第28話

「まあ!ピアちゃんたら!王子妃続けることが不安になっちゃったの?だったら私を見て安心なさいな!山暮らしを20年もやっていた私が王妃様やれるんだから、ピアちゃんなら余裕で王子妃出来ちゃうわよぉ」


 戦果を免れたオルソニア妃はダンペッツゥオ山からも近い山奥に住んでいたという。巨人を最初に見つけたのもオリソニア様たちで、結界石で足止めをしてくれていたお陰で、アルジェントロ領が無事でいられたらしい。


 私が王都に移動する前後に、魔獣の大移動が始まっていたのは巨人の所為だったらしく、当初は魔術師の洗脳魔術によって、巨人の体全体が真っ黒に染まり上がっていたのだという。


 私は通常に戻った巨人しか見ていないのだけれども、無事に大陸に帰ってもらって良かったとホッとしています。


「国が落ち着いたら王位はヴァレリオに譲って、私たちは旅行にでも行きたいね」

「ベルタランがうまくやっているかも見に行きたいですしね」


 仲良し夫婦のこのお二人を見ていると、ラファエラ王妃とは本当に仮面夫婦だったんだなあって実感しますよ。


「父上たちの旅行の前に、まずは私たちを新婚旅行に行かせてくれるのではないのですか?ピアには結婚の披露目もまともにやってやれていないので、せめて旅行だけはきちんとしてあげたいのですよ」


「息子よ、実は忘れているかもしれないが、私たちだって新婚なのだよ。公務公務でオルソニアだって疲れているはずだし、私たちの方こそ旅行に行って体を休めてだね」


「いえいえ!王位に就いている間は公務第一で頑張ってください!」


「ねえ貴方、旅行はいつでも良いのですけれど、そろそろ膝から降りても宜しいかしら?」


「そうですよ、私もそろそろ膝から降りたいんですけど?」


「「だめだ」」


 妻を膝抱っこしたまま、お互いに休暇と旅行の取得を主張し合っている王と王太子を側から見ていたエドアルド王子は、

「僕は妻を膝に乗っけてデレデレするような人間にはなりたくない!」

と、言いながら逃げ出した。


そうして隣国ベスプレームまで遊びに行ったところ、腹違いの兄であるベルタランまで妻を膝に乗っけてお菓子を食べあっている、その姿を目撃して、


「遺伝って怖い!」


と言って身震いするのを、監視役のステファンが何度も頷きながら見守っていたという。

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