした。滑らないのは彼の筆も同じという布石ですね。


 そんな中、美術教師がハオちゃんの絵を見て足を止めました。

『……はにわハオ? なかなか個性的な絵だね?『ゲルニカ』から影響を受けているのかな?』

 流石は本作のヒロインです。突出した芸術センスが強烈な違和感を醸し出します。

 ……しかし、この絵は、なんでしょう? 

ええ、わかりますとも。皆さんも分かりますよね。

 これは、広大な宇宙に浮かぶ木星…


「カレーライスだよ」

 ──カレーライスです!!

モノローグすら狂わせるハオちゃんの真っ赤な情熱は、まるでカレーに咲く福神漬けのようですね。


 これには堪らず『カレー…ライス?』と、美術教師の頬を汗が伝います。

 きっとスパイシーな色使いが教師の新陳代謝を活性化させたのでしょう。

 魔砲少女のハオちゃんは、治癒能力者ヒーラーでもあるのです。


 ……おや?生徒の一人が筆を握りしめて、美術室にあるマネキンに向かって行きます。

 その生徒は薄ら笑いを浮かべていますが、

──これは、まさか!?


『…おおお。ハオよ! 強いヨクボウの気配がするぞぉ』

 やっぱりです。マネキンのヨクボウに引き寄せられているのです!

 その生徒は筆を振り上げ叫びます。

『ヒャッハー!? 綺麗な黒目を書いてやるゼェ!?』

 いけません! 『ゼェ!?』 を、乱用すると、某ヤンキー漫画みたいになってしまいます! これは世界観を壊すほどの強力なヨクボウの仕業のようです!


「ハオちゃん!変身だよ!」

 ああ、遂にハオちゃんは超絶美少女に変身しました。瞳の中に煌めく星々と、フリフリのミニスカート。太古の昔より、可愛いは正義だと聞き及んでいます。


『邪魔をぉお、するンじゃねえゼェ!?』

 狂乱の生徒は、明らかな敵意をハオちゃんに向けます。

「アッシは負けないよ。勝負だよ」

 これは激アツ展開の予感です。魔砲少女のバトルが幕を開けます!


『いい度胸だなぁ!? 表で『暴走!かけっこ勝負』だゼェ!? パラリラパラリラ!!』


 何と卑怯なのでしょう!?

魔力が関係ない肉体勝負にハオちゃんは巻き込まれてしまいました! ミニスカートでの全力疾走は危険がいっぱいです!!

 果たしてハオちゃんの運命やいかに!


            –––– つづく


 …え?! まだ尺が残ってる?

と、いうわけで二人はグラウンドに並び立ちました。昼休みなので、大勢のギャラリーが固唾を呑んで勝負の行方を見守ります。

『勝負はグラウンド一周ぅ?400mデスマッチだゼェ!?』


 圧倒的不利な美少女ハオちゃんは、何故か不敵な笑みを浮かべています。

 これがピンチの時に、ニヤけるキャラは強キャラの摂理です。

「ついに……アレを使う時が来たんだよ」

そう呟いてハオちゃんは埴輪の髪留めをダブルクリックします。

 Excelも喜ぶ、『カチカチ音』がグラウンドに満ちた時、奴は地中奥深くから目覚めました。

 ––– 馬形の埴輪です。

流石はハオちゃん。乗馬すれば並足でも圧勝です。ですが、ハオちゃんは言いました。

「合体だよ!!」

 …何故に?

某人気ゲーム『ウ◯娘』みたいになってpvを稼ぐつもりなのでしょうか?

 ですが、身に余る欲は悲劇を生みます。


「お…重いんだよ」

まあ、なんという事でしょう。

さとい皆様が想像したのはケンタウロスかもしれませんが、その逆。ハオちゃんの華奢な身体に馬の頭部が乗っています。

 これではウマヅラ娘…いいえ、UMAウーマ娘ではありませんか。

 (※UMA……未確認動物の意)


 あまりの重さに、ハオちゃんはフラつき倒れてしまいました。

 狂乱の生徒はその下敷きに……


「悪•霊・退・散!」

ハオちゃんの、いななきが勝負ありを告げました。

 その後、誰もいない美術室でマネキンは『瞳を描いて欲しかったなぁ』と涙を流したそうです。

            –––– つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る