第1話 見上げて、出会い、握り締める②
「……ひとまず、駅を出ようか」
「ん、そだね」
そうして頷き合って降り立ったのは、白一色に染められた大きなホーム。
規模としては大都市の駅と同等……いや、もうここもすでに大都市と言えるだろう。
かつては寂れた田舎町だったが、約二十年前にある計画の実行地に選ばれて発展……ここ数年でようやく完成に至った。
この街こそ、世界に5つある、ある災害に立ち向かう為の都市計画実行の地、その一つである。
「うわーやっぱり大きいねー めちゃ広くて迷宮みたいっていう新宿の駅とどっちが大きいのかな」
「多分、こっちが少し大きいんじゃなかったかな。
シェルターやら簡易病院やら色々な施設とか含まれてるしね、ここ」
話しながら歩を進め、内人は改札口に供えられた読み込み画面に端末を接触。
直後、軽やかな電子音と共にOK表示が出たので改札口を通り抜けた……のだが。
「あれ? あれれ?」
遥もまた画面に携帯を接触するも、ゲートは開かなかった。
接触する度にエラー音を発しており、その度に悠の表情はあわわと焦りが募っていった。
「エールシステムのアプリはちゃんと入れた?」
内人は少し戻って、自身を通した後再度閉じたゲートから身を乗り出し、悠に問い掛ける。
「う、うん、ちゃんと昨日入れたんだけど……」
「ふーむ。じゃあ、携帯にソウルカードは……」
「あー!! きっとそれ!」
内人の指摘に、遥は自身の背負った大き目のリュックを下ろした。
中に入っているらしき様々なものをかきわけて、ようやくお目当ての、灰色の一枚のカードを取り出した。
なんとなくなのか、裏表を確認してから携帯の差込スロットにカードを差し込み、改めて改札に接触させる。
すると、先程のエラーが嘘のようにOK表示が画面に浮かび上がり、彼女の前のゲートが開いた。
「いやーうっかりうっかり……
昨日の夜、いよいよ
「……気持ちはわかるけど、ソウルカードはしっかりどこにあるか把握しとかないと。
万が一紛失してたら大変な事になるし。再発行自体はともかく、個人データの再構築にはかなり時間が掛かるから」
「ごもっともでございます……ありがとうね」
礼に頷きで返してから内人は再びゆっくりと歩き出し、少し慌てつつ悠もまた彼に続く。
そうして二人は星海未市の外からの最大の入り口を出て……辿り着いた。
「おおー! ここが星海未市!……って、思ったよりボリューム、というかスケール小さ目?」
実際、駅の規模と比較すると、駅前の街並みはそれほどに『大きく』はなかった。
高層ビルが乱立する感じではなく、ほどほどの大きさの建物が綺麗に並んでいる。
見た目に関しては、最新のビルの構造やデザインではあるのだが……。
「声大きい声大きい。
駅前はこの街のメインじゃないから……ほら、あっち」
そう言って内人が指をさしたのは、はるか向こうの宙海未市の中心部。
そこにはここにある建物はおろか、それこそ首都の最大級の建築物よりもはるかに大きな『塔』が存在していた。
星海未セントラルタワー。
セントラルの言葉どおり、この街の中心、中核たる建造物である。
タワーの中には、この街が作られた理由、それを果たす為の全てが詰め込まれているらしい。
そして、このタワーの周囲には計画に関係する建造物が集められており、内人達が通う事になっている宙海未学園もまた、その一つであった。
「おおー前言撤回、流石のスケールだね」
「あれぐらいないといけないなんだろうね、ガルベイグをどうにかするには」
「だよね……」
その言葉を口にすると、悠は先程までの笑顔一色からほんの少し陰りのある、真剣な表情を浮かべた。
アストラ候補生ならば、それとの関係は避けられない、ゆえなのだろう。
他にも何かあるのかもしれないが、そこから先を勝手に推測するのは憚られて、内人は何も言わなかった。
ただ、先程言い損ねていた事があったので、そちらについては言わなくてはならないだろう。
「……ああ、そうだった。さっきの話の続きなんだけど」
そうして話しかけたその時だった。
懐に入っていた携帯から、いきなりアラームが鳴り響く。
それは内人だけではない。近くで歩いていた悠もそうで、駅前を歩いていた人々、そして街の至る所から。
緊急時のパトカーや消防車さながらの、緊迫した音の連続。
これが何を表すのか、知らない人間はこの街には一人としていないはずだ。
「ガルベイグ……!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます