第3話呼びかた

高瀬数雪かれはいつまでも他人行儀に私を呼ぶ。

彼とは付き合いが四年も続いているというのに、私を未だに苗字で呼ぶ。

あのときのクリパだって……私からしたら、相当な勇気を振りしぼったのに……あいつときたら。


高瀬に藍華と呼び捨てにされたいのに、あいつは苗字でばかり呼ぶ。

あいつ異性ジョシに対しての性欲は湧かないのだろうか。

あいつは女々しすぎるんだよ、ほんと……


彼の小学時代は知らない。中学から出逢って、彼が進学先に決めた現在いま通っている高校まで追いかけて、彼と一緒の高校に通えている現実に酔いしれていた。


なのに……


恋敵ライバルが現れた。


高瀬数雪かればかりが脳内を埋め尽くし、睡眠の質が低くなっていた。


「——長谷部さん、聞いてた?今の……」

「ああ、うん。聞いてたよ、カズ。カズを無視するなんてしないよ〜」

「そう……?なら、良いけど……」

釈然としないようで表情が浮かない高瀬。

「あのさ……カズぅっ、中二のクリパのことって覚えてたりする?」

「え、中二のクリスマスパーティーのこと?ま、まあ……覚えてるけど、今のに関係なくない」

彼が後頭部をぽりぽりと掻き、最もな言葉を返してきた。

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